ちょっとヤバい「タバコモザイクウイルス」が発電所の効率UPに貢献するかも

どうやって熱交換の効率を上げるか

同大学のマシュー・マッカーシー博士らは、沸騰、蒸発、凝縮といった液体の相転移に注目した研究を行っていた。これらは現代社会の様々な面で活用されている。蒸気タービンは発電所に使われているし、蒸留は水の浄化として信頼されている方法のひとつだ。また、冷房などにおいても潜熱の利用は欠かせない。

したがって、この相転移による熱交換の効率を少しでも向上させることができれば、社会が受けるメリットは大きいと考えたのだ。

熱交換の効率改善のためにマッカーシー博士らが注目したのは、液体と接触する熱交換器の表面だった。液体を沸騰させると、臨界熱流束(CHF)という状態が発生する。鍋で水を沸騰させると泡が発生するが、その発生した蒸気の泡がうまく液体に追い出されることができない状態のことだ。

このCHFが発生すると、蒸気(気体)が熱源と液体のあいだの熱交換を邪魔するので、液体に熱が伝わりにくくなる。そうすると熱交換器の表面温度が急激に上がり、“バーンアウト”という状況が起こる。CHFとバーンアウトが起こると、ふたたび熱交換器の表面に水を触れさせることは困難になる。熱交換器の破壊につながるし、熱交換の効率は大幅に下がる。

マッカーシー博士らのチームは、このCHFの発生をふせぐか、または遅らせるために、熱交換器の表面をナノ構造物でコーティングすることを考えた。蒸気が発生してもナノ構造体のなかにすみやかに液体を引き込むことで熱交換の効率を上げようというものだ。

これは、速乾性のスポーツウェアにヒントを得たものだ。毛細管現象などによって水を吸い込む作用を使って、CHFの発生を防ごうという考え方だ。そして、そのコーティングに使うナノ構造体として、冒頭に上げたタバコモザイクウイルスに白羽の矢が立ったのである。

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