全米が注目!教育現場のいじめや暴力を解消した意外な手法とは

最近、世界の学校で”じゃんけん”をする子どもたちが増えている。それまで”じゃんけん”をする習慣が無かったため、かなりタイミングのズレたものではあるが、それは何とも微笑ましい光景だ。

この流行のきっかけとなったのが、アメリカのPLAYWORKSというNPO活動。”子供たちを学校でもっと遊ばせよう”という逆説的にも聞こえる運動は、なぜ全米の学校を巻き込み大ブームとなっているのだろうか?

PLAYWORKS

創設者 Jill Vialetの挑戦

ハーバード在学中より公共サービスプログラムの学生リーダーとして活躍していたJillは、卒業後にアラスカへ渡った。少数民族であるエスキモーの子供たちへのキャンプ・プログラムを提供するNPOで働き始めた彼女は、水泳やアートを教えるインストラクターとして活躍した。

その後カリフォルニア州オークランドへ渡った彼女は、子供たちの芸術・創造活動支援する団体MOCHAを立ち上げる。しかし、多くの学校を訪れる中で、彼女はあることに気が付くようになった。

「なぜ教師たちは、こんなにも疲れ果てているのか?」

そんなJillの疑問に、とある校長が切実な言葉で理由を教えてくれた。

「休み時間の子供たちを監視することで、もう精神的に疲れてしまうの。休み時間が怖い・・・」

Jill Vialet

アメリカの公教育における重要な問題

アメリカと日本の公教育において最も異なる部分と言えば、学校運営の独立性にあるだろう。自治体の教育委員会の管理下にあるとはいえ、学校毎に経済状態は大きく異なる。日本では教科書は無料で配布されるが、アメリカでは学校が生徒にレンタルする。しかも貧しい地域にある学校では、生徒の人数分を揃えることすら難しい。

教科も大きく異なる。日本の小学校の様に週に何度も体育や音楽や図工の授業があるわけではない。特に体育が無いことは、子供の慢性的な運動不足を招いていると問題視されてきた。

そして、一日のスケジュールもタイトだ。授業の合間に休み時間はあるのだが、日本と違い教科毎に教室を移動するので慌ただしい。もちろん給食も教室でなく食堂で食べる。都市部など貧困地区にある学校では、食堂も狭くスタッフを雇う予算も無いので、10時から30分毎に各学年が順番に食べることもあるという。

そんな慌ただしくストレスの多い学校生活を送る子供にとって、昼食後の休み時間は格好のストレス発散の場となるだろう。

悪い意味において。

もっと効果的に子供を遊ばせよう!

ストレスを溜め込んだ状態で子供たちが教室外へ飛び出すと、起こりうる事態は想像に難くない。

言い争い、人種差別的行動、暴力、いじめ・・・

教師たちの目の届かぬところで争いは起こる。教師たちもそれを何とか止めようと監視するのだが、カオスと化した子供たちを止める手立てはほとんど無いだろう。

疲労感だけを背負い午後の授業に挑む教師と、険悪なムードと悪しき心理状態で参加する子供たち。十数年前までのアメリカの公教育の現場は、ほぼこんな様相だった。

子どものケンカ

学校でストレスを発散できない子供たちのためにスポーツの楽しさを教えるSports4KidsというNPOを立ち上げたJillは、まず加州バークレーの小学校で活動を始める。そこで実際に学校内で子供たちと接することで、ある一つのことに気が付いた。

「スポーツよりも単純な遊びの方が効果がある!」

何かを教えるのではなく、インストラクターと子供が同じルールで対等に遊ぶ。ルールはシンプルなほどいい。子供たちの間に協調性が生まれてきたら、あとは子供たちに任せてみよう。

そして、子供たちに責任感と信頼性をもたせ、目の前に広がる未来への可能性を感じて、学校生活を楽しんでもらえたら・・・。

Junior Coach

PLAYWORKSの可能性

PLAYWORKSと名を変えたこの活動は、数年後には加州の都市に広がっていった。”じゃんけん”や”なわとび”といった、近年では廃れてしまっていたシンプルな遊びを”再発見”し、アメリカの休み時間の子供たちを夢中にさせてゆく。

インストラクターたちは、声をかけ、ハイファイブをして、簡単なルール説明をする。しばらく一緒に楽しんだあとは子供たちによるボランティア”ジュニアリーダー”に任せる。そうすることによって、大きな子たちは自然と小さな子たちをサポートするようになった。

学校の雰囲気もがらりと変わり、トラブルも減少。そしてスタンフォード大学との共同調査で、生徒たちの学業成績にも好影響が見られるようになり始めると、この運動は一気に全米へと拡大。

各州毎の注目インストラクターやジュニアリーダーたちをサイトで紹介し、その彼らがこの活動の素晴らしさを伝える伝道師となり、世界中へ寄付を求める。多くの企業や他の団体も巻き込み、その勢いは増す一方だ。大学生の人気就職先ランキングにもTeach for Americaのように顔をだすようになってきた。

2016年には、全米で100万人の子供たちがPLAYWORKSのプログラムで遊ぶ見込みだ。もはやアメリカの学校には欠かせない存在となっているPLAYWORKSは、今後、全米のみならず世界中の子供たちを夢中にさせていくことだろう。

*写真・映像:©PLAYWORKS web site