我々は「後藤健二」が残した足跡の上を歩いている

“給料3ヶ月分”のダイヤの裏側

「婚約指輪は給料の3ヶ月分」。かつてこんなキャッチコピーを打ち出していた宝石会社があった。

一生懸命働いて得た稼ぎを愛する人のために、という意味のこのキャッチコピーは日本人の心を掴んだ。給料の3ヶ月分を本当に工面するとしたら、相当な労力が必要だ。その労力の結晶がダイヤモンドの指輪であり、自分と一生涯を添い遂げる女性の指で永遠に光り輝いてほしい……というロマンチックな夢を皆が抱いていた時代が、日本にもあったのだ。

だが、そのダイヤモンドの出所について考えていた日本人がどれだけいただろうか? 幸せな恋愛を全うした女性が身に付けているそのダイヤは、一体どこの誰が掘り出したのだろう?

そんな天邪鬼とも思えることを考え、しかもそれを調査したのが後藤健二という男である。

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ダイヤモンドの一大生産地であるアフリカ大陸西部から南部にかけての地域は、最近まで紛争が絶えなかった地域だ。いや、現在でもいつ大規模な内戦が勃発するのか、誰にもわからない状況である。

そんな不安定な地域の中にある小国シエラレオネは、それでもダイヤモンド鉱山を持つ希少価値の高い国として知られていた。

国土面積こそ小さい国だが、天然資源に恵まれている。それを活かせば経済成長など簡単にできる、と誰しもが考えていた。

ところが、現実は過酷だった。シエラレオネ国内に乱立した軍閥やゲリラ組織、そして隣国リベリアからもダイヤモンド鉱山を巡り、攻撃を受ける羽目になってしまったのだ。

鉱山を確保すれば軍資金に困ることはない、という安直な発想のゲリラ司令官がアフリカにはあまりに多過ぎる。彼らに国づくりの基礎となる教育に金をかけようという発想はない。

ゲリラ組織は子どもを利用した。中古のカラシニコフ自動小銃とRPG-7を小さい身体に抱えさせ、彼らを最前線に送り込んだ。当然、国は荒廃する。だがそれでもいいのだ。ダイヤモンド鉱山さえあれば、金はいくらでも……。

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