TOKYO STARTUP GATEWAY 2014で気になったファイナリスト3人

前回に引き続き「TOKYO STARTUP GATEWAY 2014」を取り上げたい。

今回は、FUTURUS的に引っかかった3名のファイナリストとその事業案を紹介する。

T字を見せるファイナリストと授賞者

嘉数正人氏の「E-cat Kit」

事前にインタビューを決めていた一人が嘉数正人氏だったが、なんと「オーディエンス賞」と「優秀賞」のダブル受賞という快挙を成し遂げた。これについては前回の記事を参照されたい。

嘉数氏が考えたのは、大きく重い物は重機が運ぶ。長距離はトラックが運ぶ。しかし短距離でちょっと重い物は、相変わらず人が猫車と呼ばれる手押し一輪車でとぼとぼと運んでいる。しかもあまり足場も良くないところで。

これは何とかならないのか。

そこで嘉数氏が考案したのが一輪手押し車を電動化してしまうキット「E-cat Kit」だった。

E-cat_Kit

ホイール、バッテリー、コントローラを取り付ければ電動化できるキットで、オプションとして操縦者自身が乗れる台がある。

電動化したのはアシスト機能では無く、アクセルで操作する完全な自走化だ。アシスト機能にしなかったのは、既に幾つかの起業が特許を取得していたためだという。

現状では時速23~24キロメートルだが、いくらでもパワーアップが図れるという。積載重量は手押し車の積載重量の限界次第である。例えば会場に展示されていたものは80kgが上限となっていた。

まだ在学中の学生だが、ネットで中古の本やCDを販売したり電子機器の輸入販売を行うなど、起業家スピリットは既に発揮されてきた。

とにかく「楽したい」という発想が基本に有り、電車から会社や学校、自宅までの短距離を歩かないために電車に持ち込める折りたたみ式電動バイク「ORIVE」も開発している。また現在では靴に取り付けられるモビリティの開発まで行っている。これも「楽したい」ためだ。

清水敦史氏の「垂直軸型マグナス風力発電機」

福島原発事故以来、持続可能社会への道筋を示すことを目指し、また新興国を中心とした約13億人が電気の無い生活をしていることを解決すべく開発されたのが「垂直軸型マグナス風力発電機」だ。

マグナス風力発電機

マグナスとは、約150年前にドイツのマグナス博士が提唱した理論で、回転している球体や円柱に風が当たると、風向きと同じ方向に回転している側に揚力が発生するという理論だ。例えば野球の変化球が曲がる仕組みもこの理論で説明できる。

マグナス風力発電機は複数のメーカーが研究を行っているが、清水氏が開発した垂直型マグナス風力発電機は世界初の仕組みで特許を取得している。

マグナス風力発電機のメリットは、全方向からの風に対応できること、小型で地上付近に設置できるためメンテナンスが容易なこと、重心が低いので、設置できる場所が多いことである。

他にもプロペラ式ではなく、低速回転であるため騒音が小さくバードストライクもおきにくい。

また、まだ現状では構造上の課題があるとしながらも、円筒翼の自転回数を制御することで、微風でも台風時の強風でも理論上は発電可能だ。

清水氏が貢献できると考えているのは、垂直軸型マグナス風力発電機がビルの屋上など設置場所を選ばず、台風でも発電できる対応力の広がりによって、少しでも偏った発電方式への依存を減らせるのではないか、という部分だという。

木部寿子氏の「フィリピンの貧困層へ生活用品を届けるBoP事業」

経済成長著しいフィリピンだが、未だ人口の7割を超える貧困層には限られた商品やサービスにしかアクセスできないという現状がある。

そこで木部氏が注目したのがフィリピン内に70万店舗ある日用品店「サリサリストア」だった。

木部寿子氏_中央

ただ、これまでのサリサリストア自体は、小売店から商品を仕入れて再販しているため価格が高くなり、低所得者層には商品が行き渡らないという現状があった。

このサリサリストアと提携し、例えば商品をメーカーから直接共同購入することで価格交渉力を付け、既存の流通経路も活用したエコシステムを作り上げようとしている。

そして木部氏らが立ち上げたのがNavel Projects Inc. というBoP(Base Of Pyramid)事業だ。BoPとは世界人口の70%を占める低所得者層を示す。

また、サリサリストアから吸い上げたマーケティング情報をメーカーに提供することで、需要と供給のマッチングを行うメディアを構築することも目指している。

現在はまだアプローチし易い日系メーカーを対象としているが、将来的にはフィリピンで現地生産しようという外資も含めたメーカーにアプローチしていきたいという。

また、将来目指すべきフィリピン以外の国々にある貧困層対策については、必ずしもフィリピンで構築したシステムが応用できるとは考えておらず、その時代・場所に相応しい支援システムを考えていくべきだとしているところは柔軟性を感じられた。

魅力的な若者達

以上、FUTURUSセレクトとして3名に取材したが、皆さん会場では何度も同じ説明をさせられたであろうにも関わらず、快くインタビューに答えて頂いた。

目指すビジネスは異なるものの、根気よく丁寧に、そしてなにより楽しそうに自分たちのビジョンを語る姿勢は共通していた。

また、もう一つの共通点は、彼・彼女達が、非常に魅力的な雰囲気をまとっているということだ。

コンテストの審査員からもコメントがあったが、人を惹き付ける魅力は起業家としての才能の一つだという。

今回インタビューした3名は、いずれも人を惹き付ける魅力があり、その意味では皆さん起業家の素質があるのだろう。

うんざりするような政治や経済政策が続いている日本で、この会場だけは希望を持たせてくれそうな印象を受けた。