日本では近年飲酒運転に対する問題意識が高まり、かなり飲酒運転が減ったのではないかと感じる。いっぽう海外では日本より飲酒運転に対して寛容な国も少なくなかったようだが、やはり近年は問題意識が高まってきている。
そのなかで、興味深い研究データがミシガン大学の研究者から発表された。それは同大学のウェブサイトで報じられている。
アルコール・インターロック装置を義務づけたとしたら?
これは、エンジン始動前にアルコールチェックを行い、アルコールが検知されなかった場合のみエンジンが始動できるという“アルコール・インターロック装置”を義務づけたとしたら、どれほどの効果があるかを試算したものだ。
ミシガン大学の研究チームは、もしこのアルコール・インターロック装置が新車すべてに標準搭載されていたとしたら、どれほどの人命が助かり、どれほど怪我が減り、どれほどの経済損失が避けられていたかを調査した。彼らが行ったのは、過去15年間に販売されたアルコール・インターロック装置を搭載した新車に関するデータだ。
彼らの概算によればその効果は明白だ。過去15年間の飲酒運転による死亡事故のうち、85%は防げたというのだ。これは5万9,000人分以上の人命に相当する。また、致命的でない事故に関しても、84〜89%減らし、約125万件を防ぐことができたはずだという。
そして経済損失に関しては、3,430億ドルを失わずに済んだというのだ。この数字は、もしアルコール・インターロック装置を義務づけたとしても3年でその費用のもとがとれてしまう計算だ。
特に若年層の事故を防げる
研究者のひとり、パトリック・カーター医学博士はこう言う。
私たちは、この作業が明確な結果を出すだろうと思っていましたが、それにしても、実際に出てきた数字は驚くべきものでした。私たちの分析は、アルコール・インターロック装置の新車への義務づけが、社会にとって非常に有益であることを明らかにすることができました
実はアメリカでは、21〜29歳の若年層の飲酒運転による死亡が非常に多いのだという。なかなか啓蒙活動が浸透しにくい年代だが、アルコール・インターロック装置があれば、重大事故の多くを防ぐことができる。
実際、こういった装置が有効だろうということは容易に想像できても、一定のコストがかかることもあり、義務づけまではなかなか進まないものだ。しかし、試算をしてみて、費用対効果も含めた数字を見せつけられると説得力がある。
日本自動車工業会のウェブサイトによれば、実はこのアルコール・インターロック装置というものは、すでに限定的には使用されているもので、アメリカでも飲酒運転再犯者には使用を義務づける州が多いという。現代の技術があれば、大量生産されるとなれば、どんどん低コストで小型のものが可能になっていきそうだ。
義務づけられたときのコストやわずらわしさを考えるといやだが、自分や家族が飲酒運転の被害にあう可能性を考えると、仕方がないとも思える。交通事故は個人だけではなく社会で考えていかなければならない問題だ。その場合にこういった調査データは非常に有効だといえる。
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