昨今、森林保護に向けて新たな動きがあるのはご存じでしょうか。
“【バンダービルト(米ミシガン州)】当地の州有林「ピジョン・リバー・カントリー」の管理当局は木材の販売や石油・ガスのリース契約、狩猟許可証、キャンプ場使用料に加えてカーボンオフセットという新たなドル箱事業を確保した”(※1)と『The Wall Street Journal』が報じました。
カーボンオフセットとは、「日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせる」(※2)という考え方のことです。
しかし、このロジックで果たして本当にCO2排出は抑制されるのでしょうか。ピジョン・リバー・カントリーのこの施策について多くの声が寄せられています。
資本主義を切り開く
米ミシガン州のこの対応策について、SNS上ではさまざまな意見が上がっています。
“ハック”とは、一般的にやり抜く・切り開くと言った意味があります。つまり、CO2を削減する機械を発明するために時間や労力、費用を費やすよりも、“森林を伐採しない”という対応策のほうが、より効果的であり、かつコストのかからない施策、つまり“資本主義を切り開く”やり方ではないか…という見方です。
米ミシガン州のこの取り組みは、「日本でも実現可能では?」という意見もありました。
本来、森林を保護すること、つまり自然を守ることは資本主義とは無縁の行為です。ゆえに、こうした事案に報酬化を持ち込むことで、「自然を守ることに対する考えや価値観が変わってしまうのではないか…つまり、経済発展のために森林を守るという思考に陥るのではないか」という意見です。全てを資本主義化するのではなく、本来のボランティア精神とのバランスも鑑みながら、対応策を講じるべきという考え方もあります。
その一方で、資本主義化を持ち出すことにより、市民がより積極的に“森林伐採の抑制”に目を向け始めるとも考えられます。ビジネスが絡むことで森林保護のインセンティブが結果的に強くなりうる可能性も無視できないでしょう。
そもそも“森林伐採”を前提とすることへ違和感を感じる……という声もあります。伐採しない、ではなく、森林を保護する、という考えを前提にした対応策でないことが、その背景といえるでしょう。
本事業が提示する価格設定を疑問視する意見もあります。これも、詳細な検証結果がないことから生じるものでしょう。
排出抑制につながるかの検証が必要
米ミシガン州の施策はメリットもある一方で、課題が残っていることも事実です。吸収できる量の限界やそもそも産業排出のCO2を吸収するのか、また、森林が災害で減少・消失した際のビジネスへの影響も、懸念点として上げられるでしょう。
そのため、この施策が本当にCO2抑制につながるのか、森林保護によりCO2の削減がどれほど期待できるのか、についての分析や検証が、今後必要になってくるはずです。
【画像・参考】
※1 伐採せずに「金のなる木」 CO2吸収のドル箱事業
※2 カーボン・オフセット(環境省)
※Rich Carey/Shutterstock