政治/経済

新型コロナの「分科会」って一体何のための会議なの?当初の役割とは…

コロナ禍において、ニュースなどでよく耳にする“分科会”という言葉。分科会が発する政府への提言内容について、メディアに取り上げられることが少なくありません。そんな分科会の提言や役割について、世間はどのように見ているのでしょうか?

ワクチン接種に関する分科会の提言内容

内閣官房による新型コロナウイルス感染症対策分科会(第7回)の資料(※1)では、ワクチン接種が進む中で日常生活がどのように変わるのかについて提言されていました。

ワクチン接種率は向上しているもののデルタ株に対しては万能でないことや、いわゆる“ブレークスルー感染”(ワクチン接種後の感染)が一定程度生じること、免疫の減弱に伴った追加接種の議論を進める必要性について述べられており、「社会全体が守られるという意味での集団免疫の獲得は困難と考えられる」とまとめられていました。

さらに、ワクチン接種による日常生活における変化として「ワクチン・検査パッケージ」を提案。欧米で使われている“ワクチン・パスポート”のようなもので、「ワクチン接種歴及びPCR等の検査結果を基に、個⼈が他者に⼆次感染させるリスクが低いことを⽰す仕組み」と説明されていました。大規模なイベントや都道府県をまたぐ旅行、医療機関・福祉施設の面会などで適用するもののようで、ワクチン接種が進んだ段階で、日常生活での行動制限緩和を進める内容となっています。

またNHKの報道によると(※2)、9日夜に行われた尾身茂会長と西村経済再生担当大臣による会見で、この「ワクチン・検査パッケージ」について言及し、仕組みの導入や活用方法について国民的議論をしてほしいと強調したとのこと。

分科会の提言内容や役割について国民の声

分科会が発信したこの提言内容について、世間からは様々な声が上がっていました。

ワクチン接種を望まない人々もいる中で、ワクチン接種証明書を発行することは差別につながるという懸念の声があります。

欧米で導入され、一部の公共や民間の施設で提示を求められるワクチンパスポートと同様のものとイメージを持たれないよう、「ワクチン・検査パッケージ」と名称に配慮されているものの、本質的な部分に変わりはないとする意見も。

感染拡大が収束していない今の状況で提言するべきではないのではないか、という意見もあります。感染が少し収まるとすぐに気が緩み、また感染拡大につながるという考えです。

対策がワクチン一辺倒になりがちな現状に対し、ワクチン以外の対策の効果に関する言及がなく、分科会に求められている専門的な知見が活かされていないとする声もありました。

そもそもの分科会の役割について、Medical Noteが行った尾身会長へのインタビューによれば「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下、専門家会議)のなかで、政府が提案した内容について医学的な見地からの意見を求められた場合に、意見を述べる」(※3)と述べられていました。

そうであるならば、実際に政策を決定するのは政府で、説明責任も政府にあるべきでしょう。最近では分科会の会長が国民の前に出て説明をしていて、分科会の提言がほとんどそのまま政策に反映される印象を受けます。

政府は分科会の意見も参考にしながら、各所の状況把握をしつつ統率を取り、最終的に決定し、国民にどう伝えるかをコントロールするのも政府であるべきです。当初の分科会の役割が、今では曖昧になってきてしまっているかもしれません。

【画像・参考】
※1 新型コロナウイルス感染症対策分科会(第7回) – 内閣官房
※2 「ワクチン・検査パッケージ」の使い方 国民的議論を 尾身会長 – NHK
※3 新型コロナ収束に向け分科会が担う役割とは―尾身茂会長インタビュー【前編】- Medical Note
※ESB Professional/Shutterstock