フィリピン「ゴミの山」で育つ子どもたちとファッションショーを

フィリピン各地にあるゴミの投棄場、通称”スモーキーマウンテン”。そこには大量のゴミが分別されることなく毎日運び込まれ、うず高く、山のように積まれていく。発生するガスが自然発火したり、人々の使う火が燃え移ったりして、時に山は濛々と煙を上げる。

そんな中で再利用できるゴミを漁り、ジャンクショップで換金して暮らす人々がいる。彼らスカベンジャー(腐肉食動物の意)の多くは、元々この地に住んでいた小作農だ。しかし市当局に田畑を取り上げられ、ゴミ漁りをするしかない生活に追いやられてしまった。

そんな彼らは、僅かな誇りを込めて自らをwaste pickers(ウェスト・ピッカーズ)と呼ぶ。

フィリピンのゴミの山スモーキーマウンテン

途上国の現実と支援が持つ可能性

フィリピン・パナイ島イロイロ市のゴミの投棄場は、30年間近く市民のゴミを受け入れ続け、巨大な山脈と化した。そこでは1000人ほどのピッカーズがゴミを漁って生活している。そして100人以上の幼い子供たちも大人たち同様、ゴミの山を掻き分け家族の生活を支える。

衛生状態は劣悪で、裸足でゴミの山へ入るため怪我や病気が絶えない。もちろん学校へも行けず、大人になってもゴミ漁り以外の仕事に就くのは困難だ。貧困の連鎖を自らの手で断ち切ることは、我々が考える以上に難しい。

人々が目を背けたくなるような現実、スモーキーマウンテン。だが、そんな場所に生きるピッカーズの子供たちとファッションショーをやろうという日本人女性たちが現れた。

日本人とフィリピンの子供たちのファッションショー

学生団体HALLE代表の笠井美和さんは、杉野服飾大学で学ぶ大学生。ゴミの山から最もかけ離れた世界とも言えるファッションの力を使い、何かインパクトのある行動ができないものかと考え、このファッションショーを企画した。

ピッカーズの子供たちと日本人が手をつなぎ、キャットウォークを歩く。普段はゴミの山で拾ったボロボロのTシャツを着ている子供たちに綺麗な服を着させ、スポットライトを浴びさせてあげたい・・・。

しかしそれは、貧困問題や環境問題の解決には何の影響も及ぼさないかもしれない。でもこのファッションショーという経験が、子供たちの未来を変える”触媒”になるのだとしたら・・・。

ただそれだけの想いで、彼女は友人たちとともに行動に出た。

HALLE

貧しき子供たちにこそハレの場を

美和さんがフィリピンの子供たちと関わるきっかけとなったのは、学生NGOのALPHAへの参加。フィリピンの貧しい子供たちへの教育支援を行うこの団体で、彼女は多くの子供たちと接し、また多くの社会問題と向き合い始めた。

フィリピンで教育支援ALPHA笠井美和

そしてワークキャンプで訪れたパナイ島で、初めてフィリピンのスモーキーマウンテンの実情を知る。想像を絶する劣悪環境の中で生活するピッカーズの子供たち。彼らが彼女に向ける子供特有の無邪気な表情は、一層彼女の心を締め付けた。

そんなピッカーズたちの生活自立支援を行うため、彼女が視察した現地NGOのLOOBはゴミを利用したリサイクル小物の製造・販売を手助けしている。彼らに裁縫技術や加工技術を教え、ゴミからキーホルダーや小型バッグなどを製作し、ゴミ漁りだけの生活からの脱出を促していた。

その光景を見た美和さんの、ファッション魂に火が付いた。

彼らは確かに着飾るためのモノを作っている。でも彼らは、着飾ることの喜びを知らない。それを知らない彼らが作るモノは、果たして人々を感動させることができるだろうか?

彼女は確信した。

「スポットライトを浴びることが、何よりも彼らには必要だ!」

ピッカーズのキャットウォーク練習

ウォーキングの練習をしているだけで、子供たちの表情は変わって来る。誰かに自分の姿を見てもらうことの喜びを知ると、彼らの中の誇りはより強固なものになる。そして自分の喜びが他者への喜びになる意味も知る。

人間の行為というものは、同じことをやっていても意識の違いだけで全く異なる結果を生みだすものだ。喜びに満ち溢れた体験のイメージを頭の中に持ち続けることが、未来を変え、人生を切り開く力となるだろう。

私たちは、そう信じたい。

*写真:© HALLE、ALPHA、LOOB

*参考:HALLE「ゴミ山の子ども達にファッションショーという晴れ舞台を!」学生NGO ALPHANGO LOOB