ダイハツ新型コペン開発責任者と試乗して色々話を聞いてみた

ダイハツが2世代目となる軽オープンスポーツカー「新型コペン」を6月19日に発売した。

今回元自動車メーカー・デザイナー、現在はproduct_cでプロダクトデザイナーとして活躍する山崎隆之氏とともに台風接近する箱根にて量産車を試乗、開発責任者の藤下修氏に開発技術からデザイン、今後の展望までお話を伺った。

ダイハツ「コペン」藤下修氏

・藤下修 氏:ダイハツ工業 技術本部 製品企画部 チーフエンジニア

・山崎隆之 氏:プロダクトデザイナー・product_c所属

(以下敬称略)

ダイハツ「コペン」

大雨の中の新型コペン試乗

ーーー(インタビュアー) 今回台風接近中の荒れ模様の天候でしたが、逆に試乗としてはいい感じの雨となりました。というのもタイヤのグリップに頼らない運転ができ、荷重で曲がっていくのが確認できました。

山崎 ドライ路面だとタイヤにムリするけど、今回はゴリゴリ運転しなかったね。

ーーー 特に右に左に曲がるスラロームだと左右に荷重が切り替わって、曲がる感じが非常に伝わってきます。今回走ったのは箱根旧道の七曲りですが、ここはいわばホームコース。これまで乗った自分の車となんとなく比較できる。

藤下 なんとなくではなく明確に、ですね。

山崎 (自分のホームコースである)碓井峠で走ってみたい。

ーーー よく曲がるから本当に素晴らしいです。でも余りに良すぎてある意味イヤになってきましたよ(笑)。というのもこれまで自分でジムカーナ競技をやって、一般人のできる範囲でハンドリングをセッティングしてきたんですが、メーカーで、ノーマルでここまでやられちゃうとずるいな、なんて思いました。

山崎 自分はデザインの視点からいうともっと車高下げたい。でもそうすると乗り味、ハンドリングが悪化することが予想できてこれは悩みどころ。

藤下 今回のコペンの車作りとして、まずは骨格ありき。タイヤは同時にベースを作っていたけど、量産に向けてもう一度セッティングを回せばいいだろうとは思っていました。ハンドリングの方向性をきめて、マウント、ブッシュを決めて、順番で仕上げて行ったのが正しかったんだろうと思っています。骨組みがしっかりしていて動かない、これ以上はない、というくらい決めていったので全体のバランスがとれました。

しかしもうちょっとフロントの正確性をあげたい、ボディ剛性のここをつないで強くしたら、とたんにバランスが狂いはじめますし、急激にイヤミがでてくる。ここもさわって、あっちもさわって、とどんどん変更しなければならない。

ーーー それは泥沼ですね。今回台風接近の影響で山の側にいったら突然強い雨に見舞われたんです。でも停まってすぐにルーフが閉められてよかったです。

藤下 実は電気系統はフルオープンでシャワーテストしても大丈夫なことを確認してます。だから豪雨でも大丈夫ですよ、乗員と荷物は濡れますけど(笑)。

ダイハツ「コペン」

着せ替えできる樹脂ボディパネル

ーーー 新型コペンで使われている次世代技術、未来につながる技術をお聞かせ下さい。

藤下 特にないです。

ーーー えっ、ドレスフォーメーションがあるじゃないですか!

※ドレスフォーメーション

車体を骨格+樹脂外板で構成することで、樹脂外板を交換することで「着せ替え」ができるようにした。購入後に着せ替えすることでユーザーの趣味嗜好の変化に合わせてデザイン変更ができるシステム。

藤下 それもそうですね(笑)。でも実際のところあれは「アプリケーション」であり、これまでにある材料、技術をそこに「応用」して表現しただけです。

ーーー 樹脂外板パネルはPP(ポリプロピレン)、SMC(Sheet Molding Compound)を使っていますが。

藤下 それらは既存技術で、PPはバンパー、SMCはマツダ・ロードスターRHTのルーフなどでも使われています。SMCはFRP(ガラス繊維樹脂)と似ていて、ファイバーに樹脂を浸透させ自分たちの欲しい形状にしてプレス、一体成型します。カーボンほど軽くて強いわけではないけど、それに近いものです。ただこれは熱硬化性樹脂であり、可塑性ではないので再利用しにくい。

超シュレッダーでダスト化、高熱でリサイクルという技術はあるにはあるけど、どこでもできるものではなく、1社だけで専用のリサイクル工場は持てません。

熱可塑性のものは多少強度は落ちるけど、リサイクルできて作りやすいです。今後流通すればそういった素材も考えます。

ーーー 樹脂パネルの素材を変更する可能性もあるのですね。

藤下 素材でいえば型費用を安くする新成型法にトライしてます。これが出来るようになると色々なアレンジができます。

山崎 色やミッションの組み合わせで考えると、それぞれ生産台数は少ないですからね。

藤下 コペンのような多品種少量生産の場合、マニュアルトランスミッションの黒、と限定すると25%のさらに5%とかになり、生産台数では非常に少ないものです。そこにそういった少量生産の技術を盛り込めないかと。

ファクトリーですべてを完成させるのではなく、骨格にエンジン・ミッションだけ積んでどこかに渡し、外板などをそこで付けて別の車に最初からできます。

ーーー 着せ替えできるコペンのドレスフォーメーションは色々な可能性を秘めていますね。
ダイハツ「コペン」

コペンはスマホ中心へ

ーーー カーオーディオについてですが、私なんかは最近専用カーナビをつけなくて、iPhoneのナビとUSBオーディオで十分なんです。ところがこのコペンは 2DIN用ユニットはありますが、1DIN用がありません。これって逆にユーザーやクリエイター、サードパーティにお任せしたい、新規参入しやすい環境を作っているのですか?

藤下 その通りです。コペンは内外装を交換できるようにしているので、そこへサードパーティに参入してほしい。参入できる余白を残しているんです、センターパネルを外して3連メーターつけてもいいじゃないですか。

ーーー なるほどスマホホルダーでも3連メーターでも好きなものを作ればいいんですね。

藤下 そのためデータを進んで公開しています。図面、3Dデータ、情報を出しますってあちこちで言っているんですけど、まだ誰も聞いてこない。というのも実車をまだ誰も見ていないから。見て、気付いて、情報公開していることを知ってくれれば、そのうちに世の中に広まっていくはずです。

山崎 図面データ、情報公開については我々クリエイターが驚きました。しかもデータは間引いてくれないかとおもうくらいガチのデータがくるんです。

山崎 こうなってくるとあれもできる、これもできると字面でいうよりも、絵面や実際のパーツを作って見せた方が分かりやすいんですよね。パーツを実際に展示すると見た人は「いくら、いつでるの?」とすぐ聞いてくる。やっぱり見せるのが大事ですよ。

ダイハツ「コペン」

ユーザー、デザイナー、サードパーティの夢を実現できる未来

ーーー 現代の自動車はすごく完成されていていて、ユーザーが手を入れる余白がない、夢を持つ部分が少ないと感じていました。その点コペンは余白タップリで色々な夢が広がりますし、こういった日本車が出ることで日本車の未来がひらけた感じがします。

山崎 トルクスでパネルを外せるのはすごいよね。こういうのってお客さんに買っていいんだ、という許可をあげることなんですよ、iPhone的というか。iPhoneって最初アプリが入っていないと何もできないんだけど、よーし、あとで自分でアプリいれようという気になる。

藤下 そこまでなればいいな、と思ってます。これは2段階ロケットで、どっかでもう一回いくから、それまで地道にやれと言われています。

山崎 宣伝で俳優とか女優にお金使うよりいいですよ、実際は乗りもしないのに(笑)

ーーー イメージとはいえいくらなんでもキムタクがRAV4は乗らないよとみんな思っていたわけで。

山崎 でもドラマでバイクに乗ればTWが売れるたりね。

ーーー 宣伝やイメージを通してではなく、ユーザーと直接対話する、という姿勢が今後メーカーとユーザーの新しいつきあい方だと感じます。

まとめ

新型コペンは旧型に対して「変わる」というキーワードで、キープコンセプトではなく大胆に路線を変更している。これまでの軽オープンカー、というだけではなく、オープンスポーツとしての性能向上、ドレスフォーメーションによる着せ替え・デザイン変更可能なこと、スマホを中心とした考え方、そしてサードパーティ・デザイナー・クリエイターが参入できる余地を残していること。ユーザーと一緒になって新しいコペンの世界を作り上げて行こうという姿勢が伺える。

これまで新型車といえば打ち上げ花火のようにデビュー、その後話題性がなくなり急速にしぼんでいくことが多かったが、コペンは発売前から情報を積極的に発信、発売後も継続してユーザーとの直接対話に力を注いでいる。とくにキープコンセプトの丸目デザインの第3のボディは来年追加発売と発売日に発表するなど、打ち上げ花火ではなく、ジワジワとパチパチ輝く線香花火のように派手ではないが話題をふりまいている。

着せ替えが可能なボディや内装はクリエイターを刺激し、サードパーティが製品を出すことで、コペンを中心とした新しいエコシステム、マーケットが出来上がる可能性を秘めており、今後のコペンの動向に注目していきたい。