6歳の子たちによるソーシャルアクション「いっぱい手を振って!」

新学期が始まって間もない10月のある日、学校から届いたニュースレターに校長からこんなメッセージが添えられていた。

「もうみなさんお気づきでしょうが、当校からペーパータオルが永久的に撤去されました。金輪際目にすることはないでしょう。これからは手を洗った後に、いっぱい手を振って水分を吹き飛ばすか、服でパンパン叩いて乾かしてください。これは生徒たちだけでなく、当校関係者及び訪問者など全ての人に適用されます。」

グリーンスクール ソーシャルアクション エコ

小学一年生たちのソーシャルアクション

インドネシア・バリ島にあるグリーンスクールは、電力や食料の自給自足を目指し、ゴミや排泄物もとことんリサイクルする究極のエコ学校。持続可能性にこだわったその教育哲学と学校運営は、今や世界的に有名だ。

見学者も世界中から毎日100人以上訪れ、放課後の学校見学ツアーはバリ島観光の密かな目玉となっているほど。2008年の開校時は百数十名ほどの小規模校だったのが、その後着実に学校規模を拡大し、2014年秋現在では生徒・スタッフ・保護者・訪問者などを含めると昼間人口は1,000人に近づく日もあるという。

ツアーの見学者たちは、この学校の奇跡的とも思える建築群に目を奪われ、そのエコシステムに驚嘆する。特にトイレの完全コンポスト仕様には、少なからずの抵抗感とともに畏怖の眼差しを向ける。恐る恐るそれを試した後は、安堵感とともに手を洗い、それを拭いたペーパータオルはゴミ箱へ。

グリーンスクール トイレ 手洗い

さて、世の中というものは、誰かが「おかしい」と声を上げなければ、そのまま惰性が働くものだ。

「なぜエコを謳う学校の手洗い場にペーパータオルがあるのだろうか?そしてなぜそれを今まで皆が使い続けてきたのだろうか?」

こんなシンプルなことを問うのに、この学校でさえ6年もかかったことは注目に値する。しかしそれ以上に注目すべき点は、この問いに取り組む栄誉を6歳の子供たちが得たことだ。

まず話し合うことから始めた

8月に小学一年生になったばかりのグリーンスクールが誇るこの若きチームは、まずクラスで話し合うことから始めた。最初の議題は「どうやったら手がよく乾くか?」。

いくつかのアイデアが出され、それらを慎重かつ大胆に比較した結果、クラスとしての総意は”手をいっぱい振る”と”服でパンパンたたく”でまとまった。また、彼らは他の生徒たちがどう考えるかが気になったので、校内アンケートを実施することにした。

【質問1】グリーンスクールにふさわしい手の乾かし方は?

A:ティッシュ
B:布のタオル
C:ペーパータオル
D:ドライヤー
E:手を振る

【質問2】ティッシュやペーパータオルをなくすべきか?

A:はい
B:いいえ

チームは協力し、ゆっくりと、しかし確実に集計した。その結果、質問1はE、質問2はAが圧倒的に多数を占めたことが判明。理事会や全校集会で賛同を得たチームは、ついに”Shake Off the Water”運動を立ち上げることとなった。

グリーンスクール ソーシャルアクション 一年生

キャンパス内のティッシュ・ペーパータオルの回収、啓蒙ポスターの製作と掲示、毎日の全校朝会での告知活動など、若きチームは多くの賛同者の協力を得ながら、このビッグプロジェクトを成し遂げようとしている。

未来志向の教育

冷めた大人の目で見ると、これは”やらせ”や”誘導”にも映るかも知れない。近年日本でももてはやされている参加型体験授業の一種に過ぎないかもしれない。だが、6歳の彼らからしてみれば、これがまさか授業だとは夢にも思っていないはずだ。

彼らは”トイレ”や”びしょびしょの手”といった「大好きなキーワード」が散りばめられた「とんでもなく面白いおもちゃ」を与えられ、様々な意見を聞きつつも自分たちで「ルール」を考え、それを年長者や大人たちに「提案」し、見事に「従わせた」!

どんな突飛な発想でも、アイデアを共有し、賛同者を集め、大きなうねりを作り、どんどん人を巻き込んでいく。これ以上の教育があるだろうか。

グリーンスクール ソーシャルアクション エコ 手洗い

若き社会活動家、未来のアントレプレナーを育てることを第一義として設立されたグリーンスクール。自給自足の精神やエコ思想ばかりをもてはやすのは、この学校のほんの一面だけを捉えているに過ぎない。

“戦う姿勢”と”調和の精神”、この二つのバランス感覚を学ぶことこそ、この学校が存在する唯一にして至高の理なのだ。

もしもあなたがこの学校を訪れ、大のオトナたちが濡れた手をすごい勢いで振って水をあちこちに飛ばし、しまいにズボンやスカートでパンパン叩いている姿を目にしても、決して笑わないでほしい。

あなたもこのルールに従わなければならないのだから。

*画像提供:Green School Bali、岡昌之