チャットやビデオ通話が普及した現代、離れた相手とも“目を見て”会話ができるようになり、その技術はビジネス、プライベート問わず日常的に使われるようになった。
そんな中、NHKが東京大学とタッグを組み、物体を触った感覚(触感覚)を仮想的に再現できるシステムを共同開発した。
レーザー変位計により物体の形状を測定し、物体表面に超音波を収束して力を加えた時の変形量により硬さを推定。
さらに、作成したモデルを仮想的な映像として映し出すことで、触った感覚をより忠実に再現させることも可能。この技術により、「見る・話す」に加え、「触れる」という遠隔コミュニケーションがそう遠くない未来に実現することになりそうだ。
特に医療の分野では、遠隔地の患者の診断や緊急患者の応急処置など、様々な場面での技術導入に期待が高まる。
「触れる」が繋ぐもの
「コミュニケーション」。
それは、知覚・感情・思考の伝達により人と人とを繋ぐ、人間の社会生活の基盤となる重要な行為だ。
このコミュニケーションの3要素は、実は「見る・話す」という現在の技術でほぼ満たされている。話すことで相手の知識や体験(知覚)、思考を知り、声色や顔色から感情を知ることができる。
では何故、人はさらに触れることを求めるのか。
それは、時として圧倒的に埋めることのできない「距離」に対する恐れだろう。「見る・話す」の手段でコミュニケーションの3要素が満たされていても、距離が誤解が生み、無関心を誘う。
「触れる」という行為は、双方が身近な存在であることを証明するためのたったひとつの手段なのだ。
親と子、恋人など、大切な人との間に、人生のストーリーのなかで距離が生じたとき、この新たな技術は、2人(あるいはそれ以上)を繋ぎ続ける架け橋になってくれるのかもしれない。