農作物輸出世界第2位!ITファーム国、オランダの新たな「スマートアグリ(農業)」とは?

2000年頃から、農業を「産業」と見なし、日本で言うところの農林水産省を経済省と統合させ、農業技術改良に惜しみない資金調達を行うようになったオランダ。簡単にいえば、自国で生産した農作物を積極的に国をあげて海外にも輸出していくということだろう。その背後にあるのは、農業のIT化である。

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PCやアプリでコントロールする農業

オランダは、一般農家の約80%が、農作物の成長に必要な給水や肥料供給などの管理を、自動制御システム搭載のコンピューターで行っているといわれるITファーム国。

たとえば、種や苗に定期的に配水されるよう、また、成長を促すため酸素の濃度を外気の2倍ほどに調節し、光合成が最も活発化するレベルまで引き上げたりすることなども、すべてコンピューターの管理下で行われている。最近では、このスマートアグリをよりスムーズにするために導入された、スマホのアプリケーションを使う農業従事者が増えてきている。これは、PCの前にじっくり座って操作するよりも、たとえば屋外で実際に仕事をしながら、気軽にアプリで作業の細部にまでチェックが行えるとあって、農業従事者たちから人気急上昇中である。

現在、農業従事者たちから人気がある「アグリ(農業)アプリケーション」は、5 つのカテゴリに分かれている。その内訳は、農作業(種まきから収獲まで)をスムーズに行うための情報が得られるもの、トラクターなどのマシンの操縦・修理情報を提供するもの、天候や温度情報を提供するもの、牛やニワトリなど動物飼育に関するもの、そして、最後は農作業の合間にちょっとした余暇を楽しむゲームを満載したものである。

アプリケーション制作会社・AppsforAgriのコーネリス・ ブラーバー氏は2年前、20人のプログラマーを雇い、この農業アプリケーションの開発に着手した。彼らがリリースしたアプリの中で、もっとも使い出があると農業従事者たちから人気なのが、Bayer Crop Science社からのデータを元に開発された天気予報(特に降雨情報)だという。こちらは、GPSを使用し、現在位置を確かめながら雨が降りだす時間や、降雨量予想などを事前に知らせるものだ。また、1年前から数か月前の降雨データと比較することも可能なので、作物の出来具合を予想するのに便利と好評だという。

IT化に踏み切ったいきさつ

オランダはヨーロッパの小国である。日本の九州とほぼ同じ面積しかないこの国は、不毛とされる岩塩混じりの土壌しかない上、北海からの強風が常に本土へ吹き寄せ、曇天がほぼ1年中続き、農業に適しているとは言い難い国である。ところが、農産物の輸出額は、なんと米国に次ぐ世界第2位(約773億ドル:CBS・オランダ中央統計省:2014年度調べ)なのだ。これはなぜなのか?

輸出額が特に多いのが、トマトやピーマン、ハーブなどの野菜類や生花の植物だ。一般の経済状況が上向いているとは言えないが、こうした農作物の輸出額に限っては、順調に伸び続けているのである。特に生花の出荷率は、昨年の同時期と比較すると、約3%も増加しているのだ(CBS・オランダ中央統計省調べ:2015年度調べ)。

農産物輸出額世界第2位の地位をこの国にもたらしたのは、すでに世界に周知の『スマートアグリ』の導入によるところが大きいとされる。これは前述したように、農業従事者たちがコンピューターを使い、ビニールハウス内の温度、湿度、二酸化炭素の濃度、そして地中の温度などをITによって管理する方法だ。

 

実はこの『スマートアグリ』が、農業の主流になったのには理由がある。1980年代、スペインやギリシアなど、南欧の温暖な気候風土を生かし大量生産された安価な農産物が、オランダへ大量に輸入されるようになり、国産物の売れ行きががた落ちしたことがある。従来のオーソドックスなオランダの農業法では、量産の面からして、とうていかなわなかったのだ。

そこで、農業従事者たちが考えついたのが、国産農産物を効率よく大量生産させることだった。それには、不毛に近い土壌、悪天候、等等のマイナス要素を削除し、プラスに変えるべく方法を編み出さねばならない。そこで農業従事者たちは協同組合を結成し、経験を基にお互いのアイデアを交換しつつ、試行錯誤を繰り返しながら、結果としてIT技術を用いた農作物の徹底的管理法の導入に踏み切ったのだった。

生花市場もすべてIT化

現在のオランダの『スマートアグリ』は、農業従事者たちがオランダ東南部・ワーヘニンゲン大学の研究者たちの助けを借りながら、自ら開発し導入したものである。導入に伴う資金調達も、大手金融機関からの工面によるものだ。つまり、『スマートアグリ』導入は、国の提案によるものではなく、農業従事者たちの経験と研究が実を結び、実現に至ったものといえよう。その結果として、収獲量が増大し、輸出量は名実ともに世界第2位となったことが農林省に正式に認められ、2013年度からは、農業従事者への資金支援が政府によって約束されることになった。

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オランダといえば、チューリップを思い浮かべる方も多いだろう。国花でもあるチューリップに代表されるような、生花の輸出量を世界1の座にのし上げたのも、やはり『スマートアグリ』によるものだ。園芸はもともと、オランダの主要産業のひとつだった。特に生花、球根、植木の輸出量は、過去10年の間に軒並み上昇傾向を辿っているが、政府はそれを見越し、園芸を専門とする農家の協同組合に対し、援助資金調達をすでに1990年に開始しているという。これにより、生花の生育や流通システムのIT化が一挙に進むことになったわけだ。実はオランダでは1970年代に、コンピューター制御が利く温室内で、当時は珍重されたランの育成と環境管理を試験的に行っていた。温室内の温度を一定に保ち、栄養分を含ませた水を与え、日照時間をも管理する総合自動装置を設置したシステムが既にその頃、開発されていたということになる。2014年現在、オランダの生花産業に関しては、花の育成のみならず、競りや販売、流通などほぼすべてがIT化されており、遠隔競売システムの導入で、ボタンひとつで世界中のどこからでも競りに参加できるほどにまでなった。

『スマートアグリ』による生産高上昇により、他国の生産物と価格競争も可能になり、輸出を増やすことで、輸入国世界第2位の地位を獲得したオランダ。揺るがないその地位を持続させるため、今後、どのようなスマートアグリ法が開発されるのだろうか。ちなみに、種まきや肥料供給のためのドローンを操作するために、新デバイスが投入されたアプリケーションが近い将来、実用化されるということだ。

<関連サイト>

http://www.csabooster.eu/