さよならベータ!日本の黒物家電を変えたVHSとの「ビデオ戦争」の顛末

ハイアマチュアより一般層

miggle age man watching tv at home

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「客の好むものを売るな。客のためになるものを売れ」

幸之助は、このような言葉を遺している。

そんな経済界の重鎮は、ビデオ戦争では最終的に『VHS』を選んだ。なぜか?

まずは後発参入メーカーにとって、より製造コストの安いデッキを選ぶことが条件として欠かせないという考えである。だが肝心なのは、それ以外の理由だ。これは幸之助の姿勢をよく表している。

「『ベータ』のデッキは重い。せやからデッキを買うたら配送を頼まなあかん。『VHS』のデッキはわしでも運べる。お客さんは、買ったものをすぐに確かめたいんや。」

『VHS』のデッキは自力で家まで運べるから、一般ユーザーはより軽いほうを選ぶというのが幸之助の発想だった。

9歳から丁稚奉公から始め、常に商売一筋に生きてきた幸之助の脳には、「これを買ったら客はその後どうするのか」というものがあったようだ。少なくとも幸之助の発想は、マニアックな知識と性能の充実を最優先する、ハイアマチュア思考の人間には絶対に理解できない。

だが史実は、性能面に優れるはずの『ベータ』が『VHS』に押されてしまった。課題であった録画時間の短さも改善しつつあったのに、だ。

幸之助の姿勢は、言い換えれば“一般層ユーザーへの分かりやすさ”を第一に考えるものだ。

その点で言えば、『ベータ』はハイアマチュア層にこだわり過ぎた感がある。

例えば、ベータカセットの『L-250』という製品は“250フィートのフィルム長を有するカセット”という意味合いだが、ではその250フィートで何分の録画が可能なのか知っている一般層ユーザーは少ない。

大体、日本はメートル法が定着した国である。100メートルと250フィートのどちらが長いのか、知らない日本人のほうが大多数だ。

『ベータ』の敗因は、そこに見出すことができる。

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