新型コロナウイルスに感染し、自宅療養中だった1人暮らしの30代男性が死亡した件について、「男性は基礎疾患もなく、肥満でもなかった」ことを東京新聞が報じました(※1)。東京都の発表内容では、男性は基礎疾患がないと発言していますが、基礎疾患があったものの、通院していなかったために基礎疾患がないと判断された……という可能性もあるのではないでしょうか。
受診勧奨しても受診しない層
産業医の大室氏はツイッター上で「異常値があっても単に未受診だから病名がついてない人だけの人は混じっていないのか基礎疾患なしの報道根拠を知りたい」と発言し、基礎疾患がないという報道の不確実性を指摘していました。
直近の医療受診歴がない方を「基礎疾患なし」と定義し、「基礎疾患がなくとも重症化する」と報道するのは根拠が不十分ではないか……という見方もできるでしょう。
大室氏と同じように、各報道による「基礎疾患なし」の根拠不足を疑問視する声が、SNS上で上がっていました。
多くの企業では、年度始めに社員に対し「定期検診の受診」を推奨します。受診する社員もいる一方で、業務の忙しさからパスする、面倒くさいから受診しない、といった社員も少なくありません。こうしたケースを踏まえると、報道機関による「基礎疾患がない」という定義づけの根拠は薄いように感じます。
そもそも、どのような場合に「基礎疾患がある」と定義するのでしょうか。横浜市の公式サイトによると、「令和3年度中に65歳に達しない者であって、以下の病気や状態(慢性の呼吸器の病気/慢性の心臓病(高血圧を含む。)/慢性の腎臓病など)の方で、通院/入院している方」と「基準(BMI30以上)を満たす肥満の方」のふたつが定義要件であると記載しています(※2)。
しかしながら、上記のような疾患があるか否かについては、定期的な健康診断を受けていない方にとっては自覚できず、判断ができない可能性があります。そのため、「自分には基礎疾患がない」と考えている場合であっても、診断を受けていない限り、その正確性は薄いと言わざるを得ません。
上記を踏まえると、「基礎疾患なしでも重症化する」という報道には、悲観するだけの十分な根拠が備わっていないと考えられます。そもそも基礎疾患なしという前提が正しいのか、メディアによるミスリードがされていないのかなど、表面上の言葉にとらわれずに、自分で報道の内容を深堀りしたり判断する必要があるのではないでしょうか。
【画像・参考】
※1 <新型コロナ>東京で自宅療養中の30代男性が死亡、基礎疾患なし 小池知事「健康観察続けていたが、体調急変」
※2 国が定める基礎疾患の定義について(新型コロナウイルスワクチン接種)
※Supavadee butradee/Shutterstock