インドネシアのコンテンツビジネスに日本企業が進出

インドネシア映画界が総力を挙げた映画『Pendekar Tongkat Emas (プンデカール・トンカット・ウマス~黄金の杖の剣士)』が完成し、2014年12月に公開された。2015年にはベルリン国際映画祭に出品され、その後世界各地で公開される予定だ。

同作の注目点は数多くあるが、中でも同国映画史上始めて日系企業が公式マーチャンダイザーとして参加していることは、今後のインドネシアにおけるコンテンツビジネスと日本企業進出のチャンスを考えることにおいて非常に重要かもしれない。

pendekar tongkat emas EVA CELIA プンデカール・トンカット・ウマス(黄金の杖の剣士)
*EVA CELIA 画像出典:Miles Films

インドネシア映画産業

中国、インド、アメリカに次ぎ世界第4位の人口を誇る大国インドネシア。しかし度重なる政治・経済不安によりそのポテンシャルは生かせないままだった。だが近年の目覚ましい経済成長により様々な社会インフラが整備されつつあり、多くの日本企業も様々な分野で進出を始めている。

中でも映画産業とその関連ビジネスは全くのブルーオーシャンと言える。非常に大きな可能性を秘めており、日本企業にとってさまざまなチャンスがあるだろう。

そんなインドネシア映画産業だが、長らく同国情報省の管轄下にあったこともあり、常に時の政府や世界情勢によってその活動と運命を左右されてきた歴史を持つ。同国が政治的にも経済的にも揺れに揺れた90年代には、映画産業は壊滅的な打撃を受け、テレビやDVDの普及もあり映画館の大多数が倒産。

2001年には年間映画製作本数がわずか4本にまで落ち込んでしまう事態になった。しかしその後の経済成長と共に新たな興行システムが整備され、今やインドネシアはインド、中国、日本に次ぐアジア第4位の映画大国となろうとしている。

日本式ビジネスの導入

プンデカール・トンカット・ウマス~黄金の杖の剣士)  Pendekar Tongkat Emas インドネシア映画

*画像出典:Miles Films

今回このインドネシア映画界初の超アクション大作に加わった日系企業はTMSアジア。「ルパン三世」「それいけ!アンパンマン」「名探偵コナン」そして現在人気の「弱虫ペダル」などを手掛ける日本の大手アニメ製作会社トムス・エンターテイメントの現地法人だ。

これまでの同国映画界では、映画制作会社が宣伝・配給などの全てを行わなければいけなかったという事情もあり、コンテンツ管理や関連グッズ販売まで手が回らず、権利関係も曖昧である種の”無法地帯”だったと言える。そこへ日本流のビジネスを導入しようというのがインドネシア映画界の狙いだ。

同国映画史上初めて、映画の世界をコミック、小説、ゲームにまで広げ、これまで映画関連グッズの展開が全く浸透していなかった同国で、TMSアジアは公式マーチャンダイザーとして関連商品を制作販売する。登場人物のフィギュアは早くも熱心なファンに期待されているようだ。

書店や玩具店、映画館での特設販売コーナーの設置など、インドネシア映画産業初の試みも行われる。同社は関連商品の制作販売だけでなく、今後は同国内において現地クリエイターを起用し、MADE IN INDONESIAのアニメーションを制作していく予定だ。

同国での子供や若者たちの間での海外アニメ(特に日本製)の人気には凄まじいものがある。しかしこれを快く思わない人々も多く存在し、規制をかける動きも起こりつつある。今後は日本からのコンテンツ輸出ではなく、現地のニーズや嗜好に合わせた作品作りが主流となっていくことだろう。

インドネシアの格闘技熱

主演は国民的人気俳優ニコラス・サプトラ。その他出演者もインドネシア映画界のオールスター級だ。また、プロデューサーのミラ・レスマナ、監督のイファ・イスファンシア両者が女性という、インドネシア映画界のみならず、アクション大作の映画の制作布陣としても斬新で、非常に注目されるだろう。

映画全編に亘って展開されるアクションは、インドネシアが誇る武術プンチャック・シラット。礼を重んじ、相手を倒すことより自己研鑽に重きを置くそのスタイルは、日本の”道”に通じるものがある。かつてブルース・リーが自身の道場を開く際に、このシラットを取り入れたことで世界的に知られるようになった。

格闘技好きのインドネシア国民の間でも人気は高く、子供にこれを習わせることが若い親たちの間でちょっとしたブームとなっているほど。このシラットとバリ舞踊や神事を組み合わせたメパンティガン・マーシャルアーツのショーは、今やバリ島の人気観光スポットとなっている。

メパンティガン バリ島 インドネシア武術 シラット
*画像出展:Mepantigan Bali

インドネシア映画界が満を持して世界に送り出すこの映画の、日本における公開が待ち遠しい。

*参照:Miles FilmsMepantigan Bali