寒天で環境問題に一石を投じ、ミラノで注目を浴びる日本人のデザインユニット「AMAM」

http://nge.jp/2016/11/17/post-136161ゴミとして捨てられても土壌の保水力を向上させる効果があり、海に流れた場合も海洋生物に害を及ぼさない素材。プラスチックの先を行く素材として期待の高い、寒天を材料にした独自の素材から作った作品で、世界から熱い注目を浴びているデザインユニット「AMAM」。

世界最高峰のデザインウィーク「ミラノ・サローネ」中の「レクサス デザイン アワード2016」のグランプリに輝いたユニットのメンバーの一人である、荒木宏介氏からお話を伺うインタビューの後編では、ユニットでの活動からデザインにまつわる話に至るまで、科学だけでないクリエーションの話にも触れる。http://nge.jp/2016/11/17/post-136163

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——3人の頭文字(アルファベット表記での)を取ってできた「AMAM」というユニットですが、皆さんはどのようにして知り合われたのですか?

僕たちは多摩美術大学のプロダクト専攻の2010年卒の同期生なのです。「レクサス デザイン アワード」に応募するにあたって昨年の9月に集まりました。

大学の同期ということもありますが、前谷と村岡は予備校時代からの友達で、また前谷と僕は多摩美卒業後も同じ時期に二年間ロンドンにあるロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)という大学院に留学していたこともあって、グループとして集まる以前から親しい間柄でした。

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寒天を使ったシンプルで温かい素材はデザイン的にも美しい

 

——もともと仲の良い仲間だったのですね。ではデザインや製作は、3人でどのように進めるのですか? 3人の役割分担などはあるのでしょうか?

アワード用の作品制作中は、僕がフリーな分、作業の配分は大きかったですが、役割分担は特にありません。

コンペの第一選考に提出し、プロトタイプ制作者(ノミネート選抜者)として選ばれて以降、ミラノでの展示までの期間は毎週末土日のどちらかにミーティングをし、次のミーティングまでにそれぞれまた実験をして、というふうに進めてきました。

——それでは荒木さんが今の仕事に関わるきっかけは何だったのでしょう?

特にきっかけなどはなく流れでそうなっているというのが正直なところです。

しいて言うなら、何かを想像して絵を描いたり物を作ったりすることが昔から好きだったことでしょうか。

美大を受験したのも何か物を創る仕事ができたら楽しそうだなというくらいの気持ちでした。

大学ではプロダクトデザイン専攻でしたが、入った当時はデザインのデの字もまったくわからない状態でした。が、周りのみんなは例えば車や家具のデザインがしたいとか好きなデザイナーは誰々とかすでに“デザイン”というものを学びに来ている人ばかりで、入学してすぐに「あ~、これは来るとこ間違えたな」と思いました (笑)。

最初の課題も「好きな物をデザインしなさい」というもので、“デザイン”が何かも分からなければ、好きなものも特に思い浮かばず最初から大変な思いをしたことを覚えています (苦笑)。

デザインってこういうことなのかな?こういう考え方でいくといいのかな?ということを感じることができ始めた3年生くらいのころから少しずつ面白みを感じるようになって、結果として今に至っています。

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ダンボールなどで荷物を梱包する際に緩衝材として通常発泡スチロールなどで物品の周りに入れるものを寒天原料の素材で

 

 

——子どものころからモノづくりがお好きだったとのこと。今の仕事にまつわる少年時代のエピソードなどはありますか?

サッカーをやったり、工作教室に通ったり、一人で遊ぶ時は絵を描いたり何かをセロテープとか折り紙で作ったりしていました。

幼稚園の頃からロックマンというゲームが大好きで……今でも好きなのですが(笑)、ゲーム自体も良くやっていましたが、それに出てくるいろいろなボスキャラが好きでその絵をずっと模写したり、オリジナルのキャラクターを考えて描いたりしていました。

またスターウォーズのキャラクターも好きで、大学時代にスケッチの練習も兼ねて模写をしたり、自分で空想の生き物を描いたりしていました。

今もこれらのことは好きですし、絵を描いて、デザインをして、サッカーもしているので、小さい頃からやっていることは何も変わってないですね (笑)。

——何かを作るのが好きな反面、活発なお子さんでもあったのですね。

今とは違ってなかなか図太い性格だったと思います。今よりだいぶ人の目も気にせず自由奔放に好きに走り回っていましたね。

体を動かすのが好きだったというか、じっとしていられなかっただけかもしれませんが。

小学生の時には学校に生えている草や木の葉っぱを片っ端から食べてみたり……。あと幼稚園のときに、今思うとなぜだかわからないですが、ストローで蟻を吸ってみたら酸っぱかったということも思い出しました!

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天草の滓が含まれてもいるため、使用後は保水力のある肥料としても 活用できると考えた

 

——木の葉や蟻まで食べるとは、かなりの腕白少年だったのですね(笑)。でもそんな経験も、今、自然や未来を考えることに繋がっているのかもしれませんね。

蟻は食べてませんよ、吸った後ちゃんと出しました(笑)。

次世代には、きれいな未来を残したいですね……ちょっと抽象的ですが。

きれいな景色やきれいな空気やきれいなこころ。物事をきれい、美しいと思える感性を持つことがよりよい未来につながっていくと思うので、そういう感受性を素直に大切にしていくべきだと思います。

——では、荒木さんの未来については? 生きているあいだに仕事で実現したいことは何ですか? 寒天にかかわらないところで、今後のプロジェクトや野望などをお聞かせください。

質問の答えにはなっていないかもしれませんが、生きている間中、ずっと自分を驚かせられて、そしてもちろんみなさんにも驚きを感じてもらえるようなプロジェクトを作り続けられると幸せですね。

今後の野望に関しては、他人に笑われてもいいから、自分の直感に正直にものづくりを行っていければいいなと思います。

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【取材協力】

村岡 明 (写真左)●デザイナー。資生堂勤務。2010年多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業。

荒木 宏介 (写真中央)●デザイナー。東京を拠点にフリーランスとして活動。2010年多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業。2013年英国王立芸術学院(RCA)デザインプロダクツ学科修了。

前谷 典輝 (写真右)●プロダクトデザイナー。ロンドンのデザイン事務所(Lovegrove studio)を経て、2015年より三菱電機勤務。2010年多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業。2013年英国王立芸術学院(RCA)イノベーションデザインエンジニアリング学科修了。

 

【画像】

 

撮影:荒木宏介(ページ一番上のプロフィール写真を除く)

 

寒天プロダクトで、「レクサス デザイン アワード2016」グランプリ受賞した日本人ユニット「AMAM」