NASAは宇宙飛行士を太陽系の第4惑星である火星に送り込むために、解決しておかねばならない課題を抱えている。その一つは、宇宙飛行士が何ヶ月も掛けて到達する火星での生命維持のための物資の搬送量だ。
どうしても運べる物資には限界があるのだ。そこでNASAが考えた一つの解決策は、宇宙飛行士の生命維持のために、火星の過酷な環境を逆に利用できないか、ということだった。
微生物を利用した実験
この画期的なアイディアNIAC(NASA Innovative Advanced Concepts)のためにNASAは、インディアナ州グリーンヴィルにあるTechshot社のチーフサイエンティストEugene Boland氏の仕事に資金を提供している。
そこでは科学者達が、同社の“火星の部屋”と呼ばれる試験室で、火星の大気圧や気温の変化、太陽放射などをシミュレーションしながら実験を進めている。
そこでBoland氏らは、火星の環境下で開拓者となるべき生物を利用した酸素生成のテストを行っているのだ。すでにこの生物たちは、試験室内では火星の土壌から窒素を取り除くことができていた。
この実験が意味するのは、火星に重たい大量の酸素ボンベを送る必要がなくなる、ということだ。微生物さえ持ち込めれば、酸素は現地調達できるようになるかもしれない。
微生物によって酸素供給が可能になれば、火星に遠征した宇宙飛行士らの拠点を点在させることになるだろう。
酸素を現地調達できるか
研究者らが描いているのは、将来、火星探査車で運ばれた小型容器のような装置が火星の地面に設置される光景だ。その装置はわずか数インチの深さに埋め込まれると、選ばれたある種のシノアバクテリアのような極限環境で活動できる微生物が、装置の中で火星の土壌に働きかけるのだ。
この装置が火星の大気を変換している状況は、火星の周回軌道上の衛星を介して地球に送信される。そのため、研究者等は、微生物を火星の大気から守るための密閉された装置を作る必要がある。NASAの膨大な資金は、人間が火星で呼吸できる環境を作るための生物学的な課題解決に費やされるだろう。
Boland氏は生物学者でありエンジニアでもある。彼は、この課題解決のために、これら二つの技能を融合させて役立てたいとしている。人類は必要な大気を、遠く離れた火星で現地調達できるようになるかもしれない。
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