体内の寄生虫は健康に不可欠だった? 米研究で解明

体内の寄生虫は健康に不可欠だった? 米研究で解明

健康に悪い影響を与えるといわれることも多い、体内の寄生虫。そのインパクトのあるビジュアルは、写真などで一度見るとなかなか忘れがたいものだ。

ところが、最近ではこの種の虫が体に良い影響をもたらしている可能性が判明。先日アメリカの大学が発表した研究によると、消化管内に寄生する虫は、細菌感染によって引き起こされる長期学習や、記憶の障害から赤ん坊の脳を守っている可能性があるということだ。

 

認知障害に関連する慢性的な脳の炎症に応用可能か

『journal Brain, Behavior, and Immunity』に掲載された米デューク大学の研究によると、サナダムシが寄生した赤ん坊のラットは、それらを体内に持たないラットが大人になってから発症する脳の炎症を回避することができたという。驚くべきことに、こうした効用は赤ん坊が胎内にいる間から現れるようだ。

すなわち、寄生した妊娠中の母親ラットは、こうした保護効果を体内に寄生虫を持たない赤ん坊に伝えるというのだ。

この発見は、アルツハイマー病や自閉症、うつ病といった認知障害と関連づけられる慢性的な脳の炎症を扱ったり、あるいはそうした病気を避けたりする際の新たな方法を示すのかもしれない。

 

寄生虫が少ないことが免疫細胞の反応に影響

同大学の神経科学者が行った以前の研究によると、生まれたばかりのラットが細菌に感染すると、脳内の免疫細胞は続いて起こる感染に対し極度に敏感な状態になり、サイトカインと呼ばれる情報伝達の役割を持つタンパク質を連続的に生み出すという。このサイトカインは成長した後に認知障害を引き起こす可能性も指摘されている。これまで、一度の感染がなぜ脳の免疫細胞を過度な活動状態にさせるかいついては不明瞭だったそうだ。

ところで、ある学説によると、自己免疫や炎症に関連する病気は、消化管内の寄生虫をはじめ体内に棲む生物が多すぎることよりもむしろ、少なすぎることの結果かもしれないという。

Worms generated texture

 

寄生虫を持つラットが見せた反応とは

今回、チームは体内に寄生虫を持つラットと持たないラットの2つのグループに分け、細菌に感染させた。すると、ワーム群のラットはサイトカインの過剰な生産によるダメージを回避することができたという。研究の中心メンバーStaci Bilbo氏は「脳内における同様の免疫の反応は見たことがない」と話している。

次の実験では、寄生虫を持たない2つのグループのラットを準備。食事や運動などの生活の条件、遺伝上の条件は同一ながら、片方のは親がサナダムシを持っていた点が異なった。両グループに大腸菌を注入すると、この場合も親が寄生虫を持っていたラット群はもう片方とは異なる反応を見せたとのことだ。

Rats

これまで知られていなかった、消化管内の寄生虫の役割を解き明かしつつある研究。人間の病気への応用も期待できる分野なだけに、さらなる研究を待ちたいところだ。

 

【参考】

※ Gut Worms Protect Babies’ Brains From Inflammation – Duke Today

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