牛糞から生まれる新素材とエネルギー。これが本物の食物連鎖!?(前編)

「MUSEO DELLA MERDA(糞のミュージアム)」。いったい何が展示してあるのか、行って見たいような、ちょっと敬遠してしまうような…。

北イタリア・カステルボスコには動物の糞からエネルギーや新しい素材を作っている人たちがいる。そんな独自の素材による作品を展示しているのがこのミュージアムだ。もちろん作品の素材となるのは、動物の糞からできたオリジナルの素材「Merdacotta®」。

 

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北イタリア、カステルボスコにある「MUSEO DELLA MERDA(糞のミュージアム)」

 

自然界においての、動物たちが植物を食べ(そしてその草食動物を肉食動物が食べ)、その動物たちの糞や死骸がまた肥料となる……という「食物連鎖」の仕組みは、我々も小学生の頃に学んだ。また糞を肥料として使うことは昔から行われていたことで、最近はまた環境保全のための「循環農業」が注目されている。

が、さらにそれを一歩進め、動物の糞の新しい可能性を形にしているのが、このプロジェクトだ。その創始者のジャンアントニオ・ロカテッリ氏にお話を伺った(全2回)。

 

Merdacotta®(糞を焼く)という名の新素材

——「Museo della Merda」について、ご説明いただけますか?

「Museo della Merda」は2015年にカステルボスコで生まれたミュージアムで、ここには「Merdacotta®(Merdaは糞、cottaは煮た、焼いたなどの意味)」という素材を用いて創られた家具やポット、花瓶、タイル、プレート、ボウル、ピッチャー、カップなどの品々が展示されています。

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牛糞からできた素材から作られた食器たち

 

使われているのは動物の糞からできている独自の素材です。これは誕生してまだ1年なのですが、これこそがこのミュージアムの目的であるソステニビリティや科学的な変換のための大きな役割をしています。

というのも、「Museo della Merda」ミュージアムというだけではなく、生産目的の素材開発プロジェクトとして始まったものだからです。何かを作り出してこそ糞を変換利用する意味があるというのが、「Museo della Merda」の考え方です。

 

15万キロの牛の糞をエコロジカルに利用できないか25年考えてきた

 

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この素材の原料はチーズ用の乳牛たちから排出される大量の糞

 

——では新素材「Merdacotta®」やエネルギーを作るために動物の糞を使おうと思ったのは一体どうしてなのですか?

カステルボスコは「グラナ パダノ」というチーズの生産地で、そのためにここでは毎日3500頭の牛から5万キロの牛乳をとっていますが、同時に15万キロの糞が排出されています。それをエコロジカル、かつ生産的で文化的なプロジェクトにできないかと考えたわけです。このアイデアは20年越しで考え続けてきたものなのですよ。

そこで、ロカテッリ社ではまずは糞から電力を生み出す研究を始めました。今では農場で排出される糞で1時間3メガワットの電力を生み出すことができ、それで会社の冷暖房を賄っています。さらに糞で肥料も作っています。

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牛糞から有機ガスを作る工場

 

糞からエネルギーが誕生する仕組み

——具体的には動物の糞をどんな風にして電力や素材に変えることができるのかを簡単にご説明いただけますか?

基本的には堆肥の中に含まれている有機成分(炭素)が、酸素を除くことによってメタンガスに変化するのです。つまり化石ができる過程と同じような変換がなされているわけです。

——それでできた物質のほうはMerdacotta®という素材になったわけですね。この物質の長所と欠点はどんなところなのですか?

う~ん、正直なところ欠点というのは浮かびませんね。たとえばテラコッタなどよりずっとたくさん長所を持った素材なのですよ。

原料はたくさんあるので、粘土を使わねばならないテラコッタに比べ、その採掘のエネルギーの節約にもなります。また防音・断熱効果もあり、テラコッタに比べとても軽いため、その表面の感じもとても洗練されていて見た目もよいのです。

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ミュージアムの内観。モデルになっているのは同館クリエイティブ・ディレクターの ルカ・チペレッティ氏

 

——動物の糞からそんな素晴らしい素材ができるとは驚きです。実際にはこの素材から製品はどんなところで使われているのですか?

この素材でできる製品は普段使いの製品なので、物にもよりますが、普通に日常生活において毎日使われていますよ。すっきりしたシンプルで田舎風のデザインで、それぞれの品が使い捨ての型で作られた一点ものなんです。

——デザイン部門で賞を取ったりもしているのですよね?

はい。そのおかげで周りからとてもポジティブな反響や賛嘆の声を受けました。特にサローネ・デル・モービレ2016において、「ミラノ・デザイン・アワード」に輝いたのですが、それによってこのプロジェクトをさらに進めていくための確信が持てました。

何でも新しいことをやるにはポジティブな反響が必要だと思うのですが、我々にとってもこのプロジェクトを続けていく上での勇気を与えてくれました。

——いまや世界的に反響を生んでいるようですが、海外の会社とのコラボレーションや、この素材やエネルギーを輸出する計画はありますか?

エネルギーに関しては、残念ながら官僚的な問題があって、輸出はできないのです。

でもMerdacotta®を使った製品の輸出は可能なので、いま、国際的なディストリビューションのネットワークを探しているところです。

たとえば、9月にロンドンで行われたデザインフェスティバルでも大きな反響を得ました。今後もこの素材を使った製品をより広めていきたいですね。

 

【取材協力】

GIANANTONIO LOCATELLI

1956年生まれ。イタリア・カステルボスコ出身。農業、畜産業者。チーズ(「グラナ パダーノ」、「ブロヴォローネ」)生産者。自然保護、エコロジー経済などに傾倒し、2000年前半ごろから堆肥の再利用開発のプロジェクトを進める。2015年にオープンした「Museo della Merda」創始者。

 

※ チーズ→牛→糞→エネルギー&新素材というエコサイクル(後編)