新型コロナウイルスのワクチン接種が進められ、ついに10月には緊急事態宣言解除となりましたが、落ち込んだ経済を建て直すため、立憲民主党の枝野幸男代表は「年収1000万円ぐらいまでの中間層の所得税を1年間だけ免除する」と表明しました(※1)。一見すると低所得者への負担を軽減する目的があるように感じますが、果たして効果はあるのでしょうか。
高所得者の抜け道もある
枝野幸男代表の提言に対し、田端信太郎氏は1000万円ぎりぎりを稼ぐ高所得者にも税金が免除される点について、SNS上で指摘していました。
1000万円という金額設定にした場合、枝野幸男代表のいう「中間層」の幅が広くなり、低所得者層が狭まるという不備が発生します。この場合、政策により恩恵を受ける層が狭まり、結果として経済対策としてのメリットが半減されるというデメリットがあります。
田端氏は続けて、今回の政策により「年収1000万円以下の層」も結果として恩恵が受けられなくなるという不備があることを指摘しています。
例えば、共稼ぎカップルの場合、男性が年収600万円の会社員、女性が産休中……というケースでいえば、産休中は本政策の恩恵を受けるものの、女性が職場復帰した際には、年収が1000万円を超え、それにより税金免除はなくなり、さらに支払うべき税金の額が増えてしまうことになります。職場復帰をすることにより結果として損をする、所得が下がるという負の構造ができ上がってしまうデメリットも存在しています。
SNS上の反応
そのほか、SNS上ではさまざまな意見が上がっていました。
年収1000万円以上を稼ぐことで、税金が重くなり、結果として損をするのであれば、1000万円未満に留めておこう……と考える国民が増え、結果として日本経済が停滞するのでは、という声も上がっていました。経済効果を狙った政策によって日本経済が衰退すれば本末転倒です。
年収990万円の方は税金が免除され、年収1100万円の方が免除を受けずかつ重い税金が課せられる……という状況への批判の声も上がっていました。数十万円の違いで税金の額が大きく変わる本政策の不備を鋭く指摘した意見です。
政策判断には、どのような仕組みでその政策が実施されるのか、田端氏が指摘するような“抜け道”に対してどのような対策が講じられるのかについても検討する必要があります。その点で、枝野幸男代表の本政策についても、仕組みの再検討や抜け道に対する対策をすべきでしょう。
自民党の新総裁が決まり、次期衆院選に注目が集まっています。そのときに各候補者や政党がどのような経済政策で、コロナ禍の日本経済の建て直しを図るのか、われわれは厳しい目を持って判断することが求められているでしょう。
【画像・参考】
※1 立民代表「所得税1年免除」 コロナ対策、年収1000万円以下を支援
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