「発展途上国」では家電よりスマホが先に進化する

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インドネシアは「新興国」である。それは言い換えれば、「発展途上国」だ。

だが、現状として発展途上国ほど発展している分野がある。

インドネシアの経済発展は、2010年代に登場した製品とともにある。よくこの国を訪れた日本人ビジネスマンが「なぜ彼らはスマートフォンを持っているのに、冷蔵庫は持っていないんだ?」と首を捻る。だが、1960年代の日本と今のインドネシアを同一の線に置いてはいけない。

池田勇人内閣当時の日本人は、年々増える可処分所得を白物家電購入に充てるしかなかった。黒物家電はテレビとラジオ受信機を除き、どれも「マニアだけが持つもの」という位置づけである。

今は違う。黒物家電の種類が増えただけでなく、携帯電話という通信機器が大進化を遂げて誰もが所有するようになった。人々の可処分所得は、スマホを維持するための費用に消えている。

東南アジアの急速発展は、常にスマホと一緒にあると断言してもいいだろう。

 

急成長中の「Go-Jek」とは

『Go-Jek』というサービスをご存知だろうか?

東南アジアにはバイクタクシーというものがあるが、Go-Jekはスマホでバイクタクシーを任意の場所に呼び出せるというサービスである。要はUberと同じだ。

いや、今やGo-JekはUberを凌駕しているかもしれない。

バイクで運ぶのは、何も人間だけに限らない。Go-Jekはすでに軽輸送や買い物代行のサービスも始めている。また最近では、キャッシュレス決済も導入している。

ここで、他のメディアの記事を引用させていただこう。

インドネシアのオンデマンド配車アプリGo-Jekが、シンプルなeウォレットを導入したのは少し前のことだ。ユーザはアプリ上でクレジットを保管し、運賃の支払いやサービスなどの購入にあてることができる。クレジットポイントはeウォレットの残高から差し引かれるため、現金を扱う面倒を省くことができる。Go-Payクレジットは、運賃の支払い以外に、アプリ経由でサービスやアイテムを購入する際にも使用できる。(The Bridgeの記事より)

詳しくは『The Bridge』の記事を読んでいただきたい。新興国でのビジネスを志す者は必読すべきだろう。

インドネシアは、クレジットカードの所有率が周辺諸国より低いということも明記するべきだろう。デビットカードにおいては尚更で、中間層以下の市民は長らく現金決済の領域から一歩を踏み出すことができなかった。

だが、インドネシア市民はすでにキャッシュレス決済の固い扉を開いている。

 

進化するインドネシア、伸び悩む日本

Go-Jekの事情は、輸送のみに留まらない。

インドネシアで最近流行の清掃業者派遣なども行うようになった。この国の富裕層はメイドを雇うのが当然だったが、それに代わるものとして清掃業の需要が高まっている。Go-Jekはその流れを見逃さなかった。

何という柔軟性だろうか! これと同じことは、石橋を叩きすぎる日本人にはなかなかできない。

ところで、筆者は静岡県静岡市在住である。この静岡市という都市は、人口減少の問題に突き当たっている。先日、田辺信宏市長が記者会見で「2025年までの人口70万人維持は非常に難しい」と答えた。

田辺市長は、この会見で市長としての仕事をまったくしていない。人口減を打開する策はあるのかと聞かれると、オーバーなジェスチャーをしながら言葉を詰まらせた。要は決定的打開策がまったくないということだ。

人口流出を防ぐには、まず静岡市生まれの若年層に「地元で働くにはこんなメリットがある」ということを提示しなければならない。では、具体的にメリットとは何か。そのあたりの開発が静岡市の仕事のはずだ。先の記者会見で、そうしたことをほとんど考えていなかったというのが明らかになった。

その一方で、「発展途上国」であるはずのインドネシアはITベンチャー企業の育成に精力を注いでいる。しかもそれは、都市部だけの話ではない。ジョコ・ウィドド大統領は、スマホアプリにより農作物の流通効率化事業を後押ししている。

今やネット環境があれば、ITビジネスはどこでもできる。その上、インドネシアは地方間格差が非常に大きい国だ。各自治体は、何としても自前の産業を創出しなければならない。すると選択肢はふたつ、外資を呼び込むか地場系ベンチャー企業の登場を促すかである。

そういう背景があるからこそ、インドネシア政府は「2020年までに1,000のスタートアップを創出させる」という目標を掲げたのだ。Go-Jekもそのひとつであるということは、言うまでもない。

 

スタートアップの育成こそが

今ある問題に対し、明確な目標を最初に掲げるという点では日本よりインドネシアのほうが優秀である。そう言わざるを得ない。

しかし逆に考えれば、日本の地方自治体もスタートアップ支援計画を考察できる余地があるということだ。人口減少の解決策として「海外からの移民受け入れ」が挙げられるが、そうした根本的な手段はここでは置いておこう。それに、今現在の状態で人口を底上げしたとしても、移民が日本中の都市に等しい割合定着してくれるかどうかは分からない。

静岡市には大手製造企業の工場がいくつもあるのに、地元から若者が離れていく。つまり既存の企業には「魅力がない」と若者から思われているのだ。となると、あとは新しい産業を生み出すという選択肢しかない。

雇用創出、税収増と同時に都市の利便性向上を促すようなサービスを提供するスタートアップ。その育成こそが、地方自治体にとっての最重要命題ではないのか。それが決して夢物語ではないことは、インドネシアですでに証明されている。

 

【参考・動画】

インドネシアのオンデマンド配車アプリ「Go-Jek」、ユーザ間で電子マネーの相互送金が可能に – The Bridge

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