究極の抹茶づくりで「消えゆくモノ」に光を

究極の抹茶づくりで「消えゆくモノ」に光を

今、日本だけでなく海外でも抹茶は人気を博している。健康的な和食ブームや茶の機能性が注目されているようだ。『抹茶』の背景にはどんな風景が広がっているのだろう。

 

200年以上の歴史をもつ茶園

創業から220年以上京都府城陽市で茶園を営む株式会社孫右ヱ門(以下、孫右ヱ門)は、現在碾茶づくりを専門とし、全国の品評会で常に上位を占めるほど、その品質に定評がある。

煎茶が露地栽培されるのに対して、碾茶は玉露と同様に収穫前に一定期間覆いをする。日光を遮ることで、渋みが少なく旨みが新芽に多く蓄積する。玉露と異なる点は、茶葉を揉まずに仕上げること。覆下栽培した茶の生葉を、揉まずに乾燥した茶葉を茶臼でひいて微粉末にしたものが抹茶だ。

収穫30日前から覆いをすることで、渋みが少なく、旨みが新芽に蓄積し、おいしい碾茶

 

こだわりの製法と品質

抹茶にも様々なグレードがある。例えば、手で摘み取るのか機械で刈るのか、最も旨み成分が多い一番茶だけなのか二番茶や秋番茶まで使うのか。また現在は一般に茶畑の被覆には化学繊維の『寒冷沙』が用いられるが、究極の品質は、安土・桃山時代から伝わる『ほんず製法』によることが知られている。こうした製法の違いで、茶の湯用や調理加工用、業務用などの用途に分かれる。

孫右ヱ門では、イワシやニシンなどの有機肥料をたっぷり使用し、年に一度一番茶だけを丁寧に手摘みすることにこだわる。被覆には『寒冷沙』も使うが、『ほんず製法』を継承し、より高品質の抹茶づくりにチャレンジし続けている。

最高級の抹茶の製法としてしられる「ほんず製法」は、均等にわらを広げるには高度な技術がもとめられる。(画像提供/孫右ヱ門)

『ほんず製法』は、『よしず』と『わら』で層をつくり、微妙な加減で光を遮ることで、柔らかい茶葉が育ち『覆い香』とよばれる高貴な香りが生まれる。しかしコストパフォーマンスが悪く、わらを均等に広げるには高度な技術が必要だ。しかも時代の流れとともに、国内産ヨシの需要が減り職人も高齢化しているため、現在『ほんず製法』を続ける農家は、全国でも数軒程度にすぎない。

ヨシは森林同様に、人の手でヨシ原を管理しなければ、荒れた藪になってしまう。2月にヨシを刈って3月にヨシ原を焼くことで、虫や他の雑草を除去でき、翌年また健康で良いヨシが生えてくるという。

孫右ヱ門では、良質で知られる京都市伏見区のヨシ原の葦を使用している。4年前にヨシ焼きは廃棄物処理法の野焼きに当たり禁止されたが、ヨシ原を残すため伏見の市民団体が中心となって、熱心にヨシ焼きの重要性を訴えた。そして2年後に「河川管理に必要な廃棄物の焼却」として認められ、新たな形でのヨシ焼きをスタートできた。

 

消えゆく伝統を新しい時代へ

“豊葦原の瑞穂の国”と、古事記に記された日本の美しく豊かな風景は、消えゆくモノになってよいのだろうか。一度途絶えたモノを取り戻すことは難しい。孫右ヱ門が最高級の抹茶を追求するための『ほんず製法』にヨシ原は不可欠であり、また『ほんず製法』を継承し続けることがヨシ原を守ることにもつながっている。

碾茶にローズピンクをブレンドしたフレーバーティー。(画像提供/孫右ヱ門)

伝統の消えゆくモノをいかに新しい時代に応じた形に昇華するか。孫右ヱ門は、茶の魅力を次の世代に伝え、新たな時代に応じた茶文化を提案することにもチャレンジしている。

新製品のフレーバーティーは、これまで市場に出回ることのなかった碾茶にローズピンクをブレンド。碾茶独特のすっきりとした旨みに、ローズの上品な香りが贅沢に楽しめる。美や健康に関心の高い、新たなターゲットの心を揺さぶる商品だ。

究極の抹茶は、効率を優先させずに地道な仕事を大切にしている人、また地域の自然や資産を守る人たちに支えられている。茶はただ喉を潤すだけでなく、人とのコミュニケーションの場をつくるもの。話題の一つとして、このような背景にも心を寄せて味わいたい。

 

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【参考・画像】

※ 株式会社 孫右ヱ門