患者の体内に実験室を埋め込む!? 最適な抗がん剤を判定するデバイスは米粒サイズで30種類の薬剤搭載

患者の体内に実験室を埋め込む!? 最適な抗がん剤を判定するデバイスは米粒サイズで30種類の薬剤搭載

抗がん剤というのは100種類以上のものが認可されているという。しかし、どの薬がその患者のがんに適しているかを判断するのは、そう簡単ではない。あるていどは絞られるとしても、そこから先は、使ってみて、その効果を見てみないとわからないのだろう。

しかし、そのプロセスを改善する新しいデバイスを、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が開発した。

 

患者の体内に実験室を埋め込む

開発されたのは、腫瘍に埋め込んで使うデバイスだ。米粒ほどのサイズながら、最大30種類の薬剤を搭載できる。それを腫瘍に投与し、効果を見ることで、その患者の腫瘍にどの抗がん剤が適しているのかをいち早く判断できるというものだ。

現在使われている抗がん剤の多くは、DNAにダメージを与えたり、細胞の機能を阻害したりする。最近は遺伝子変異を起こした腫瘍細胞に的を絞った薬剤も開発されているが、個々の患者にどの薬が効果的なのかを予想するのは難しい。

患者からがん細胞を採取して、それを培養し、どの薬が効果的か調べることもあるが、その場合でも腫瘍細胞を本来の環境とはちがう環境に置いてしまうことになるので、必ずしも正確な判断ができるわけではない。やはり患者の体内にある腫瘍がどう反応するかを見たほうがいい。

Tumor_Implantable device02

この手法は、実験室を患者の体内に設置するようなものです。安全だし、本来の環境の中で反応をテストすることができます

と研究者のひとりOliver Jonas氏は説明する。

このデバイスは、結晶構造の硬いポリマーでできている。生体組織検査用の針を使って、患者の腫瘍の部分に埋め込む。埋め込まれると、薬剤は腫瘍の内部に200~300ミクロンほどしみでるようになっているが、薬がお互いに重なりあうことはない。

どんなタイプの薬剤もこのデバイスの貯蔵スペースに入れることができる。そして、実際に静脈注射によって投与したときと同じように腫瘍細胞に作用するように、その薬剤の量を調整する。

薬剤が投与されて1日後、埋め込まれたデバイスは、周囲の腫瘍組織と一緒に採取される。そして、組織をスライスし、抗体で着色するなどして、細胞が殺せているかどうか、あるいは増殖してしまっているかを分析する。

 

個々の腫瘍に最適な薬を判定できる

単一の薬剤同士の効果を比較することもできるが、複数の薬剤をひとつの貯蔵スペースに入れれば、薬剤を複合的に使った場合の効果も調べることができる。

これまで、抗がん剤の選択は統計に基づいてなされてきましたが、このデバイスを使えば、本格的な化学治療に先立って、個々の腫瘍に対してどの薬剤を使うのがベストかということを判定することができます

と論文執筆者のひとりJose Baselga氏は語る。

研究チームは現在、結果をより早く知ることができるように、デバイスを患者の体内から取りださずに分析ができるような改善にとりかかっている。そして、来年にも乳癌患者で臨床試験をスタートすることを計画しているようだ。

lab-385348_1280

また、この研究は新しい抗がん剤の開発と、その治験にも役立てられることが期待される。

すでに現代においても、がんは昔ほど“不治の病”ではなくなった。そしてバイオ技術やナノ技術の進化によって、現在次々とがんの新しい治療法が研究されている。近い将来これらが実用化されれば、がんの治癒率は大幅に向上するかもしれない。

 

【関連記事】

※ 体内を巡る医療用ドローンが開発!心臓発作や脳卒中の予防に役立つか

※ ロンドン大学「コーヒーが肝臓がんに効果的かも」

※ 謎の電波をキャッチ!? 天文学者達を悩ませたモノの正体はアレだった…

※ 心停止したときには、空からAEDが飛んでくるようになる!?

※ 「3Dバイオプリンター」でついにアレをつくる?12年後にはWiFI搭載の人工眼球が移植できるようになるかもしれない

【参考・画像】

※ MIT News