人工知能案件のマッチング事業から見える人工知能ビジネスの現在と未来

人工知能において、最先端で活躍する人たちにインタビューをする企画第2弾。今回はTeam AI(株式会社ジェニオ)の代表・石井大輔氏に話を伺った。

撮影:佐藤大生

 

 人工知能案件募集開始、次の日から仕事が入った

――まずはTeam AIの現在の事業内容を教えてください。

メインの事業としては、”人工知能の開発案件”のマッチングを行っています。

私たちが「人工知能を導入したい」という企業と要件を詰め、その要件にふさわしいスキルと価格を持った開発パートナー企業をアサインするビジネスです。

現在、パートナー企業は10社、エンジニア数では130名ほどです。各社の強みも、自然言語処理、画像解析、音声認識、金融時系列データ分析など多岐に渡っています。

――人工知能のマッチング事業を始めようと思ったきっかけは何ですか?

もともとはRubyやPHPなどアプリケーション開発の受託業務を行っていました。2016年夏に、自社事業をやりたいと思い、チャットボット【*】やAIを作ってみたいと思いました。そこで、「人工知能の開発者マッチング」のシンプルなランディングページを作りました。するといきなり次の日から仕事の依頼連絡が入りました。”やばい、AIエンジニアがいない!”と思っていたら、その翌日AIエンジニアから”仕事があったら紹介してください”とメールがきました。

比較的早く良いアイデアかどうか仮説検証ができたので、AI事業に集中することにして、他の仕事を断って現在はメインの事業として人工知能開発者のマッチングを行っています。

――どのような企業から仕事を依頼されますか?

業界でいうと、一番多いのが人材紹介会社。次に製造業、IT関連ですね。

――どのような仕事の依頼が多いですか?

5割ほどが自然言語処理です。あとは2割くらいが画像認識、1割くらいが音声認識。残りの2割がその他といった感じです。

――自然言語処理では、具体的にどのような仕事をしているのですか?

まだリリースしていないのですが、”街を案内する観光業チャットボット”の開発を行っています。

「美味しいお店はどこですか?」などとスマホに話しかけると、「〇〇です」といったように回答してくれるスマホアプリです。

自然言語処理においては、チャットボットのように質問に回答するものや、文章を解析する仕事が多いですね。

撮影:佐藤大生

月収100万円超えも十分可能!?

――人工知能開発の相場はどのくらいですか?

1人月(8時間×20日間)で100万円〜300万円ですね。日本で一番高い企業では1人月800万円というところもあるようです。

――非常に高いですね。なぜそんなに高給なのですか?

産業が新しいため、人が少ないからです。

――チームAIでは企業と企業のマッチングだけではなく、企業とフリーランスのマッチングも行っていますね。

現在、フリーランスの人が人工知能を学ぶのが流行っています。というのも、PHPやRubyを使ったアプリケーションエンジニアの常駐案件は1人月80万円くらいが上限という相場なんです。アプリケーションを作れる人口が増えてきているからだと思います。

ただし、機械学習を使ってデータ分析をすることができるエンジニアになると1人月120万円に届くようになります。単純に給料が1.5倍になるチャンスがあるので、そこを目指して機械学習の勉強をしているエンジニアが増えています。

そういったフリーランスのエンジニアの方にも我々は仕事を提供しています。

――現在フリーランスの機械学習エンジニアは、どのくらいいるのですか?

バックエンドエンジニア全体の5%ほどだと思います。

――まだまだ少ないのですね。今後増えていくと思いますか?

増えていくと思います。企業側からの需要が増えていることももちろんですが、開発が便利になるツールがたくさん出てきているので。

CSVデータをアップロードしただけで分析してくれる手頃なツールや、GUIで画面を操作するだけで分析できるものなど。つまり、難しいプログラミングコードを書かないでも機械学習ができる将来が予想され、裾野は広がって欲しいと思っています 。

――データ分析において、今一番多く使われているプログラミング言語は何ですか?

PythonかRですね。この2つが多いです。Pythonは機械学習ライブラリ(TensorFlow, Chainer, Caffeなど)が豊富なので、実装が簡単ということがありま す。Rは昔から統計においてコミュニティーがあるからでしょうね。

 

どうすれば機械学習エンジニアになれる?

――Team AIが開催している勉強会に参加して、すぐ機械学習の開発現場にでることは可能ですか?

すぐには厳しいですね 。

――人工知能の仕事がしたいと思った場合、どのようにステップアップしていくのがオススメですか?

現在エンジニアの人の場合は、本を読むのをお勧めします。

最近、Pythonの良い本がたくさん出ていますので。その中でもオススメなのが、「ゼロから作るDeep Learning 」、「Python機械学習プログラミング 達人データサイエンティストによる理論と実践 」ですね

この2冊で勉強されているエンジニアの方が非常に多いですね。これらの本を読みながら、うちのセミナーなんかに来て頂いて、ブラッシュアップして行くのが良い方法ではないかなと。

あとは、自分でAIアプリを何か作ってみるのが良いですね。弊社のセミナーに来ている人だと、写真をアップロードすると「これはバナナです」と回答するような簡単なアプリを作っていました。

自然言語を学びたい場合は、言語100本ノックというサイトがあるのですが、これはいいですね

これを一通りやると、何か作りたくなると思いますよ。

画像処理100本ノックとか、音声認識100本ノックなども今後出てくると良いですね。

撮影:佐藤大生

 

無料勉強会を月30回以上開催中

――Team AIでは月に30回以上。それも無料で勉強会を開かれているようですが、どのようなことを行っているのですか?

テーマは自然言語処理、強化学習、論文を読む会、Kaggleを使ったデータ分析チャレンジ、交流会(金曜日のクラフトビールパーティー)などですね。曜日ごとにテーマを変えています。

――なぜ無料で、しかも月に30回も開催しているのですか?

一番の理由は楽しいからです(笑)。お金の稼ぎ方はいろいろあると思うのですけど、弊社は無料で行っています。私は先生というより、ファシリテーターという立場で参加者には自主勉強してもらっていま す。

もちろん、私たちの勉強会でエンジニアが成長してくれれば、その方に仕事を紹介することができるので、メリットはあります。

――参加者はどのような方が多いのですか?

6割くらいが初心者の方ですね。それでも1割ほどは論文を読み込むなど先端AI に携わっている人が参加しています。大手メーカーの人や情報系の大学院生など。年齢的には20代〜50代と幅広いです。中心は30代ですね。

――エンジニアでない人が成長していくにはどうすれば良いですか?

とりあえず何かを作ることをお勧めします。

今はプログラミングをしなくてもチャットボットが作れるサービス(Motion.aiやHachidori など) があるんですよ。しかも2時間くらいでできちゃいます。

昨年、超初心者向けにコーディングなしのチャットボット構築ワークショップをやったのですが、非常に好評でした。これは今後もやっていきたいですね。

”超初心者向けの人工知能100本ノック”などをうちのチームで作ってみようかなと思っています。

撮影:佐藤大生

人工知能業界の今後の行方

――人工知能業界は今後どのようになっていくと思いますか?

「機械学習のロジックを構築し、受託開発で儲ける」というビジネスモデルが2017年現在は主流です。機械学習が実装されていないビジネス領域はまだ沢山残されており、可能性は非常に大きいと思います。2016年は自動車、製造業、医療などの分野で、AI業界全体で受託が盛り上がりました。

他方で、ロジックそのものの課金で儲けるのは、Amazon(Amazon Web Service)やGoogle(Google Cloud Platform)など、米国の超大手IT企業同士の競争に巻き込まれないように注意する必要がありますね。また、米国をはじめとしたStartupもより良いロジック開発や価値あるサービス構築にしのぎを削っています。

手法そのものも大事ですが、同時に高性能AI の構築に欠かせないデータをどれだけ持っているかが大事になります。個人情報で言えば、グローバルに見るとGoogleとFacebookがスマホアプリ経由で多面的なリアルタイム情報を大量に保有しているので強いですね。ターゲット顧客の有益かつリッチな情報をいかに戦略的に取得するかが、AIビジネスの競走上非常に重要になってくると思います。

――日本ではちょっと後れがあるのでしょうか?

遅れがありますね。英語圏は喋れる人口が10億人いますので、研究者の数が違いますし、オバマ政権が医療のオープンデータ化に200億円を投資するなど、利用できる学習データの数も違います。日本でもようやく政府が医療情報の研究目的の利用支援する法案を審議するようになりました。

――人工知能が人間を滅ぼすことがあると思いますか?

これは東京大学の松尾豊先生のお話なんですが、人間と人工知能の一番の違いは”本能があるか、ないか”だと思うのですね。

人間は”1番になりたい”とか、”あいつに勝ちたい”という欲望がありますが、人工知能にはありません。人工知能が人間を滅ぼすということはないと思います。そのため、ターミネーターは現れないと思います。

ただし、人間が人工知能を悪用して、人間に危害を加えるということはあると思います。たとえば、可愛い女の子のフリをしてLINEで振り込み詐欺をするなどです。

――人工知能が人間を超える日は来ると思いますか?

現在においてもなお、脳神経科学上で人間の脳の仕組みは解明されていません。再現そのもののハードルはかなり高いです。再現できないものは作れないので、人間を超えるとしたら違う形になると思います。Space Xのイーロン=マスクなどは、頭部に埋め込む記憶チップを開発し、脳の補助ツールとして人間の能力を増強させようとしています。

――「人工知能に仕事が奪われる」という人もいますが、これについてはどのようにお考えですか?

現在の人工知能はできる業務が相当限られており、人間の様にあいまいな状況に気を利かせて対応する事はできませんので、安心していいと思います。むしろ人工知能は”人間の良き友達”だと思って積極活用すべきではないでしょうか。この議論は馬車と自動車のような話だと思います。自動車ができた時、馬に乗る仕事はなくなりましたが、代わりに自動車の運転手の仕事が生まれました。同じように新しい仕事が生まれるわけで、必要以上に悲観すべきではないと思います。

今後は単純作業、繰り返し仕事は人工知能にお願いして、クリエイティブなことを人間がやるべきだと思います。まさにインタビュー記事の文字起こしとかもそうなんじゃないですか?

――そうですね。インタビューをしたら、原稿が完成するようになってほしいですね(笑)。

音声認識は、かなり進歩していますよ。いろいろアプリがあるので使ってみるといいと思います。

あとは、キツい、汚い、危険といった3K仕事をコンピュータやロボットにお願いできれば便利な世の中になると思います。

 

Team AIの今後

――Team AIは今後どのような活動をしていく予定ですか?

人工知能の開発案件や人脈において、世界のハブになりたいなと思います。

短期目標は、国際的な人工知能コミュニティーを渋谷のTeam AI Base中心に構築することです。現在の会員数は2000名ですが、50,000人を狙っていきたいです。

私は前職伊藤忠商事時代から、”グローバル市場で人と人をつなぐ”を得意としてきました。技術そのものではシリコンバレーに遅れを取っていると言わざるをえないですが、政情も安定していて平和な日本・特に人と金が集まっている東京はアジアの人工知能の中心地になるにはピッタリな環境だと思います。

シリコンバレーもトランプ政権後、移民へのビザの引き締めや科学研究費削減などの動きでややポジションが弱くなっています。日本は国際人材囲い込みの非常にいいチャンスを迎えていると思います。

Team AIでもベトナムやフィリピンから優秀な理系エンジニアを東京に招聘する計画があります。私が以前ベトナムに長期滞在した際も、素晴らしいソフトウエア人材育成の仕組みがあると思いました。人工知能技術は英語で調べればスタンフォードやMITの最新の研究論文に触れられ、オープンイノベーションが進んでいます。公開情報をTeam AIのコミュニティーが丁寧に拾っていけば、技術の発展に大きく貢献することが東京にいながらにして可能だと思っています。

――最後に何かメッセージをお願いします。

現在、我々は一緒に仕事をしてくださるメンバーを捜しています。

・執行役員候補
・開発案件マッチングの営業マネージャー
・勉強会やセミナーのコミュニティーマネージャー
・イベントの手伝いなどアルバイト

興味がある方はぜひご一報ください。

お伝えした様に、我々は半分以上外国人の国際的なチームを作りたいと思っています。IT企業ですが、ラテン系のノリで陽気で楽しい社風にしたいです。

また、毎日やっている機械学習勉強会にもぜひ参加してください!

 

【*】

チャットボット:メッセンジャーやチャットを元にしたインターフェイス。ユーザーは生身の人間と会話するような感覚で情報収集を行うことができる。

【取材協力】

Team AI(株式会社ジェニオ) – 代表・石井大輔氏

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