スーパーに並んだお刺身に天然物と養殖物があったとき、みなさんはどちらを選びますか? 「なんとなく天然物のほうが美味しそうだから……」と天然物を選ぶ人は、常識に囚われているかも。今回は、早稲田大学ビジネススクールの教授で、様々なジャンルのクリエ―ターや専門家、起業家、リーダーとラジオ番組「浜松町Innovation Culture Cafe」で対話してきた入山章栄氏が、“常識に囚われない”経営学を語っています。
「天然魚の方が養殖より美味しい」という常識は時代遅れ
魚の業界には、社会通念として、「冷凍より生、養殖より天然の方がおいしい」というまことしやかな「常識」がはびこっています。しかし東信水産の織茂社長によると、養殖物の魚の中には天然物よりもよっぽどおいしいものが多く出てきているそうです。実際に食べ比べた経験がないと、養殖の方がおいしいということに気づかないことも多いのではないでしょうか。こういった「常識」が入れ替わるときに、社会全体では、どういう切り替えプロセスが起こっているかを、経営理論の視点で考えてみましょう。
重要になるのは、経営学の「制度理論」(Institutional Theory)と呼ばれるものです。私自身はこの理論をもとに、常識という「幻想」である、と述べています。
なぜなら、「それは常識だから」となると、人はその部分に脳を使わなくていいので、脳をラクにするからです。人間は、常に「これはどういうことなんだろう」「あれは本当に正しいのだろうか」と全てのことについて考えていたら、脳のキャパシティに限界があるので結局何も深く考えられません。だからこそ、「これは常識だから」と決めて考えないようにすることで、脳のキャパシティを楽にして、自分が本来考えるべき(と思っているもの)だけに集中できるわけですね
実際、養殖・天然の優劣も、30年前であれば「天然がおいしい」ということは間違いなく事実だったかもしれません。しかし、養殖技術が発達し、それが変わった今では、その事実は必ずしも正しくないわけです。それでも、我々は過去の事実を「常識」として引きずってしまうため、なかなか考え方を改められないわけです。
常識は幻想に過ぎない
このように、常識というのは幻想なのですが、なかなかそれを捨てることが人はむずかしい。私が堀江さん(堀江貴文氏 実業家)の凄いと思う点は、常識が幻想とわかっているので、物事を常にフラットに考えている視点を持ち続けているように見えることです。例えば家を持たない、住むのホテルでいい、という発想が典型的です。確かに合理的に考えれば、ある程度の経済的余裕があればホテル暮らしは、家を持つよりも圧倒的に効率的で利便性の高い選択肢のはずですが、「家を持たなければいけない」という意見が世の常識としてはびこっているので、我々は家を持たなければとなっている可能性もあるはずです。
※続きは下記ボタンよりニュースレターサービス「WISS」にご登録の上お楽しみください。
※続きはコチラから
【画像】
※ymgerman/Shutterstock