世界最先端の教育をジャングルで育む「グリーンスクール」に密着

現在、世界は数多くの難問を抱えている。急激な環境の変化、急速な人口の増加、そして膨張を続ける経済活動。そのいずれにおいても解決への明確な答えは無く、制御してゆくコンセンサスすらも見いだせないままだ。

だからといって開き直ることもできない。社会は高度に発達したが、人類を取り巻くさまざまな自然環境は、目に見えて悪化してきている。21世紀に生きる私たちは、何を守っていき、何を目指していったらよいのだろうか。

グリーンスクール

■サスティナビリティを真剣に追求したらどんな学校になるのか?

インドネシア・バリ島にあるグリーンスクールは、世界的に見てもかなり特異な学校と言える。2008年に開校したばかりのこの学校は、その設立された経緯からしても前例の無い学校かもしれない。

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©Green School

ファウンダーはカナダ生まれのデザイナー、ジョン・ハーディーと、公私共にパートナーであるシンシア。

二人は30年以上バリ島で暮らし、ジュエリーや工芸ビジネスで大成功を収めた。しかし、二人の転機が2006年に訪れる。元アメリカ副大統領アル・ゴア氏の映画『不都合な真実』の公開である。

この映画を観た二人は、大きなショックを受けた。そして、それまでビジネスで成功を収めながらも、バリ島での生活で欠けていたものに気づくことになる。

「不確実な未来を生きる子供たちに、必要とされるであろう全ての能力を伸ばす教育を与えたい」

すぐに二人はジュエリービジネスから離れ、理想の学校づくりのため文字通り世界中を奔走する。学校を一から作るとなると莫大な資金が必要だ。ジョンはプレゼン番組TEDに参加し世界を飛び回り、金銭的支援や人的支援を求め続けた。その熱い想いはやがて世界の耳目を集め、多くの賛同者が集まり、2008年の開校を迎えることとなる。

未来へ向けた理想の教育を実践する場に相応しいコンセプトは、やはりサスティナビリティ(持続可能性)だ。自然環境にできる限り負荷をかけず、できる限り自給自足する。食料は田畑で栽培し、家畜を育て、電力も当然自らで賄う。

そして、校舎をはじめ、あらゆる建築物は竹で作られた。竹は生育が早く、丈夫で、浄化作用もある。加工し易く、デザイン性も優れている。使用する竹を育て加工するバンブー・ファクトリーは、多くのバリ人に新しいビジネスを提供している。

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そして、そのコンセプトは学校だけでなく、その周囲に作られた居住エリアや宿泊施設にも適用されている。

生徒の家族や学校スタッフたちの家族が住むコミュニティや一般客も宿泊できるビレッジが、ウブド郊外にある広大なジャングルの中に多数作られ、世界中から多様な人たちが集まる一大拠点となりつつある。

 

■崇高な価値観「iRespect」

グリーンスクールやそのコミュニティが求める価値観は、iRespect 。

Integrity(誠実性)、Responsibility(責任感)、Empathy(共感)、Sustainability(持続可能性)、Peace(平和)、Equality(対等)、Community(共同社会)、Trust(信頼)からの頭文字によるものだ。

ここから、意見の異なる他者と敵対するのではなく、共感と信頼をもとに良い方向へと巻き込んでいく未来のリーダー像が窺える。ここで学ぶ子供たちは、未来へのグリーン・エージェントとなって世界へ拡散し、さまざまな形をもって未来を変えていくに違いない。 一つだけ、ジョンの言葉で忘れられないものがある。

「子供たちには、今この瞬間の選択が、自分の孫にどんな影響を与えるのかを常に考えて欲しい」

これこそが世界最先端にして、世界で最も必要とされる英才教育なのかもしれない。

ジョン・ハーディーと記念撮影

ジョン・ハーディーと記念撮影。しかし撮影中も、筆者が学校に寄贈した針なしステープラー”ハリナックス”が気になってしかたない様子。