夢がより身近に!相次ぐ「宇宙港」建設で民間宇宙ビジネス加速か

アメリカ連邦航空局(FAA)は2014年7月9日、民間企業スペースX社が計画する、テキサス州キャメロン郡の自社「宇宙港」建設を承認した。

一方、イギリス政府でも、2014年7月15日に米国外で初となる宇宙港を2018年までに開港すると発表。相次いで建設が計画されている「宇宙港」とはいった何なのか?

ドラゴンV2

輸送船発着地が宇宙港

スペースX社とは、カリフォルニア州にある民間の宇宙ベンチャー企業で正式名称はスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ社。2008年にアメリカ航空宇宙局(NASA)と契約を結び、宇宙ステーション(ISS)など有人施設に物資を届ける「宇宙輸送(商業軌道輸送サービス)」業務を委託されている企業だ(他にもう1社、バージニア州のオービタル・サイエンス社もある)。

同社は、打ち上げ用ロケットとして「ファルコン9」や今後導入予定の「ファルコンヘビー」を開発、ファルコンロケットと一緒に飛行し物資を積んでいく宇宙船「ドラゴン」を所有する。それらを打ち上げる場所として今回計画されているのが、新しいスペースポート(宇宙港)である。

スペースX社はすでにフロリダ州ケープカナベラル空軍基地からファルコン9を打ち上げており、今後はカリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地からもファルコンヘビーの打ち上げが可能になる予定。にも関わらず、NASAと契約しているロケット打ち上げ数に遅れが生じている。

そこで新宇宙港。

建設予定地は、テキサス州キャメロン郡ブラウンズビル近郊(メキシコ湾沿い)。

管轄するFAA内の機関AST(商業宇宙輸送局)は、新宇宙港で2025年までに年間最大12機のロケット打ち上げを許可。新宇宙港の稼働時期は未発表だが、建設予定期間は24ヶ月間。早くとも2016年以降になる見込みだ。

官民連携で開発が進むアメリカ

NASAは、1958年の設立以来、任務のひとつとして「商業宇宙活動の促進」が義務付けられている。アメリカは、昔から宇宙輸送の民営化を見据えてきたのだ。

特に、2010年のスペースシャトル全機退役後は、宇宙ステーションへの飛行は、若田飛行士で最近話題になったロシアのソユーズのみ。アメリカとしては、民間企業を育てることで「宇宙ビジネス」でリーダーシップを取ることは必須だ。そこで、競合入札方式によりパートナーシップを結ぶ企業を選択、多額の拠出金を出して育成しているのだ。

多額拠出金で民間企業を育成

NASAは、複数のパートナーシップ企業に拠出金を出しているが、スペースX社の場合はロケットの開発などに2億7,800万ドル(約278億円)、2008年の契約時は約16億ドル(約1,600億円)など。ちなみに、スペースXが開発中の有人宇宙船は、宇宙旅行の行き帰りの足として有力視されている。

また、前述のASTは宇宙港などロケット打ち上げと再突入用サイトの認可を管轄しており、積極的にインフラの整備も行っている。

現在、認可を受けているのは、ケープカナベラルのスペース・フロリダ、バージニア州ワロップス島の中部大西洋地域宇宙基地、アラスカ州コディアック射場、カリフォルニア州モハーベ宇宙基地、バーンズ・フラットにあるオクラホマ宇宙基地、ニューメキシコ州のスペースポート・アメリカ、などだ。

ちなみに、アメリカではこんなユニークな開発をしている民間企業もある。

米ネバダ州ラスベガスのホテル王が設立したビゲローエアロスペースは、風船のように膨らむ軽量素材の居住部を開発。つなげると地球の周りを回る民間宇宙ステーションや月面基地が建設できるそうだ。

現実味を帯びてきた「宇宙旅行」

ヴァージンギャラティック社2

宇宙への物資輸送以外でも、今後期待されているのが「宇宙旅行」。実現の一番手と考えられているのは、英ヴァージン・グループ傘下のヴァージンギャラクティックが開発する宇宙船「スペースシップ2」によるツアー。

一回のフライトで飛行士2人と乗客6人が搭乗、米ニューメキシコ州の宇宙港から航空機に吊り下げられ高度15キロまで上昇後、分離してロケットエンジンを噴射し、高度110キロで約4分間の無重力状態を楽しむ……といったもの。

所要2時間で費用は1人25万ドル(約2550万円)。日本人を含む約600人が予約済みで、米人気歌手のレディー・ガガさんも2015年に搭乗し、宇宙から歌声を地上へ届ける予定だ。

日本企業も航空宇宙産業に進出

日本でも、モノ作りの面で「宇宙ビジネス」を見据えた動きがある。三菱重工が開発中の次世代旅客機「MRJ」や川崎重工の航空機用エンジンなどは、将来的に宇宙ビジネスにも繫がるという見方がある。航空宇宙産業は、全体で300兆円以上の市場へ発展することが期待されているのだ。JAXA(宇宙研究開発機構)が2005年に出した長期ビジョンでも、「宇宙輸送」開発が今後の日本の国際競争力にとって重要になると言及している。

宇宙港などインフラ整備がカギ

前述のイギリス政府が発表した「宇宙港」建設計画は、アメリカがリードする「宇宙の産業化」に遅れをとらないためのものだ。特に宇宙旅行は今後、富裕層向けのビジネスとして発展すると見られており、10年後には宇宙港から毎日宇宙船が飛び立つとの予測もある。また、SF映画の世界でしかなかった火星など他の星への移住などといった計画も現実味を帯びてきているという。

そいうった「新ビジネス」に遅れを取らないためには、ロケットや宇宙船だけでなく、「乗客が集まる」宇宙港などのインフラの整備も必須である。特にイギリスは、これまでロケットの打ち上げを自国ではなくオーストラリアで行ってきたので尚更。政府は、宇宙産業分野で10%の世界シェアを確保し、この分野の産業価値を現在の4倍に当たる年間680億ドル(約6.9兆円)へと引き上げたい考えだ。

ヴァージンギャラティック社

 SF映画「ガタカ」と宇宙飛行

筆者が「宇宙港」の話を聞いた時に、真っ先に思い浮かべたのは映画「ガタカ」の世界。1997年に制作されたこの映画の舞台は近未来のアメリカ。全ての人間はDNA鑑定により、優遇される「適格者」と被差別の「不適格者」に分けられる世界だ。

主人公のヴィンセント(イーサン・ホーク)は宇宙飛行士を夢見るものの「不適格者」。仕事は宇宙飛行施設「ガタカ」の清掃員だ。施設から毎日のように惑星へ飛び立つ宇宙ロケットを横目に眺める日々。

そんなある日、不法な就職斡旋ブローカーから「適格者」のジェローム(ジュード・ロウ)を紹介される。彼は、自殺を図り下半身不随になった元水泳選手で、契約により彼になりすますことに。就職時の検査をジェロームの血液サンプルでごまかし、ついにヴィンセントは念願の宇宙飛行士に。

ラストはご覧になってない方にはネタバレになるので書かないが、とても見応えがあり印象的な映画だ。この映画では、宇宙への旅は「一部の限られた人」にとっては毎日ロケットが飛ぶほど一般的。近く実現しそうな現実世界の宇宙旅行も、まずは限られた「富裕層向け」という意味では、この映画の世界に似ている。サマージャンボ宝くじを買って“当たる”事を夢見る筆者をはじめ、この記事をお読みの読者の多くの方には、当面縁が無い話のようだ。

が、諦めるなかれ。歴史が語るように新しい文明や文化、技術などは、常に最初は貴族や王など一部の「適格者」により築かれるものなのだ。そして、そのシステムが完全に構築された後になって始めて、いつしか壁が破れ我々「不適格者」も入り込める余地が生まれるのだ。だから大丈夫、我々だって“諦めなければ”将来宇宙に“きっと”行ける。「適格者」になりすますほどの“ガッツ”で宇宙に行った、ヴィンセントのように。

*参考:スペース X、テキサス州に宇宙港建設へ…連邦航空局が承認 | レスポンスCNN.co.jp : 英国に宇宙港、2018年までに開業へ本命は三菱重工?300兆円市場、航空宇宙産業の実態に迫る! | ZUU online宇宙旅行の商業化 « American ViewJAXA|宇宙航空研究開発機構