ヤマハ3輪バイク「TRICITY」商品企画の方に色々聞いてみた

3輪バイクが目的ではなかった

ーーー そもそも、3輪バイクを出したいと思った理由はなんでしょうか。

十数年前、2輪の世界は特に先進国では市場が飽和、新しい顧客が入りにくい状態になっていました。それまで乗っていた人もどんどんバイクを下りて行く状況で、将来市場を拡大、いやキープするには何か新しいことやらないとまずいという危機感を持っていたんです。そこで色々な施策を考えた中のひとつが3輪バイクです。

ーーー では3輪バイクありき、ではなかったのですね。

そう、3輪でも4輪でもよかった。とにかく今までの2輪とは違う乗り味のものを出せないか。結論からいうと3輪にしたから2輪よりも良い、悪いということではなく、2輪とは違って、安定していつつもクイックであるという、バランスがいい作りこみができました。

ーーー そもそも安定性とクイックは相反するものですよね。

一概にはそうともいえないが、一般的にクルーザーは直進性がよく、小回りきかない、逆にスーパースポーツは小回りがきくけど長くのっていると疲れちゃう、3輪はそのいいとこどりが出来ています。

ーーー それは3輪にしたからですか?

いやそういうわけではなく、追いこんでいったらトータルバランスの良いものができたんです。

ーーー 元々3輪車を作りたいというわけではなかったのですね。

そうです、あくまでも手段であり、結果いいものができました。

ーーー ピアッジオがすでに3輪バイク(前2輪、後1輪)を出していますが、それは参考にしたのでしょうか?

もちろんさせていただきました。ただ、この3輪バイクの企画はピアッジオが出す以前から企画。ピアッジオが3輪バイクを2005年末から販売しているので、当然ユーザーのインタビューを行い、研究させてもらいました。

ーーー どんなユーザーが乗っていたのでしょう。

ピアッジオMP3の場合売れ筋は400ccから500ccと排気量が大きいもので、当初自動車免許で乗れることが受けました。

(※販売当初、普通自動車免許で乗ることができた。現在は法改正により、自動二輪免許が必要)

ユーザーは医者、弁護士が多く、求めているものを調べると他と違うということだけではなく、安全性を気にしていました。実際問題3輪バイクが安全かどうか、というと一概にはいえないのですが、ユーザーの感覚としては、自分は弁護士だから体を粗末にできないという意識が強く、その結果安全性が高いイメージをもつ3輪バイクが好まれていることが分かりました。

ーーー 実際に3輪バイクは安全性が高いのでしょうか?

それはオートバイとスクーターの比較と同じことで、オートバイはスポーツ指向、スクーターは安全指向と言われますが、実際には一概には言えません。どちらも安全に乗れば安全、危ない乗り方すれば危ない。ただスクーターはコンフォートであることは確かで、スクーターは風防が大きく雨もよけられます。

そこでTRICITYもスクーターのいいところ、コンフォート性を取り入れました。ピアッジオと違いセンタートンネルはなく、ステップスルーですっと足を乗せられます。

 

入りやすい、戻りやすい125cc

ーーー 排気量125ccを選んだ理由は?

なるべく多くの人に乗ってほしいという思いからです。

例えばヨーロッパ。学生時代にモペットに乗っていたり、持っていなくても友人から借りて乗っていたりした人が社会人になってオートバイやめて自動車通勤、電車通勤になると交通渋滞や満員電車に辟易します。2輪の機動力はメリットがあり、駐車場も簡単に探せます。特にパリの街はとめる場所がなく大変ですから。2輪の機動力を多くの人にエンジョイしてほしいので125ccなのです。

ーーー 高速道路に乗れるように排気量アップする予定はありますか

それは可能性としてあります。とはいえ、まず第一弾は幅広いお客さん、乗っていない人にアピールするには世界的にも一番大きな市場である125ccクラスから始めます。ASEANでは110から125ccがボリュームゾーンで、最近150ccが人気とだんだんとシフトしているが、やっぱりマジョリティは125ccです。

特にヨーロッパ諸国、スペイン・イタリアでは自動車免許で、フランスは7時間講習を受けるだけで乗れます。ドイツは日本と同じく2輪免許が必要ですがフランス、イタリア、スペインは壁が低く、乗りやすいです。

また当然ですが200~300ccクラスよりもコンパクトで扱いやすいサイズに収まります。先行したピアッジオMP3は大きな排気量なので違う市場を狙いたい、というのもありました。

ーーー さきほど少し試乗しましたが、パッと乗っても乗りやすい感じです

(※インタビュアーは普通2輪免許は持っているものの、バイクに乗るのは数年ぶり)

ヤマハ発動機では「SmartRidingアプリ」というライディングアプリを出しています。

このアプリを使うと滑らかに乗れているかどうかが計れますが、これを使って計測したところTRICITYは微修正が少ないんです。また多くの人を集めてもばらつきが少なく同じところに集まる傾向です。上手い人から初心者まで安定してまとまっていますが、結果的にそうなっています。他のバイクではライダーの質によりバラバラになるのですが。

ーーー その点からいうと誰にとっても乗りやすいといっていいですね。

 

レーサーM1とTRICITYの共通点

TRICITY

今回の開発PL(プロジェクトリーダー)はMotoGPでロッシを担当した、M1のPLが担当しています。

そのPLいわく「M1のようなレーサーは乗りやすくないとダメ、疲れるようなバイクはダメ」と。速いだけではなく、乗りやすい、疲れにくい、そういうバイクじゃないと速く走れないんです。

その考えがTRICITYにもフィードバックされています。実はM1と共通するものががあるんです。

ーーー 3輪だから値段が高い、ではなく、お求め安い125ccスクーターの価格帯に収まっています。

もちろん構造が複雑な分普通は高くなります。しかしお客さんの予算からみて、ゲタを買うには高すぎるよ、にはならないように設定しました。

ーーー タイ・ヤマハで生産するのはそれが目的でしょうか?

そういうわけではありませんが、タイ・ヤマハで作ったからこの価格帯に収まったと思います。

ーーー 当初タイで作ってタイで売るのかと思っていましたが。

ASEAN、欧州、日本の3市場、3枚抜きを押さえたい。

(※当初は販売目標7,000台)

これは最初の一歩。2輪に比べて凄い良いかというとそんなことはありません。1歩出られただけ、でも1歩出られたかなという。

初年度でムリした台数をいれず、きっちり市場を育てたいです。

ーーー 我々ユーザーも長い目で育てていきたいですね。

この試乗コースだけじゃわからないでしょ。

(※試乗コースは秋葉原UDXの地下駐車場)

TRICITY

こんな真っ平らな路面は一般道ではありえない(笑)。

色々なシチュエーションで、極端なところでのったほうが3輪の良さが分かりやすいので、そいういうところで是非評価してほしいです。そこではじめてこのTRICITYがナニモノなのか分かります。

とはいえあくまでも基本は2輪ですよ。2輪に毛が生えた程度(笑)。

ーーー そう思って乗ったら、お、違うぞとハッキリ分かるんですね。

昔スーパースポーツバイクが年間3万台売れた時代があります。その世代は現在40代前後で、その世代をひっぱりだしてきたら凄いことになりますよ。

ただ子供はでかい、嫁さんは嫌な顔をする、だからでかいオートバイは買えません。125ccのTRICITYなら買いやすいし、スーパースポーツ、ネイキッドに乗っていた人でもがっかりしないものに仕上がっています。M1の PLですから、絶対にがっかりさせません。

ーーー 期待を胸に試乗してほしいですね。

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