パーキンソン病の症状を改善させるヘッドバンド型装置

パーキンソン病の症状を改善させるヘッドバンド型装置

パーキンソン病を世界に知らしめたのは、アトランタオリンピックで聖火を点灯させたモハメド・アリの姿だったかもしれない。彼の震える手こそが、パーキンソン病の代表的な症状だった。パーキンソン病は薬で一時的に症状を抑えることはできても、決定的な治療法はないらしい。

そんなパーキンソン病の症状を改善する“器具”をアメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究者が発表した。

 

脳に刺激を与える

パーキンソン病の症状は、前述のモハメド・アリの映像でもうかがえるような震えや、筋肉の硬直や動作の緩慢さだ。そのため、たとえば病院外での食事の際などには特に困難をともなう。時間がたつと薬の効果もしだいに下がっていくという。

そこで、たとえば家庭などでパーキンソン病を症状を抑えることができる、ヘッドバンド型のデバイスをジョンズ・ホプキンス大学の大学院生が開発した。その試作品は、臨床試験の前にいくつものコンペティションで入賞し、賞金も獲得した。

研究チームの5人の学生がこのデバイスの開発を決意したのは、昨年の夏。ジョンズ・ホプキンス病院でパーキンソン病の神経外科手術を見学したのがきっかけだという。パーキンソン病はアメリカ合衆国に約100万人、全世界で700万人の患者がいる。

病気が進行した患者へのひとつの処置として、『脳深部刺激療法』というのがある。これは、外科手術によって、脳の運動をつかさどる部位に導線を埋め込むというものだ。導線は心臓のペースメーカーのようなパルス発生機に接続する。そのデバイスで脳に電気信号を送り込むとパーキンソン病の症状が改善するという。

でも、その手術には切開が必要だし、10~15時間もかかるものなのです。非常に費用もかかるし、どの患者さんにも認められる手術ではないんです。そこで、そのような切開手術を必要とせずに、同様の効果が得られる処置法ができないものかと考えたんです

と、研究チームのShruthi Rajan氏は語る。

 

手術を不要にするヘッドバンド

そこで学生たちは、ジョンズ・ホプキンス薬学部の研究者で、身体を傷つけない方法でのパーキンソン病の治療を研究をしているYousef Salimpour氏に相談した。彼の研究では、脳の特定の部位を刺激するために、頭のまわりに設置した電極間に微細な電流を流す方法をとる。そこで研究チームの学生たちはその方法を採り入れることにした。

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彼らが目指したのは、パーキンソン病の患者が扱いやすい大きなボタンで操作できる、バッテリー駆動の試作品だった。そして医師の立ち会いのもとで1日に20分のみ使えるとした。

そして、4ヵ月以上かけて何十人ものパーキンソン病患者からヒアリングをしつつ、協力も受けてヘッドバンドのデザインを改善していった。また、ジョンズ・ホプキンスの神経学者、神経外科医、神経エンジニアら、さまざまな研究者の協力で開発を進めた。

準備段階における結果は前途有望なものでした。パーキンソン病の患者さんたちには、もっとその処置をやってくれるように頼まれましたが、現時点ではFDA(アメリカ食品医薬局)に認可されたポータブル版の市販品があるわけではないので、それは不可能でした。(中略)私たちは、この技術をもとにしたデバイスで、パーキンソン病の患者が早く自宅でもこの所地ができるようになることを望んでいます

と、この試作品の開発に協力した研究者Salimpour氏はいう。

近年は遺伝子関連やナノ技術の進歩による新しい病気治療法が続々と研究されているが、それ以外の方法でも、新しい病気治療法の探求は進んでいるようだ。

パーキンソンはやはり高齢になると出やすい病気のようだ。高齢化が進むこれからの世の中では、これまで以上に求められる技術かもしれない。

 

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【参考・画像】

※ Johns Hopkins news network