JALの世界最長大気観測「地球温暖化の解明」へ重要なのは“継続”

経営破綻時も「継続」を決意

江藤氏は、大気観測プロジェクトの担当に2010年から就任。ちょうどJALが経営破綻で揺れていた時期だ。

江藤氏、

<当時、当然ながらこのプロジェクトに関する議論は社内でありました。

破綻に伴い、他の多くの取り組みなどを中止せざるを得ない状況下で、本件についても経営陣が継続か否かの確認の機会を持ちました>

 

出た結論は“継続”。

 

江藤氏、

<JALグループは航空運送事業を営む企業である以上、化石燃料の利用により環境に何らかの負荷をかけているのは事実です。

それを前提に、このプロジェクトが

■環境面で社会に貢献できる取り組みであること
■世界の空を広範囲、高頻度でフライトする航空機の特性を活かした、航空会社ならではの取り組みであること

などを改めて確認。本プロジェクトへの継続参加を決定しました。

ただし、再生に向けた本来の事業活動にマイナスの影響を与えないことが大前提。その上で、“JALグループとして最大限可能な範囲で取り組む”という姿勢で望むこととなり、現在に至ります>

 

結果的に、この“継続”の判断が、航空機による大気観測として世界最長になる大きな要因となった。

 

研究者や国家戦略のためにも続ける

--今後は、どのような方針ですすめていくのだろうか?

江藤氏、

<新しく路線へ導入しているボーイング787型機に、自動観測機器を搭載することなども検討中です。

更には、A350型機など航空機が代替わりしても、観測が続けられるようにしたいですね。

 

我々が協力させて頂いている研究者の方々は、「地球温暖化のメカニズムを絶対に解明するんだ」と、熱意をもって研究されています。

ただし、時間がかかる。よく「自分が生きているうちは(解明は)難しいだろう」と言われます。

でも、「未来へ繋げるために、まずは“今”の観測をしなければ」といった使命感で取り組まれています。本当に頭が下がりますね>

 

ちなみに、下図は高度8km以上の対流圏における、4月と7月のCO2濃度の分布だ。

シベリア域 平面図

資料提供:CONTRAILプロジェクト

 

北半球と南半球でCO2濃度の差が大きいことや、森林が多いシベリア上空では夏でもCO2濃度が低いことなど、少しずつだが観測により分かったことは増えてきている。

 

江藤氏、

<また、最近話題となっている『パリ協定』についても、協定遵守の監視を行うには信頼できる客観的なデータが必要です。

そういう意味で、我々がオーストラリア-日本間で行っている大気採取は、世界最長の観測。長年、同じ地点で取っているデータは世界に他になく、信頼性はかなり高いと自負しています。

我々が行っているプロジェクトが、少しでもこういった研究者の方々や国際社会での日本の貢献に役立てられるといいと思っています。

そのためにも、まずは“継続”。これが第一ですね>

 

JAL002

Photo : Naoki Hiratsuka

 

“継続は力なり”。

いい意味での“ルーティンワーク”として、今後も続けていって欲しいものだ。

 

【取材協力】

※ 江藤 仁樹 – 日本航空株式会社

【参考】

環境省

JAXA

国立環境研究所

【関連記事】

※ リーダー必読!JAL運航責任者の3大決断に学ぶ「スピーディに最善策を出す方法」

※ 地球温暖化を救うかも!? 「空気からエタノール」を生む鍵とは

※ 室温20℃でも暖かく!環境省×モンベルで「ウォームビズ」を推進

※ 船溜まりを再利用!「水に浮かぶ森」という斬新な発想がもたらすもの

※ 世界初の民間月面探査を目指すチーム「HAKUTO」をJAL&Zoffが後押し

1ページ目から読む