2025年12月6日、ジャカルタは水没するか?

「2025年12月6日ジャカルタ水没」

衝撃的な予測が、国連と世界銀行の気候変動政府間パネルによって発表された。このままのペースで海面上昇と地盤沈下が進行すると、この日にはジャカルタ市の大半が海の下に没してしまうというのだ。

海水は3km以上も内陸を侵食し、数百万人が避難を余儀なくされる。国家のシンボルともいえる大統領府も国家独立記念塔も水没の可能性がある。港や空港、主要幹線道路も水没し、政治的・経済的打撃は避けられないだろう。

俄かには信じがたい事態だが、現実問題として着実に迫って来ている。人々はそんな国家的大危機からの回避を、インドネシアのもう一つの国家シンボル”神の鳥ガルーダ”に託そうとしている。

グレートガルーダ ジャカルタ 人工島 水没

*写真出典:KuiperCompagnons

ジャカルタの現実

背後にそびえる広大な山地より注がれる豊富な地下水に支えられ、港湾都市として栄えてきたジャカルタ。世界屈指の大都市となった現在でも、上水道の大半はその地下水が使用されている。

だが、背後の山地での森林伐採が進むにつれて、市内の地下水位は急速に低下。水を求めてより深く井戸を掘ることは悪循環を生み、深刻な地盤沈下が止まらない。毎年市内平均で5~10cmも沈み、最も激しい地域では今後10年で5mも沈下するという。

ジャカルタのスラム街である海岸沿いのエリアでは、もはや井戸から真水を得ることはできなくなり、人々は毎日水を求めて遠くまで何度も往復する。目の前には海が広がり、多くの川が流れるジャカルタという大都市で、人々が水汲みの長時間労働に追われているということは何という皮肉だろうか。

2014年現在で、すでに市の半分の面積が海抜0m以下となってしまったジャカルタ。長年それは問題視され、多くの警告も発せられてきたにもかかわらず、経済発展優先で蔑ろにされてきてしまった。

毎年のように起こる大洪水、水没する街並み、麻痺する都市機能・・・。このままでは、2030年にはスカルノハッタ国際空港が水没、2050年には首都機能が集中する市の中心部が水没すると見られている。

重い腰をようやく上げた政府は、荒れ果てた山間部で植林活動を始め、市内の排水システムの向上に着手。しかし、その成果が表れるのは数十年後だ。

その前にジャカルタは、”2025年12月6日”を乗り越えなければならない。

*映像出典:Deltaresfilm

水没の危機を回避せよ

海面は、月と太陽の引力によって大きく上下している。海面潮汐と呼ばれるこの働きは、地球の地軸の傾きと月や太陽との位置の関係で18.6年周期で大きく変動していることが知られている。ジャカルタ周辺の海はこの影響を大きく受ける海域であり、18.6年ごとに大幅な海面上昇が記録されてきた。

前回(2007年)も市内に大洪水を巻き起こし、死者は85名にのぼった。次のXデーは、2025年12月6日。

だが、事態は以前と大きく異なる。ジャカルタの地盤沈下が現在のペースで進めば、2025年には市内のほとんどが海抜0m以下になっているのだ。ジャカルタは、この日、海に沈む。

この非常事態を回避するために、現在2つの手段が検討されている。

海水を避け北部山地へ都市機能を”遷都”するか、沖に巨大人工島を作り新都市を建設するか・・・。

さまざまな利権や思惑が複雑に絡み合い、迫り来る水没の危機をよそに、この重大な選択も先延ばしされている。そこで妥協案として、まずは沖合に防波堤と堰を建設することが先日合意され、着工式が執り行われた。高さ15m、全長50kmにも及ぶ巨大な防波堤だ。

この計画を主導するのはオランダ政府。インドネシアの旧宗主国でもあり、”海抜下先進国”としてのノウハウも豊富だ。まずは来るべき11年後のXデーに向けて、急ピッチで工事が進められる。

神の鳥ガルーダの翼に乗って

ジャカルタが無事にこの日を乗り越えたら、その先には”遷都問題”が待っている。オランダとインドネシア両政府による計画では、防波堤内に巨大人工島”グレート・ガルーダ”を建設し、都市機能の分散を図ることになっている。

ガルーダはインドネシアの国家シンボル。世界へ大きく羽ばこうとしているインドネシアの姿がそこに重ねられている。オフィス・住居エリアの他に、新しい港、そして新空港も建設される予定だ。新空港は同じ洋上空港である関西国際空港がモデルにされる。

だが、外海と断絶された内海の汚染も心配され、この計画には環境団体の反対なども多い。水質管理は最重要課題だ。しかしもはや”待ったなし”のところまでジャカルタは追い詰められていることも事実。

2025年12月6日、ジャカルタは海の底にあるのか?それとも・・・。

グレートガルーダ ジャカルタ 人工島 水没2

*写真出典:KuiperCompagnons