ヒトゲノム合成計画で親のない子どもが生まれる?

生命工学における最先端の研究プロジェクトが密かに話し合われていたなんて、まるで秘密結社が暗躍するSF映画のワンシーンだ。

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そんな話し合いが行われていたことが、6月2日に発表されて明らかにされた。なんと、ヒトゲノムの合成を目指す10カ年計画が話し合われていたというのだ。

これ、陰謀なのか、単なる科学者たちのカンファレンスだったのか。

 

密かに行われたヒトゲノムに関するカンファレンス

このヒトのDNAを人工的に合成するというプロジェクトは、まだ先の話では無く、年内にもスタートする見通しだという。

このヒトゲノム合成計画は、25人の著名な科学者たちが発起人として連名して発表された。

将来的には人のゲノム、つまり全遺伝子情報を、30億対の塩基の化学成分から合成してDNAを作りだし、細胞の中で機能させるのだという。

その名も「Human Genome Project-Write」。まずは1億ドルの資金からスタートする。

ところがこのプロジェクトに関するカンファレンスは、実は発表以前の5月12日に密かに行われていた。

その参加者は科学者や弁護士、起業家など約150名で、ハーバード・メディカルスクールに集まっていた。完全招待制で、参加者には箝口令が敷かれていたため、報道機関にはアナウンスされていなかったのだ。

そのため陰謀論が流れたが、当事者達の言い分では、学術誌への掲載(正式な発表のこと)が台無しになることを恐れて事前に情報が漏れることを防いだのだという。

しかし、テーマがテーマなだけに、この秘密主義は批判された。

 

陰謀論は否定されたのか?

ヒトゲノムに関しては、1991年から2003年にかけて行われた「Human Genome Project(ヒトゲノム計画)」があり日本も参加していた。しかしし、今回発表されたプロジェクトは、これに「write」が加えられた「Human Genome Project-Write」となっている事からも、研究が新たな段階に入ったことがわかる。

だからなおさら秘密主義が注目されたのだが、主催者の一人であるハーバード大学医学部のGeorge Church教授は、今回のカンファレンスは人工ヒトゲノムではなくDNA作成の手法の改善に関するものだったとして、陰謀を否定している。

例えばこのプロジェクトで想定されている目的の一つは、医療における薬剤を作り出すために必要な、安全なヒト細胞を作ることだ。具体的には特定のウィルスに抵抗する成分を分泌する細胞を作ることなどだ。

ところが陰謀論者たちは納得していないようだ。

なぜなら、このプロジェクトの名称が元々は「HGP2」と呼ばれており、それは「Human Genome Synthesis Project」つまり「ヒトゲノム合成」を意味していたからだ。それが発表されるまでに「Human Genome Project-Write」に変えられていたというのだ。

さらに、前述で陰謀を否定したGeorge Church教授はトランスヒューマニスト(Transhumanist)、つまり超人間主義者として知られている人物だった。トランスヒューマニズム(Transhumanism)とはテクノロジーで機能が拡張された人間を作ることである。

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Photo credit: kyz via VisualHunt / CC BY

 

ヒトゲノムの研究のデリケートさ

したがって、今回のプロジェクトは、主催者側の発表ではワクチン開発の効率化や移植用の臓器の培養といった医学的な応用を目指したものだとされているが、その秘密主義や主催者の背景から、どうしても恐ろしげな噂が生じてしまっている。

その結果、このプロジェクトによって、将来生物上の親を持たない子供の誕生や、カスタムデザインされた人間が作り出されるのではないかといった懸念を持つ人たちも多い。

ヒトゲノムを扱うような研究には、常に道義的、宗教的な問題が生じるのだから、もっとオープンにことを進める方がよいはずだ。

 

【参考】
※ Scientists Talk Privately About Creating a Synthetic Human Genome – The New York Times

※ Scientists reveal proposal to build human genome from scratch | Science | AAAS

※ Scientists trying to create human genome in the lab | NH Voice