足元ばかり見ていないで、星を見上げることを忘れないで。~スティーヴン・ホーキング【科学者の智慧 vol.03】

車椅子の天才物理学者

スティーヴン・ホーキング(Stephen Hawking)……1942年~。イギリスの理論物理学者。1963年にブラックホールの特異点定理で世界的名声を得て、量子宇宙論という研究分野の開拓者となった。

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一般人向けに理論物理の世界をわかりやすく解説した『ホーキング、宇宙を語る(原題:A Brief History of Time)』は和訳もされ世界的ベストセラーになった。

さて、ホーキング博士といえば、若くしてALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した「車椅子の物理学者」としても知られている。ALSとは主に脊髄と脳の運動神経が変性し、筋肉が徐々に萎縮していく進行性の病気だ。手足や口、舌などがコントロールしにくくなり、力が次第に衰える。有効な治療法は現時点ではほとんどない

特筆するべきは、ALSの発症後5年生存率は9~40%、10年生存率は8~16%と報告されている(ALS疾患啓発委員会資料)のに対し、ホーキング博士は発症から50年以上経過しても健在という点だ。2016年1月8日、彼は74歳の誕生日を迎えた。これは現代の理論物理学にとって大きな恩恵に違いない。

ただし、この病気は、自分では動けないが周囲の状況が分かってしまうために精神的なストレスが大きいという。そのためかどうかはわからないが、テレビ番組のインタビューで「ひどい苦痛を感じるようになったり、単に周りのお荷物になっていると感じたりしたら、幇助による自殺を考えるだろう」と語っている。

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Photo credit: @Doug88888 via VisualHunt.com / CC BY-NC-SA

ホーキング博士はシニカルな無神論者か?

ホーキング博士は著書(レナード・ムロディナウとの共著)『ホーキング、宇宙と人間を語る(The Grand Design)』のなかで「創造主なしでも宇宙は誕生できる」と記述している。
これは「宇宙は神が想像した」とする宗教界の主張とは相容れないもので、ロイターはこの記述に対して「宗教界から批判を浴びている」と報道している。

では、彼は「死後の世界」についてはどのように考えているのだろうか?
ちょっと興味深い発言がある。同じくロイターによれば、ホーキング博士は自身の「死後の世界」観についてこう述べた。

I regard the brain as a computer which will stop working when its components fail.
There is no heaven or afterlife for broken down computers; that is a fairy story for people who are afraid of the dark.

「私は、脳とはコンピューターみたいなものだと思っている。脳の活動停止(つまり死)はコンピューターが壊れるようなもの。壊れたコンピューターに天国も来世もありはしない。つまり、それらは闇を恐れる人々のためのおとぎ話だよ。(訳:FUTURUS編集部)」

この言葉だけを聞けば、多くの人は「この人は天才かもしれないが、なんてシニカルな厭世観の持ち主だろう」と感じるかもしれない。
だが、僕は決してそうではないと思う。その理由を述べよう。

 

子どもたちへの最も重要な3つのアドバイス

ホーキング博士は、ABCニュースのインタビューで「父親として、お子さん方(ホーキング博士には3人の子どもと3人の孫がいる)にどんなアドバイスをしていますか?」と質問され、次のように答えている。

One, remember to look up at the stars and not down at your feet. Two, never give up work. Work gives you meaning and purpose and life is empty without it,” he said.
“Three, if you are lucky enough to find love, remember it is there and don’t throw it away.

「ひとつ。足元ばかり見ていないで、星を見上げることを忘れないで。
ふたつ。自分がやるべき仕事を絶対にあきらめてはいけない。生きる意味も目標も失われ、人生が空っぽになる。
みっつ。もし愛に恵まれたら、それは特別な幸運なのだと考え、決して手放してはならない」
(訳:FUTURUS編集部)

これは到底シニカルな厭世観の持ち主に言える言葉ではないだろう。

50年間困難な病気と闘い続け、神にも宗教にもすがらず、ただ理論のみで宇宙の真実を追求する。どれだけ強靭な意思と情熱が必要だったのだろう。

スティーヴン・ホーキング。彼は天才科学者であるという以上に、コロンブスにも匹敵する(知の)大航海者として歴史に名を刻まれるべきではないだろうか。

引用:Professor Stephen Hawking | NASA

【参考】

※ スティーヴン・ホーキング – Wikipedia

※ ALSという病気の概略 – 日本ALS協会

※ 治療指針は医師の治療行動に影響する – ALS疾患啓発委員会

※ iso.labo 名言・格言『スティーヴン・ホーキングさんの気になる言葉・英語』 – iso.labo 

※ Stephen Hawking on Religion: ‘Science Will Win’ – ABC News

※ ホーキング博士の安楽死支持に海外ユーザーの反応は – ハフィントンポスト

※ ホーキング博士「これ以上何も貢献できないと思ったら幇助自殺も考える」- ハフィントンポスト