水から水素を作れる、現実的な人工光合成の装置が実現か!?

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source:http://www.fz-juelich.de/SharedDocs/Pressemitteilungen/UK/EN/2016/2016-09-09from-leaf-to-tree.html

 

近年大きな問題になっている地球温暖化は、化石燃料を大量に消費することで発生する二酸化炭素が主要な原因とされている。もし化石燃料を使わずに、太陽光のエネルギーを使って、燃料である水素を水から作り出すことができれば、二酸化炭素は排出しない。これが人工光合成だ。

人工光合成は、基礎研究ではさまざまな研究機関が成功しているが、まだまだ産業レベルには達していない。しかし、さまざまな応用ができるという人工光合成装置を、ドイツのユーリッヒ研究所が発表した。

 

現実的な装置を設計

これは、ユーリッヒ研究所の研究者が、初の完結したコンパクトなデザインの人工光合成装置を開発したというもの。材料の面でもサイズの面でも柔軟性があり、この技術を前進させるための大きな一歩になるという。

この技術はエネルギー貯蔵にかかわってくるものだ。自然エネルギーを活用しようと思うと、どうしても供給の不安定さが問題になる。その場合に、たとえば自然エネルギーを使って水素を作り出し、それを貯蔵しておけば、天候によって太陽光エネルギーが得られないときに、水素を使うことでエネルギー供給を安定させることができる。

なかでも、ソーラーセルと電気分解装置を組み合わせた人工光合成によって、水を分解して水素を取り出す技術は、もともとは1970年代に最初に発明されたというが、近年特に力を入れて研究されている。より効率のいい吸収物質や触媒が研究されているのだ。

ただし、ユーリッヒ研究所のJan-Philipp Becker氏とBugra Turan氏は、あまり目を向けられていなかった一面に注目したという。それは、この技術を実験室の外に出して、現実的に利用することを考えた設計だ。

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「これまで、光電気化学による水分解は研究室の規模でしか行われてきませんでした。個々の構成部品や素材は進化していますが、それを現実的に利用できるものにしようと試したひとがいなかったのです」とBurga Turan氏はいう。

ふたりのエキスパートによって設計された装置は、爪くらいのサイズの構成部品が配線でつながっただけのような、研究室によくある実験装置とは異なる。コンパクトで、必要なものがすべてそろったシステムだ。それでいて、低コストで作ることができ、容易に手に入る素材が使われている。

 

効率はまだ上げられる

装置の表面積は64平方センチ。小さすぎるようにも思えるかもしれないが、基本ユニットをつなげることで、数平方メートルのサイズの装置も簡単に作ることができる。また、基本ユニット自体は、いくつかのソーラーセルを、特別なレーザー技術によって接続している。これは、水素の製造に必要な1.8Vの電圧を得るために必要なのだという。

「この技術が、研究室用の実験装置をスケールアップして、より効率を上げることを可能にするのです」とJan-Philipp Becker氏はいう。

現時点で、この太陽光を使って水素を製造する際のエネルギー効率は3.9%だという。まだまだ効率がいいとはいえないが、これはまだ最初の装置であり、改善の余地は大きいと研究者はいう。それに、じつのところ自然界の光合成の効率は1%にすぎないのだそうだ。

Jan-Philipp Becker氏は、比較的近い将来、既存のソーラーセルの素材を使いつつ、効率は10%まで引き上げることができそうだという。また、ほかにもちがうアプローチがある。たとえば、ペロブスカイトのソーラーセルを使えば、14%の効率が可能になる。

「ふたつの主要な構成部分を、それぞれ別々に最大限に活用できることも、このデザインの大きな強みです。電気を作り出す太陽光発電の部分と、その電気を水の電気分解に利用する電気化学の部分とです」とJan-Philipp Becker氏はいう。

彼らはこのコンセプトに関して、あらゆる薄いフィルムタイプの太陽光発電技術と、さまざまなタイプの電気分解装置に柔軟に適用できる特許を取得した。Becker氏は「われわれは初めて、市場に出すための作業をしているのです」という。

 

基礎研究も大事だが、それを実用化するためにアレンジをすることも非常に重要な作業だ。既存の技術を組み合わせて、産業に使えるような拡張性を備えたものにすることができれば、たとえ効率は低くても現実社会のなかで使われるようになっていくかもしれない。

前述のとおり、持続可能な世界の実現のためには、エネルギー貯蔵が重要になる。そのエネルギー貯蔵の方法として、水素はひとつの選択肢だ。こういった人工光合成の技術が進めば、水素は次世代のエネルギーの主役となっていくかもしれない。

 

【参考・画像】

※ From Leaf to Tree: Large-Scale Artificial Photosynthesis – Forschungszentrum Jülich

 

【動画】

※ From Leaf to Tree: Large-Scale Artificial Photosynthesis – YouTube