米国時間の5月23日に米グーグルは、YouTubeが今後数ヶ月以内に、様々な機能の追加を行う事を発表した。
それらの機能とは、クリエイター用のモバイルアプリや、ユーザーが協力し合ってキャプションなどを翻訳できるクラウドソーシングの機能などで、中には楽曲をカバーしたビデオで広告収入を得た場合にオリジナルのアーティストと利益をシェアできる機能なども盛り込まれるようだ。
そして今回注目したいのは、YouTubeのクリエイターが、活動資金をファンから調達できるクラウドファンディングの仕組みが追加されるということだ。
現在、YouTubeに動画を投稿しているクリエイターがYouTubeを利用して得られる収入は広告収入だけだ。従ってクリエイターが動画作成のための資金を集めるにはYouTubeの外部で行わざるを得なかった。 しかし今後はYouTubeにクラウドファンディングの機能を持たせることで、ファンから直接資金的な支援が受けられるようになるという。
日本のクラウドファンディング
それではそのクラウドファンディング(crowd funding)とはどのような仕組みだろうか。
それは個人や団体が、事業やプロジェクトを行うにあたり、インターネットを利用して不特定多数の小規模な投資家から出資を募る仕組みだ。
少し前に話題になったところでは、iPS細胞で有名になった山中伸弥氏が、iPS基金への寄付を集めるためにクラウドファンディングを利用した。このときは2012年3月11日の京都マラソンで山中伸弥氏自身が完走することを条件として呼びかけた。
米国では「Kickstarter」「Indiegogo」などが有名なクラウドファンディングだが、日本でも多くのクラウドファンディングが立ち上がっており、その累計支援額は下図のグラフの様に増加している。
この日本のクラウドファンディングについて、5月23日の参議院本会議で「改正金融商品取引法」として制度が定められた。目的はより安全なクラウドファンディングの運用とされている。
例えば投資家の損失が度を超さないために、一人の投資家が一つの企業に投資できる金額の上限が定められたり、逆に資金を集めたい企業側が1年間に募集できる金額の上限が定められたりしている。 他にも仲介会社が投資先の事業計画などについて詳細をネット上で提供することを義務づけることで、詐欺などへの悪用を防ぐことが目指されている。
一方でクラウドファンディングを仲介する業者が参入しやすいように、必要な資本金がこれまでの5分の1となるなど、クラウドファンディングの普及を後押ししている。 このように法整備されたことから、今後日本でのクラウドファンディングの活用は活発になるだろう。
成功するユーチューバー
話を戻すが、YouTubeがクラウドファンディングの仕組みを取り入れれば、既に注目されているユーチューバーと呼ばれる動画クリエイター達の活動が活発になり、新規の参加者も激増すると予想出来る。
ユーチューバーとは、YouTubeに動画をアップすることが頻繁な人達のことを示すが、彼らの中から特に大量のアクセスを集めて有名になった人だけを示す場合もある。
日本ではトップユーチューバーとしてHIKAKINが有名で、彼のチャンネル登録者数は360万人を超えている(2014年4月現在)。しかも本人が公言するところではYouTubeからの収入は年収約3,000万円だというから驚きだ。
ユーチューバーが注目されているのは、HIKAKINの様にYouTubeへの動画アップで大きな収入を得ることに成功し始めたこともある。プロのユーチューバーとして生計を立てている者たちも出てきた。
それを可能にしているのはYouTubeで配信した動画に掲載される広告収入が得られるからだ。そのためプロのユーチューバー達は、ファンに飽きられないように様々な工夫を凝らした動画を作り続けている。
ユーチューバーに注目する企業
驚くべき収入を得ているトップユーチューバーたちだが、彼らの収入は広告収入だけではなくなってきている。 企業が彼らに注目し始めたのだ。
つまり、人気のあるユーチューバーと手を組んで、企業の販売促進活動に役立てようという動きが出てきたのだ。
例えばトップユーチューバが企業から依頼された製品の使い方や使用感などを動画でアップすることで、テレビCMとは異なる訴求効果が期待されている。 このような動きは、ユーチューバーにとっては収入源を複線化することでメリットがあるが、企業側のメリットも大きい。
テレビCMは不特定多数の視聴者に見られるが、関心を示してくれる視聴者は少ないだろうし、最近ではハードディスクに録画することで、CMはスキップされている可能性も高い。しかも制作費も広告費も高額だ。 それに比べてユーチューバーに依頼する場合であれば、僅かな制作費で、より指向性が絞られた視聴者に見てもらえる。
しかもYouTubeの視聴者は、その動画を見るために積極的に再生してくれているため、訴求効果も大きいはずだ。 また、ユーチューバーに依頼することは費用の敷居が低くなるので、中小企業でも気軽に参加できる。
以上の様に、YouTubeの動画クリエイターにとっては、資金集めの面からも、企業に注目されているという面からも、ますます活動がしやすくなっていくことだろう。