俺の次に計算の速いヤツが出来たな。 ~ジョン・フォン・ノイマン【科学者の智慧 vol.04】

「悪魔の頭脳」と呼ばれた超天才

ジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann)……1903-1957。ハンガリー出身のアメリカの数学者。「ノイマン型」と呼ばれる現代コンピューターの父。

noiman

Thomas Gotchy:John von Neumann, IAS computer

このほか、数学ではゲーム理論の成立に貢献し、物理学では量子力学を形式的に完成させるなど万能型の天才。またマンハッタン計画などアメリカの核政策にも深く関わっている。

ノイマンは弁護士の父親のもと幼い時から英才教育を受け、8歳で微分積分を理解するなど、早くから天才ぶりを発揮していた。
ブダペスト大学とベルリン大学とチューリッヒ工科大学を掛け持ちして23歳で数学・物理・化学の博士号を取得。ナチスを避けてアメリカに移住し、世界最高の研究機関といわれるブリンストン高等研究所の所員になった。ちなみに同僚・上司にはアインシュタインやオッペンハイマー(マンハッタン計画を主導した原爆の父)などがいる。ノイマンは1933年以降、この研究所の数学教授を務めた。

計算機を凌ぐ超暗算能力

ノイマンの頭脳の凄さを物語るエピソードがある。
ノイマンがマンハッタン計画に携わっていたとき、物理学者のエンリコ・フェルミとリチャード・P・ファインマン(両方ノーベル賞受賞者)と3人で水爆の効率概算を競った。ファインマンは手回し式計算機を使い、フェルミは計算尺を使い、ノイマンは暗算で挑んだが、その結果、ノイマンの答えが最も早く正確だった。

ノイマンは電話帳を開き、任意のページを一瞬で暗記し、その総和を即座に答えられるくらいの超暗算能力の持ち主だったから、いくらノーベル賞学者でも手回し式計算機や計算尺ぐらいでは到底太刀打ちできなかっただろう。

ノイマン型コンピューターはノイマンの発明ではない?

「ノイマン型コンピューター」とは、プログラムとデータをいったん記憶装置に記憶し、それを演算装置が逐次読みだして実行するという形式のコンピューターのことだ。現在のコンピューターの主流でもある。しかし、実はノイマン型コンピューターはノイマンの発明ではない。

第二次大戦中、アメリカ陸軍は弾道計算用にコンピューターを開発していた。軍から資金援助を受けた物理学者のジョン・モークリーとジョン・エッカートがENIACというコンピューターを完成させ、これがいわゆる「ノイマン型」の原型だとされている。

ENIACの後継機としてEDVACというコンピューターを開発することになった際、ノイマンはコンサルタントとして、モークリーとエッカートとEDVACの論理設計について話し合った。
「ノイマン型」はモークリーとエッカートのアイデアで、ノイマンはそれに数学的裏付けを与えたに過ぎないのだが、ノイマンはその結果を” First Draft of a Report on the EDVAC” というリポートにまとめ、なんと自分の単独名義で発表してしまった。このため「ノイマン型」という名称が現代に至るまで世界的に定着している。

EDVACが完成したとき、ノイマンは「これで俺の次に計算の速いヤツが出来たな」とつぶやいたという。
真偽はさだかではないが、EDVACと計算勝負をしてノイマンが勝ったという伝説も残されている。

天才か、それとも悪魔か?

あまりにも人間離れしたノイマンの頭脳は、しばしば「火星人」「悪魔」などと評された。

JohnvonNeumann-LosAlamos

http://www.lanl.gov/history/atomicbomb/images/NeumannL.GIF (Archive copy at the Wayback Machine (archived on 11 March 2010))

アインシュタインなど、同時代の天才たちが「自分たちの中で誰がもっとも頭がいいか?」を話し合った結果、「やはりノイマンだろう」と意見が一致したほどだ。

しかし、ノイマン自身は「自分よりアインシュタインのほうが上だ」と言っていた。
確かにノイマンの暗記力や思考力は超人的だったが、アインシュタインのような「直感的なひらめき」や「画期的な発想力」には恵まれていなかったからだ。ノイマンにはそれがコンプレックスですらあったようだ。

ノーマン・マクレイが書いた『フォン・ノイマンの生涯』という伝記によれば、ノイマンのコンピュータにも勝る計算能力には次のような秘密があった。
彼はあらかじめ頭のなかにさまざまな定理や公式、計算式を記憶しておき、新たに頭に入れた数字を次々にそれに当てはめることで瞬時に処理することが可能だったというのだ。
導き出した答えをまた暗記し、それをもとに次の計算を繰り返すことで、どんな難しい計算でも暗算できた。
つまり、ノイマン型コンピューターはノイマンの発明ではないが、ノイマン自身がノイマン型コンピューターと同じような方法で計算していたらしい。

なるほど、それならEDVACがノイマンに勝てないのは当然だ。なぜなら、ノイマン本人こそが究極の「生きたノイマン型コンピューター」だったのだから。

 

<参考>
http://cruel.org/econthought/profiles/neumann.html
http://www.yamamo10.jp/yamamoto/lecture/2007/5E_info/1st/html/node6.html
http://www.wizforest.com/OldGood/edvac/
http://renote.jp/articles/2250
http://www.math.sci.osaka-u.ac.jp/~akitaka/jyugyo/jyoho/rep2.txt
http://benedict.co.jp/smalltalk/talk-66/
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%83%B3
http://www.a-inquiry.com/ijin/169.html

<参考書籍>
『フォン・ノイマンの生涯』 ノーマン・マクレイ著(朝日新聞社)