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「日本の『お祭り』改革に学ぶ、ビジネスのチャンスとは?」

早稲田大学大学院教授の入山章栄氏は、日本のお祭りを含め、常識で正当化されているが不合理なことが多くあると話します。一時代の常識や伝統が長く継続するためには、何が必要でしょうか?


こんにちは、早稲田大学大学院(ビジネススクール)教授の入山章栄です。このニュースレターでは、文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」(https://joqr.co.jp/hamacafe/)の内容から、皆さんにとってビジネスのヒントになるようなお話を毎週お届けしています。ラジオで毎回お迎えするゲストとの鼎談を踏まえ、その後で僕が考えたことをまとめて皆さんの日常や仕事に少しでもヒントになるようなことをお伝えしようという、オリジナルコンテンツのニュースレターです。

今回から4回連続で、田中章義さん×加藤優子さんとの鼎談「~お祭りをもっと活性化するには?~」から僕が学んだことを、経営学の視点を使いながら整理してご紹介していきます。

本題に入る前に、お2人のプロフィールをご紹介しておきましょう。田中章義さんは、現代の日本を代表する「歌人」です。大学1年生のときに角川短歌賞を受賞。以後、「地球版・奥の細道」づくりをめざし世界各国を旅しながら、ルポルタージュ、紀行文、絵本を執筆されています。著書に「野口英世の母シカ」(白水社)など。國學院大學「和歌講座」講師も務めておられます。歌人とは思えないくらい色々なことに挑戦される、とても面白い方なのです。

加藤優子さんは株式会社オマツリジャパン代表取締役。武蔵野美術大学油絵科卒業後、漬物メーカーに就職。東日本大震災で感じた使命感と青森ねぶた祭での感動に突き動かされ、2014年に退職、オマツリジャパンを設立。日本に30万件以上あるといわれる祭の情報や楽しみ方や参加方法を発信するWEBサイト「オマツリジャパン」を運営しています。

お2人の詳しいプロフィールについては、文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」(https://joqr.co.jp/hamacafe/)でチェックしてみてくださいね!

固定概念を超えれば祭はもっと盛り上がる

さて、田中さん×加藤さん鼎談シリーズ第1回のキーワードは、経営学における「社会学ベースの制度理論(institutional theory)」です。

祭といえば、みなさんは何をイメージしますか?お神輿、金魚すくい、水ヨーヨー、タコ焼き――おなじみコンテンツといえば、だいたいそんなところではないでしょうか。ですが、日本でお祭りを盛り上げるには?という話をしていると、お2人の話には従来のイメージとは違うユニークな祭がたくさん出てきて驚きました。

田中さんは世界中を旅し、旬の野菜や魚を食べて春の香りを楽しむエジプトの祭、ひたすら砂漠に寝転がって夜空を眺める遊牧民の祭などじつにさまざまな祭を見聞してきたそうです。日本にも型にはまらないユニークな祭はたくさんあり、加藤さんによれば、最近は往年の流行曲をDJが流す「DJ盆踊り」も増えているとか。東京都中野区の大和町八幡神社、千代田区の神田明神などで開催されており、「振り付けがシンプルで誰でも参加でき、一体感を楽しめる」と熱狂的なファンが集まっているのだそうです。

お2人の結論は「祭はもっと自由でいい!」。少子高齢化のこの時代、祭の支え手はじょじょに減りつつあります。祭ならではの伝統的なしきたりが「敷居」となり、若者に敬遠されている面もあるでしょう。だからこそ固定概念を超え、どんどんそれぞれの祭の個性を打ち出すべき、とお2人は言います。他の祭にはない独自のコンテンツをアピールすることで年代や地域を超えファンが増えれば、結果的により長く受け継がれるようになる、というわけです。

その常識は合理的か――レジティマシーの罠

お話を聞いて思い出したのが、冒頭の社会学ベースの制度理論でした。同理論はスタンフォード大学のジェームズ・マイヤーら社会学者が、1970年代後半~80年代前半にかけて確立しました。人や組織は必ずしも合理的に意思決定を行っているとは限りません。「社会的に正当性(レジティマシー:legitimacy)があるから」という理由で動くことが多いのです。たとえば、ダイバーシティを推進している企業すべてが、活動に経済合理性を見出しているとはいえないでしょう。「時代の風潮だから、社会的正当性のためにやらないと」というところも少なくないのでは。

ただし、何をもってレジティマシーとするかは国や地域、業界によって異なります。日本と米国ではかなり差がありますし、大企業とスタートアップにも違いがあるでしょう。名刺交換をこれだけするのは日本だけですが、それは名刺交換が正当化されているからです。レジティマシーは世界共通ではなく、それぞれのフィールドの中でしか通用しないということです。

また、レジティマシーはもともと存在しているわけでもありません。たとえば新興の産業には当初、ルールも常識も存在しないわけです。しかしある企業があるやり方で成功すると、他の企業も同じ方法を踏襲するようになります。次第にそのやり方が「常識」となり、ついには業界全体が同質化していきます。この同質化のプロセスをアイソモーフィズム(isomorphism)と呼びます。

ということは、常識が必ずしも合理的ではなく、時代を経るとむしろ世の中に合わなくなることがあり得るのです。それでも私たちは簡単に常識を捨てられません。というのも常識は空気のように社会生活に馴染んでしまうからです。コロナ前、一般の会社員はスーツを着て通勤するのが普通でしたが、多くの人は当たり前と感じていたし、面倒くさいと思っても「やめましょうよ」とはなかなか言えなかったはずです。

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※しゅう / PIXTA(ピクスタ)