1笑い40円の従量課金な劇場がスペインで話題に

スペインはバルセロナのコメディー劇場が、笑うに笑えない減収対策として2013年に採用した「pay-per-laughシステム」が話題になっている。

このシステム、なんと入場料は無料だが、劇場で笑った分だけ料金を支払うという名前の通りのシステムなのだ。

pay-per-laughシステム

つまり、笑えなかったら料金は要りません、という潔いシステムを導入することによって、遠のいていた客足が戻り、劇場の収入も増えたという。

そしてこの「pay-per-laughシステム」が話題になっているのは、料金システムとして画期的であるばかりでなく、このシステムを支えているのが顔認識のテクノロジーという新しさでもある。

増税であえぐスペインの劇場

スペインの付加価値税(IVA)は日本の消費税と異なり、一律何パーセントといった税率では無い。食料品などの生活必需品は低率で、娯楽性の高い映画館や劇場は高率なのだ。

といっても、高率な方で8%なのだから、日本の消費税がいかに高いか分かる。

ところが2012年、スペイン政府は財政赤字削減のために、この劇場などへの税率をなんとそれまでの8%から21%にまで一気に引き揚げたのだ。はっきり言って暴挙である(ちなみに筆者は日本の消費税も暴挙だと考えており、その理由を電子書籍としてセルフパブリッシングした程だ)。

劇場に打撃を与える増税

当然劇場を訪れる客は激減した。いまどきネットやレンタルショップなど、娯楽用の出費を抑えるための選択肢は他にもあるからだ。

とうとうバルセロナの劇場「TeatreNeu」の観客数は前年比30%ダウンとなり、もはや劇場自体の幕を下ろさざるを得ない状況に追い込まれた。

しかし、ここで観客と劇場関係者の笑顔を取り戻すアイディアが生まれた。

「笑ってなんぼ」を地で行くテクノロジー

「TeatreNeu」のこの窮状を広告代理店のアイディアが救った。それが「pay-per-laughシステム」の導入だった。

来場する客にリスクが無くなったのだ。つまらなかったら金返せ、ではなく、つまらなかったら払わないで良いからだ。入場料も無料だ。

観客も納得

その代わり、面白かったら気持ち良く料金を払ってもらう。

劇場の座席には一つずつ顔認識システムが装着された。このシステムが客が笑ったことを認識すると、1笑いごとに0.3ユーロ(約40円)課金する。

顔認識装置を装着

但し、笑いすぎて破産しないように、どんなに笑っても上限は24ユーロ(約3,300円)としているところが良心的だ。

笑いが集計される

しかもこのシステムはさらに劇場での余韻を楽しめるようになっている。後で自分の笑いっぷりをチェックすることができるのだ。しかもその画像をSNSでシェアできる仕組みも用意されている。

笑いをシェアできる

この「pay-per-laughシステム」は画期的であるとして、2014年カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルのモバイル部門で金賞を受賞してしまった。笑う門には福来たる、ということだ。

笑いを認識するシステム

笑う門には福来たる──か?

「pay-per-laughシステム」は観客にリスクが無いことと、その話題性から人々を劇場に吸い寄せ、客数が増加し、劇場の収入も増加した。大成功と言える。

それを見た他の劇場も「pay-per-laughシステム」を採用し始めているため、まもなくスペインでは笑いを取ればすぐに「あ、そのギャグ○ユーロくらいだな」といった会話も聞かれるようになるだろう。

笑えた分だけお支払い

そしてもうひとつ。システムは観客がどこで笑ったかを分析できるので、芸人側も自分たちの笑える度が数字としてフィードバックされるため、モチベーションも上がることだろう。

スペインの劇場は、笑いで困難を乗り切ろうとしている。

*画像出典:Pay per Laugh | The Cyranos McCann