「グーグルカーが自動運転車を公開」
「アップルがEVベンチャーのテスラを買収か?」
「ノキアが新組織体制となり、自動車向け3Dマップ技術開発を事業の中核に」
などなど、最近、自動車とIT系が絡むニュースが増えている。どうしてこのタイミングで、こうした動きが出てきたのか?そのキッカケとはなにか?長年この分野に携わってきた私が、考察してみたいと思う。
ITSはもう古い?
クルマとITをつなぐ領域、それを「テレマティクス」という。
「テレコミュニケーション(情報通信)」と「インフォマティクス(情報工学)」を融合させた造語。約20年前から研究者の間で使われてきた用語だ。
そうした研究のなかで長年に渡り主体だったのが、ITS(インテリジェント・トランスポーテーション・システム/ 次世代交通システム)だ。この手のカンファレンスに参加すると、路車間通信、車々間通信等という専門用語が当たり前のように飛び交っていた。
具体的には、カーナビゲーション、VICS(ビークル・インフォメーション&コミュニケーション・システム)、ETC(エレクトリック・トール・コレクション)、そして「ぶつからないクルマ」と一般的に呼ばれる衝撃軽減装置などだ。自動車メーカー関係者も、大学や国の研究機関関係者も、こうしたITSがテレマティクスのメインストリームだと信じて疑わなかった。
ところが、大きな異変が起こった
それが、スマートフォーンとクラウドの世界的な急拡大だ。
2007年の「iPhone」、2008年の「Android端末」登場は人々のライフスタイルを大きく変えた。そうした通信端末に内蔵される半導体の性能は、インテルの「ムーアの法則」のごとく飛躍的に成長。インフラ側のクラウドも処理速度が高速化した。そして「人とクルマ」がスマートフォーンを通じてつながるようになった。
2000年代から携帯端末を経由した「人とクルマ」のつながりは、ホンダの「インターナビ」等で商品化されてきた。また、「クルマとメーカー」をつなげる商品としては、米GM「On Star」やトヨタ「G -Book」があった。しかし、2010年代に入ると、携帯端末の二大巨頭、アップルとグーグルが水面下で動き始めた。
アップル vs グーグルの図式へ
2013年6月、アップルはWWDC(ワールド・ワイド・デベロッパーズ・カンファレンス)で、「iOS in the car」を発表。これは音声認識のSiriを使って、iPhoneとクルマとのコネクティビティを行うアップル独自のプラットフォームだ。
アップルの動きに刺激されたグーグルは2014年1月、ラスベガスのCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)と同じタイミングで、アウディ、GM、半導体のnVIDIA等と連携するテレマティクスのコンソーシアムOAA(オープン・オートモーティブ・アライアンス)の立ち上げを発表。
そのカウンターパンチとしてアップルは2014年3月、スイスのジュネーブモーターショーで「iOS in the car」の量産モデル「CarPlay」を発表。メルセデス、ファラーリ、そしてボルボの実車に装着したデモンストレーションを公開した。テレマティクスの主役が自動車メーカーから欧米IT大手へと一気に変わりそうな雰囲気になってきた。
では、欧米IT大手の狙いとは何か?
それは、車載OSの自社技術で標準化することで「クルマをまるごとスマホ化」することだ。そうした大きな流れのなかに、自動運転も含まれる。
テレマティクスはいま、次世代ステージへと大きく進化しようとしている。
*2枚目の画像:bloomua / Shutterstock.com