無限なものはふたつあります。宇宙と人間の愚かさ。~アインシュタイン【科学者の智慧 vol.05】

E=mc2 のすさまじさとは?

アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein)……1879~1955。「天才」の代名詞でもあるドイツ生まれのユダヤ人理論物理学者。「相対性理論」はあまりに有名だ。

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Photo: Albert Einstein By Peter Wagner

 

アインシュタインといえば、特殊相対性理論の証明式

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が広く知られている。質量をエネルギーに変換したとき発生するエネルギー量は質量×光速の自乗に比例するという法則だ。

この原理を応用したのが原子爆弾だ。アインシュタインは原爆の直接の生みの親ではないにせよ、直系の祖先のひとりには数えられるだろう。

 

さて、質量はどれくらいの変換率でエネルギーに変わるのだろうか?

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Photo via Visual Hunt

 

わかりやすい例を挙げよう。

広島に投下された原爆に搭載されていたウラン235の質量は、爆発によって約0.7g減少しただろうと推測されている。

この1円玉1枚分にも満たないわずかな質量は、1000万度というとてつもない熱エネルギーに変換され、ひとつの都市を壊滅させるほどの衝撃波と爆発を生んだ。

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Photo credit: twicepix via Visual Hunt / CC BY-SA

 

その被害について興味がある方は、次の資料をご覧いただきたい。

HIROSHIMA PEACE SITE

 

天才は大統領に2通の手紙を送った

広島・長崎に投下された原爆はアメリカのマンハッタン計画によって開発・製造された。

マンハッタン計画の経緯はこうだ。

1939年、第二次世界大戦直前。ニールス・ボーアという物理学者が原子核分裂予想を発表した。これによって世界中の物理学者が「原爆は製造可能である」ことに気付いてしまった。いくつかの国が核開発に乗り出したが、そのなかにはナチス・ドイツも含まれていた。

アメリカに亡命したユダヤ人物理学者レオ・シラードは、ナチスが世界に先駆けて核兵器を保有することを恐れ、当時のアメリカ大統領・ルーズベルトに核開発を推進するよう提言する手紙を送った。

シラードは手紙の権威付けのため、同じ亡命ユダヤ人として親交があったアインシュタインに署名を依頼した。だからこの手紙は「アインシュタイン=シラードの手紙(Einstein-Szilard letter)」と呼ばれている。

ルーズベルトはこの手紙を読み、アメリカはマンハッタン計画をスタートした。途方もない予算が注ぎ込まれ、アメリカはナチスよりも早く原爆を完成させることに成功する。(ちなみにアインシュタインはマンハッタン計画には一切関わっていない)。

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物理学者のレオ・シラード/DOE Digital Archive Image 2017774. “Credit: DOE Photo”

 

ナチスが降伏した後、原爆を日本に投下する計画があることを知ると、シラードは「日本に原爆を落とすな」というメッセージを伝えるため、アインシュタインに大統領宛ての紹介状を書くよう依頼した。アインシュタインはこれを承諾したが、メッセージが大統領に届くことはなかった。1945年4月12日、ルーズベルト大統領が脳卒中で急死したからだ。

それから4カ月後、原爆は広島と長崎に投下された。

天才は署名を悔やんだ

ナチスに迫害されてアメリカに亡命したユダヤ人科学者たちは「絶対にナチスより先に原爆を作らなくてはならない」と考えていた。しかしそれは「ナチスより先に原爆を所有することで、ナチスが原爆を使用するのを抑制できるだろう」と考えたためで、核兵器を使うためではなく、核抑止力のために開発を急いだのだった。

平和主義者として知られるアインシュタインがEinstein-Szilard letterに署名したのも、おそらくは核抑止力を信じてのことだったと思われる。

しかし、原爆は実際に使用されてしまった。

そして第二次大戦後、米ソは冷戦下で水爆実験競争をエスカレートさせていく。

 

アインシュタインの少しシニカルな名言がある。

Only two things are infinite, the universe and human stupidity and I’m not sure about the former. 

無限なものがふたつあります。それは宇宙と人間の愚かさ。ただし前者については断言できませんが。

 

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Albert Einstein during a lecture in Vienna in 1921 (age 42).

たとえ宇宙に果てがあろうとも、人間の愚かさには際限がない。アインシュタインの深いため息が聞こえてきそうな感慨深い言葉だ。

そんな頃、イギリスの哲学者バートランド・ラッセルが、核兵器廃絶と科学の平和利用を訴える声明を起草する。いわゆるラッセル=アインシュタイン宣言(The Russell-Einstein Manifesto)だ。アインシュタインはラッセルの呼びかけに応じ、宣言に署名した。

ラッセル=アインシュタイン宣言を要約すると次のようになる。

「人類は悲劇的な状況に直面している。水爆による戦争は人類に終末をもたらす可能性がある。

私たち科学者は世界各国政府に対し、核兵器を廃絶し紛争解決のための平和的手段を見いだすよう勧告する」

署名の1週間後、アインシュタインは76歳の生涯を終えた。

そして、ラッセル=アインシュタイン宣言はアインシュタインの全人類に向けた遺言状となった。

 

 

【参考】

※ アインシュタイン平和書簡3 オットー・ネーサン著 みすず書房

※ 無限なものは二つある。宇宙と人間の愚かさ。(アインシュタイン) – あなたの『死生観』がググッと深まる・グーグーぱんだの語る「生と死」のお話

※ わかっても相対論 質量はエネルギーである

※ 原爆先生の特別授業 ヒロシマ型原爆(ウラン原爆)