筆者の世代(1970年代前半生まれ)は、死ぬまでずっとこんなニュースを聞くと『宇宙世紀0079』を思い浮かべてしまうのだろう。“レーザーを宇宙空間のデブリに照射”などといえば『ソーラレイ』を、“大気圏に再突入させて除去”などと聞けば『コロニー落とし』を。まるで『機動戦士ガンダム』の世界である……。ってそんなこと考えるのオレだけか?
小さいデブリをレーザーで落とす
理化学研究所の研究グループが、スペースデブリ(宇宙ゴミ)に高強度レーザーを照射して除去するという方法を考案した。同研究所のウェブサイトで報告されている。これは数センチメートルサイズの小さなデブリを除去する方法の初めての提案だ。この方法が実用化されれば、サイズの小さいデブリなら、かなり効率よく除去できることになりそうだ。
これは、エコール・ポリテクニークと原子核研究所宇宙物理センター/パリ第7大学(フランス)、トリノ大学(イタリア)、カリフォルニア大学アーバイン校(米国)との共同研究による成果だという。
スペースデブリというのは、地球衛星軌道上に散在している宇宙ゴミのことだ。事故や故障で制御不能になった人工衛星、ロケット本体や部品から、スペースデブリ同士の衝突で生まれた小さいものまで、さまざまなサイズのものがあるが、0.3~10cmのデブリは非常に多数存在している。
そんな小さいサイズのデブリでも人工衛星や宇宙ステーションに衝突すれば大きな損傷を与えるおそれがあるが、小さいため検出がむずかしく、これまで除去する方法は提案されてこなかった。
今回発表された方法は、スペースデブリに高強度レーザーを照射する。しかし、そのレーザーで焼却してしまおうというほど物騒なものではない。レーザー照射されると、デブリの固体表面からはプラズマが噴き出す現象が起こる。そのプラズマが噴き出す反力(反作用)で、デブリを減速させようというのだ。減速すればデブリは衛星軌道から外れ、地球大気へ再突入する。そうやって除去してしまおうというものだ。
望遠鏡で検出可能
また、10cm以下の小さいデブリの検出には、口径約2.5mの『EUSO型超広角望遠鏡』を用いることを提案している。これは地球大気に入射する超高エネルギー宇宙線を検出するための宇宙望遠鏡(EUSO)計画のために、理研が中心となった国際チームが開発を進めているものだ。
『EUSO型超広角望遠鏡』はプラスマイナス30度の広い視野を持つと同時に、100kmの距離にある0.5cmの大きさのスペースデブリから反射する太陽光を検出するのに十分な感度を持っているという。
まず『EUSO型超広角望遠鏡』でスペースデブリのおおまかな位置と見かけの速度を決める。次に、その方向に向かって、レーザー探索ビームを照射し、スペースデブリの正確な位置と距離を求める。そして最後にスペースデブリに向けて高強度レーザーを照射して、軌道制御を行う、という手順だ。
もちろん、まだ実現には課題がある。それは、ロケット打ち上げの振動に耐えられる高強度レーザーを作ること、高速で動くスペースデブリの検出からレーザービーム照射による軌道制御までの一連の作業を1秒程度以下で行えるようにすることなどだ。ただ、それらの課題にも、十分実現の可能性はあるようだ。
共同研究グループは、最終的には、口径2.5mの『EUSO型望遠鏡』と平均出力500kWのレーザーを搭載したスペースデブリ除去専用の宇宙機を、地球観測のための人工衛星が密集する高度約700~900kmの極軌道付近に打ち上げることを提案している。
スペースデブリは、2000年から2014年のあいだに約2倍に増えたとされていて、大きな問題になっている。今回のデブリ除去技術は、将来的にも宇宙を安心して効果的に活用できるように期待したい技術だ。高強度レーザーといっても、幸いまだ大量破壊兵器にはなりそうにないし、コロニー落としにも使えそうにないので安心だ。
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