アウディが植物からつくる合成ガソリンを発表

アウディが植物からつくる合成ガソリンを発表

化石燃料を燃やして温室効果ガスをだしてしまったのなら、また温室効果ガスを燃料に戻してしまえばいい。エネルギーを使えば、それは不可能ではない。

当サイトでは過去にも、アウディが空気中の二酸化炭素と水、そして自然エネルギーを使ってディーゼル燃料を作りだしたというニュースを紹介した。こんどは、再生可能原料を使ってガソリンを合成したという。

 

ディーゼル燃料につづいてガソリンを製造

アウディがグローバル・バイオエナジーズ社と協同で、最初の『e – ベンツィン』を作りだしたと発表した。ベンツィンというのはガソリンのことだ。この『e – ベンツィン』には、石油由来の成分は使われていない。それでいて、100%イソオクタンであり、いわゆるオクタン価は100となる。硫黄やベンゼンをまったく含んでいないので、非常にきれいな燃焼をするという。

簡単にディーゼルエンジンとガソリンエンジンのちがいを説明すると、ディーゼルエンジンは空気を圧縮したところに燃料を噴射して自然着火させる。ガソリンエンジンでは空気にガソリンを混ぜておいて、それを圧縮して点火プラグで火花を飛ばして着火する(圧縮の度合いはディーゼルエンジンより低い)。

ディーゼルエンジンとガソリンエンジンではこういったちがいがあり、それに使われる燃料の性質も異なる。ディーゼル燃料やガソリンの主成分である炭化水素はCとHでできた化合物だ。しかし、そのCとHの組み合わせにより、炭化水素にはさまざまな種類があって、ディーゼル燃料とガソリンでは、含まれる炭化水素の種類がちがうのだ。

アウディはすでに空気と水からサステイナブルなディーゼル燃料を作りだすことには成功していたが、それに今度はガソリンを作りだしたというのが今回のニュースだ。現在はバイオマスが使われているが、将来的にはバイオマスを使わずに水、水素、二酸化炭素、そして太陽光だけで生成することを目指している。

また、ガソリンにも種類があるが、オクタン価100というのは、通常のガソリンでいえば、高価なハイオクガソリンのほうに分類され、高圧縮エンジンにも使えるものだ。

アウディのサステイナブル・プロダクト開発部門の長であるReiner Mangold氏は、アウディが、化石燃料に依存しないCO2ニュートラルな燃料の開発において幅広いアプローチを行っていることを強調し

グローバル・バイオエナジーズ社は、アウディ『e – ベンツィン』製造の可能性を示してくれました。これは、アウディ燃料戦略において大きな一歩となります

と語った。

すでにアウディは『e – ガス(合成メタン)』の産業規模の生産をはじめている。そのほかにも、『e – エタノール』、『e – ディーゼル』、そして『e – ベンツィン』を、さまざまなパートナー企業とともに研究している。

グローバル・バイオエナジーズ社は、『e – ベンツィン』を製造する試験工場をフランスのPomacleに設置し、化石燃料ではない再生可能原料からイソブタンを製造する。もうひとつのパートナーは、Fraunhofer Center for Chemical-Biotechnological Processesで、そこの研究者が気体のイソブタンを液体のイソオクタンに変換する。グローバル・バイオエナジーズ社は、Fraunhofer Centerに、デモ工場を建築中で、2016年にはそこでより大きな規模の生産が行われる予定だ。

 

保存性・貯蔵性がメリットか?

上にも書いたとおりアウディは水、空気(二酸化炭素)、自然エネルギーから生成するこの手のサステイナブル燃料に注力しているようだ。ただ、これが未来のエネルギー源の主力になるかといえば、絶対にならない。なぜなら、太陽光などの自然エネルギーは、燃料を作ることに使うよりも、そのまま電力として使ったほうが圧倒的に効率がいいからだ。

では、このような合成燃料にどういう存在意義があるかといえば、“エネルギーの貯蔵”だろう。電力はそのままの形で貯蔵するのがきわめて困難だ。しかし、燃料という形に変換しておけば、貯蔵は容易になる。

自然エネルギーの大きな欠点のひとつは、季節や時刻や天候の影響が大きく、安定供給がむずかしいことだ。そこで、必要以上の電力が発生したときにはその余剰電力を使って燃料を生成し、電力が不足する時間帯にはその燃料を使ってカバーするというのが、サステイナブル合成燃料の理想的な活用法だろう。

そういう意味では、水を電気分解して作る水素燃料と役割的には近いと考えられる。水素は水を電気分解するだけでいいので製造は簡単だろう。ただし、高圧タンクや燃料電池が必要になるなど、貯蔵や使用が容易ではない。それに比べると、合成ディーゼル燃料や合成ガソリンは、製造は難しいが貯蔵や使用は容易だ。

ただし、実際には設備や流通のコスト、環境負荷等、さまざまなメリットやデメリットを考えないと、何を選ぶべきかという答えはでないだろう。

いっぽうで、アウディがこれほどサステイナブル燃料に力を入れているというのは贖罪意識も関連しているのではないだろうか。

化石燃料を消費する“自動車”を大量に作りだしているメーカーが、イメージの改善を図るとともに、ユーザーには「燃料を使って走る自動車も、サステイナブルになりえるんだ」という言い訳を与えることができる。

サステイナブルなエネルギーには、さまざまなアプローチがでてきている。いっぽうで、要素が複雑にからみあってきているため、ユーザーにとっては判断がどんどん難しくなっていく局面がこれから訪れるかもしれない。

 

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【参考・画像】

※ Audi