「クローンなど羊だけで十分」MITの最前線に学ぶ教育の違う形

QS社の世界大学ランキングにおいて2年連続首位となり、名実ともに世界最高峰と言えるMIT。世界中から選りすぐりの若き才能が集うこの大学は、多くの最先端技術をリードし、アメリカという国家の基盤を構築し続ける。

名声と権威に満ちたMITだが、その地位に甘んじることなく、高校生へのスカウティングにも余念がない。

LLRISE MIT

MITの理念

毎年千人ほどしか学部入学が許されない、狭き門のMIT。大学HPを見ると明記されているように、求める学生像は明確だ。隙のない完成品ではなく、意外性があり”磁場”の強い人物。もちろん高校生が学べる最高レベルの履修科目の修了が必要・・・ではなく、あくまで”推奨”されている。

課外活動の評価に関しても、いかにも査定を意識したものはやめるようにと明記されている。自分が情熱を注げることをとことん追求するように、とのことだ。テストのスコアにしろ課外活動にしろ、”良い評価だけを求めいい子ちゃんになるな。クローンなど羊だけで十分”と皮肉を込めて書かれているのが面白い。

そんなMITの情熱と雰囲気を多くの子供たちにも感じてもらおうと、近年様々なプログラムが開かれている。現在米国が力を注ぐSTEM(科学・技術・工学・数学)を基礎にした、幼稚園児向けから高校生向けまでのプログラムが一年を通してキャンパス内で行われる。

そんな中でも注目されるのが、2012年より始まったLLRISEだ。

LLRISEに込められたメッセージ

LLRISE MIT メール

一月になると全米の高校に一通のメールが届く。そのタイトルにはこう書かれている。

「MITはあなたのレーダーに捉えられていますか?」

このメールの送り主MITリンカーン・ラボ・コミュニティ・アウトリーチは、MITを代表する同研究所と地域社会や教育部門の連携や質的向上を図る機関。

そしてLLRISE(Lincoln Lab Radar Introduction for Student Engineers) は、そのリンカーン・ラボ内で開かれるサマープログラムだ。高校の最終学年を残したMITを志望する生徒たちを対象に、夏休みの二週間をMITの学生寮に住み込みながらレーダーの製作をするというプログラムを提供している。

参加者たちは、午前中に世界最高峰のラボのスタッフの講義を受け、午後には世界最高水準の設備を使いレーダー作りに勤しむ。そして”ものづくり”だけではなく、コミュニケーション能力も磨くことが求められる。MITが誇る科学博物館にて多くの人たちを前にレーダー技術のプレゼンをすることは、彼らにとって貴重な体験となるだろう。

さらには大学のアドミッションで、進学や入学後のキャリアアドバイスも受けることができる。しかもこのプログラムは、驚くべきことに無料だ。その秘密は、このラボがMITと国防総省の共同経営だというところにある。アメリカという国の防空・航空管制・海上保安・サイバー対策・宇宙研究の根幹を担うこのラボに、情熱と可能性あふれる若き才能を供給し続けることは、国家保全の根幹でもある。

教条や信念のみならず、向学心や好奇心をも巻き込み、人や組織を立ち上がらせようとする姿勢には本当に感心させられる。大学アドミッションのページにおいて、studyではなくworkという言葉が目立つのも、そのせいだろうか。

*参考:MIT Lincoln Laboratory: Community Outreach: LLRISE