オランダといえば風車がある牧歌的な風景をイメージする人が多いだろう。そう、オランダは昔から風を利用してきたのだ。
しかし、最近発表された『Dutch Windwheel』という巨大なリング状の建築物は、“世界で最も革新的な風車”(the most innovative windmill in the world)と銘打たれているが、風力発電を行うというのに風車がない。
風車がない風力発電装置を内蔵した巨大な建築物
このオランダの複数の企業によるチームが提案した『Dutch Windwheel』には、巨大な風力発電装置が設置され、集合住宅やホテル、さらにはジェットコースターまで備わっているという。
『Dutch Windwheel』はロッテルダムのウォーターフロントに建築される画期的な建造物になるかもしれない。その外観は高さ174メートルの2重のリングだ。
外側のリングにはジェットコースターなどがあり、内側のリングにはホテルやレストラン、集合住宅などが設置される。
そしてリング中央の巨大な穴は、風力発電装置となっている。しかし、これは居住者の邪魔になる様な騒音を立てることはないのだ。つまり、風車は存在しない。
『Dutch Windwheel』の風力発電には、従来型の機械的な可動装置がなく、風と水の組み合わせによって発電するという。
この技術はEWICON(electrostatic wind energy convertor:静電風力エネルギー変換器)と名付けられたもので、デルフト工科大学のJohan Smit氏とDhiradj Djairam氏によって開発された。
水滴を噴霧する細い金属管とノズルから構成されており、電界の性質を利用して発電するらしい。風が電気を帯びたしずくを陽極に移動させることで発電するというのだ。
研究者の喩えでは、「まるで重力に逆らって岩を山の上に押しあげるような働きだ」という。
ただし、実験室で研究されてきた技術であるため、『Dutch Windwheel』のような巨大な設備でどれほどの効果があるかはまだ分からない。
しかし計画者たちは、ロッテルダムに将来のランドマークとして、建物自体が必要なエネルギーを生みだせることを目標に技術革新を行うとしている。
オランダの新たなランドマークを目指す
『Dutch Windwheel』が完成すれば、1年で約150万人の訪問者を誘致できるだろうと見込んでいる。
建築物の魅力だけでなく、様々なジェットコースターや映画館などのアトラクションも設置されるからだ。もちろん、展望ラウンジからの眺めも抜群だろう。
そこから街を眺めたとき、ガラス面には仮想レイヤーによって、様々な情報も映しだされる予定だ。
ホテルは7フロアを占め、160部屋になるという。
『Dutch Windwheel』が実現すれば、間違いなく世界中が注目するランドマークとなるだろう。
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