子どもの未来を食らう魔女 「負のイノベーション」と対峙する

魔女に支配された子どもたち

『AK47』は、広大なソビエト領各地で驚異的な活躍を見せた。

何しろこの小銃はどんな人間でも分解結合ができ、いかなる気候区分の戦場においても動作不良を滅多に起こさない。まったく新しい銃の登場に現場の兵士は驚き、そして信頼を寄せた。

『AK47』は戦場の女神、そして兵士たちの最愛の恋人となった。

カラシニコフの小銃の驚異的な使い勝手は、西側諸国も注目した。カラシニコフよりも10年ほど後にM16小銃を設計したユージン・ストーナーは、後年本人に対して「君はベトナムで私に勝った」と言葉を残した。

だが、『AK47』は女神ではなく、魔女だったのだ。

文字の読み書きができない者でも扱えるということは、それが小学生であっても構わないということだ。世界中に輸出された『AK47』は、いつしか地域紛争のシンボルと化していく。

『AK47』は、今までの戦争史では“弱者”とされてきた子どもたちを“戦士”にしてしまったのだ。日本ならばランドセルを背負っている年頃の少年に、たった数日の訓練で分解結合と射撃を覚えさせ、逐次最前線へ送り込むということが可能になった。

この悲劇が、晩年のカラシニコフの心に深く焼き付いた。彼はロシア正教会のキリル総主教に懺悔までしている。「私の銃が、世界の子どもたちの未来を奪っている。私に神の許しはあるのだろうか」と。

東部戦線で仲間を死なせてしまった後悔よりもさらに重い十字架を抱えながら、ミハイル・カラシニコフは2013年の年の瀬にこの世を去った。

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