タクシードライバーは信用されない
初めて日本を訪れた外国人は、皆一様に日本のタクシーに驚く。手を触れなくてもドアが開くというのも理由の一つだが、何より「絶対に不正をしない」ということが驚愕すべき現象なのだ。
日本以外の国では、タクシードライバーは決して社会的地位の高い職業ではない。地方からの出稼ぎ労働者、前科持ち、被差別階級出身者、移民、亡命者など、ワーキングクラスの下層部に属する人々がタクシーを動かしているというのが“世界の常識”である。
そしてタクシーの中では、しばしば悪事が行われる。近距離利用者は乗車拒否されるか、ドライバーの言い値で利用させられるかのどちらかだ。
首尾よくメーター料金で乗ることができても、そのメーターに細工が施されているということも珍しくない。乗客がそれに抗議をしようものなら、腕力で返答されてしまう。もちろん全てのタクシーがそうではないとはいえ、乗客は質の悪いドライバーに当たらないよう選別眼を磨いておかなければならない。
にもかかわらず、例えばアメリカではタクシー運行ライセンスに発行上限を設けている。正規のタクシーの総数を、予め設定しているのだ。すると運行ライセンスは、必然的に利権化する。
このような状態で、タクシー会社が自力でサービス向上を図ろうとするだろうか? 真面目に信頼回復の手段を講じるのだろうか? どうせタクシーがこのような有り様なのだから、一般車両をタクシー代わりにした方が安全なのではないか?
抗議の波に呑まれる『Uber』
6月25日、フランスの首都パリでタクシードライバーによる反Uberデモが発生した。このデモでは一部の参加者が暴徒化し、『Uber』とは全く関係のない車を襲撃し火をつけるという事態にまでなった。その際、アメリカのロック歌手コートニー・ラブの乗っていた車が暴徒に襲われるということも起きている。
結果的にこの出来事は、『Uber』の“白タク営業”を一時的に中止させた。一般車両を用いたサービスである『UberPop』は、同国裁判所の判断が下される9月まで提供が凍結されることとなった。
だがこれは同時に、フランスでの利用者が増加の一途をたどっているという一つの証明でもある。同国の消費者もやはり、「タクシーは信用ならない乗り物」と考えているようだ。
南アフリカはさらに深刻だ。この国のタクシードライバーの殆どは黒人、即ちアパルトヘイト時代の被差別者側だ。タクシー業界は、社会の最底辺の人々に雇用を与えてきたという歴史がある。『Uber』の上陸で、そのシステムが崩壊したのだ。
このように、『Uber』を取り巻く状況はそう簡単に白黒をつけられるものではなく、非常に複雑だ。我が国日本のタクシー業界のように、モラルと企業努力とサービス精神があり市民からの信頼を得ていれば、『Uber』はライドシェアにこだわらない方針を打ち出すかもしれない。現にUber Japanは、あくまでも既存の事業者と提携している“第2種旅行業者”である。
『Uber』の存在は、各国のタクシー業界のレベルを判別する測定器にもなっているのだ。
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