クラウドファンディングで、今熱いディスクトイって何だ?

Photo via VisualHunt.com

 

クラウドファンディングの世界にも「流行」がある。

筆者は、「クラウドファンディングで成功するのに高度な技術は必要ない」と再三記事に書いてきた。『FUTURUS』だけではなく、他のメディアでもその持論を曲げたことはない。誰しもがスティーブ・ジョブズになれるわけではないのだし、そもそも「天才」と「凡才」はどちらも特殊ステータスである。凡才や凡庸の中身を知っている人間でなければ、大衆の購買心を発起させることはできない。

天才の考える「こんなものいいな、できたらいいな」は、大衆の願望とはかけ離れている場合がほとんどだ。筆者も含め、人類の9割9分9厘は凡庸な者に過ぎない。逆に言えば、ビジネスの世界で凡才が天才を凌駕する場面は多々あるのだ。

 

機能のないスイッチ

なぜこんなことを冒頭から書くかというと、ここ最近のクラウドファンディングでは「ディスクトイ」という分野の製品が目立ってきているからだ。

凡庸な日常の中で、人は常に指先を動かしている。充電ケーブルを人差し指に巻きつける、10円玉を1枚取り出して机で転がし続ける、スマートフォンのケースの脱着作業を繰り返す等々。

昨年の大河ドラマ『真田丸』では、草刈正雄演じる真田昌幸が事あるごとに手の中でクルミを回していた。これらの「指いじり」は非常に多くのバリエーションに富み、立派な歴史を形成している。誰かそのあたりのことを書籍化してくれないかと、筆者は願っているのだが。

さて、去年クラウドファンディング『Kickstarter』で大きな話題を呼んだのが、『Fidget Cube』という製品。これはサイコロのような六面体にあらゆるスイッチ類がついているというもの。

このスイッチは当然ながらBluetooth接続で、あらゆるモバイル機器やテレビ、家電製品を遠隔操作できる……というのは筆者の嘘だ。本当は、Fidget Cubeのスイッチ類には何の機能も存在しない。ボタンを押してもダイヤルを回しても、スマホが動くなどということは決して起こらない。

では、何のためのスイッチなのか。要は「真田昌幸のクルミ」なのだ。指先の運動のためだけに開発されたものである。

だが、Fidget Cubeは最終的には640万ドル(約7億円)以上もの出資を集めた。記載の誤植を疑ってしまうような数字だ。

 

「手遊び」が生み出した需要

それを皮切りに、クラウドファンディングにはディスクトイが続々出展されるようになった。

『Indiegogo』には最近、『iSpin』というものが投資を集めている。これはディスクトイの中でもハンドスピナーと呼ばれるものだが、高精度ベアリングを採用した「ただそれだけ」アイテムである。

本当に、回すだけなのだ。

開発者によると、このiSpinは日常の暇つぶしだけでなく発達障害の治療にも役立てることができるという。臨床データを出しているわけではないのでこのあたりは鵜呑みにするべきではないが、ちょっとした手遊びには確かにフィットしそうな製品だ。

また、日本からは『MOKURU』というものも出てきた。これは万年筆のキャップをもとに開発されたというが、棒状なのに縦に転がせるという特徴を持っている。

これを生かして様々なパフォーマンスができるそうだ。暇つぶし用途だけでなく、複数人でちょっとしたゲームを創作することも可能と開発者は謳っている。

いずれの製品も巨額の資金を集めることに成功した。「凡庸な日常の中の光景」を抽出し、製品化する。それが一大ビジネスに発展してしまうのだ。そうしたことは、「天才」にはできない。

だがじつは、ディスクトイのクラウドファンディング出展に問題がないというわけではない。いや、むしろ極めて深刻な問題がディスクトイの開発者にのしかかっている。これについては、別の記事で説明したい。

 

【参考・動画】

Fidget Cube: A Vinyl Desk Toy – Kickstarter

iSpin: A Quality EDC Hand Spinner For Everyone – Indiegogo

MOKURU: The Amazing Desk Toy That You Can Take Anywhere! – Kickstarter

※ 10USD Best iSpin Hand Spinner, Fidget Spinner, Spinner Tricks On Indiegogo By Feelingtech – YouTube