火星には、薄いとは言え大気がある。一方で、大気が薄い代わりに重力が小さい。であれば、火星の空を翼で飛行することができるのではないだろうか?
ということで、2020年代に、NASAが火星の大気中でグライダーを飛行させるかもしれない、という実験が始まっていた。
薄い大気を滑空する実験
そのグライダーは『Prandtl-m』と呼ばれ、ボディー全体が翼と成っているタイプで、一見ブーメランのようだ。
今年後半には、火星の大気に近い状態である高度約10万フィートの上空で飛行実験を行う予定だ。
折りたたまれた状態の『Prandtl-m』を気球で目的の高度まで運び、約10万フィート上空でリリースするというわけだ。リリースされた『Prandtl-m』は、自ら翼を広げて滑空を開始する。このテストの成果が火星で活かされることになる。
将来行われる人工衛星CubeSatの火星への打ち上げの際に、『Prandtl-m』を一緒に輸送する計画も立てられている。そして火星の上空から地上探査車を降下させる際に、『Prandtl-m』を大気中にリリースすることが目論まれているのだ。
火星の空に挑む
『Prandtl-m』が実験の通りに翼を広げて火星の大気を飛行すれば、無人ではあるが、人類の創造物が初めて火星の空を飛行することになる。
そして火星の空から、より高解像度の火星表面の画像を地球に送り届けてくれることになる。この計画は2022年から2024年の間に実行される見込みだ。
『Prandtl-m』は火星の空を、2,000フィート上空から滑空し、約10分間に約20マイルの距離を飛行するだろうという。実際に火星に送り込む『Prandtl-m』の翼幅は24インチ(約60センチ)を想定しており、重量は1ポンド未満になる見込みだ。
『Prandtl-m』の材質にはガラス繊維や炭素繊維などが使われる。ただ、テスト段階ではGPSを利用するが、火星にはGPSがないため、何か変わりのナビゲーションシステムを用意しなければ成らないという課題もある。
また、『Prandtl-m』にはマッピングカメラや放射計も搭載される可能性がある。火星の空に、人類が挑もうとしている。
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