都会で家畜の飼育や食物を栽培する『シティファーム』という言葉が最近話題になるが、イギリスのロンドンには、地下33mのトンネルに、野菜を栽培する農園があることをご存じだろうか?
Zero Carbon Food社が経営しているこの農園は、ロンドン市内のクラパムという街にある。1940年代初頭、第二次世界大戦時に地下防空壕として作られたもので、市民を8,000人収容できるキャパシティを持つ広大なスペースだ。現在はもちろん使用されておらず、その空いた空間を利用して農園にしているのだ。
最新の農法を採用
全長430mある2本のトンネル内には、ラディッシュ(ハツカダイコン)やマスタードリーフといった、サラダによく使われる野菜などを栽培する棚がずらりと並ぶ。農園というより、『地下の巨大実験室』といった雰囲気だ。
農園内は、野菜の生育に必要な光量を調整でき、かつエネルギー効率も高い最新のLED照明システムを採用。室温も、栽培に最適な16度~20度に保たれている。
野菜を育てるには、当然ながら水分や養分も必要だが、これらを効率的に循環させるシステムも採用することにより、水の使用量は従来の農法に比べ、かなり少なくて済むという。
郊外に比べ、都会は当然ながら資源が少ない。その点を十分考慮した最新技術の投入により、生産量を確保。また、安定した環境で栽培できるため、通年で収穫が可能なことも大きなメリットだ。
オリジナルブランドとして販売
作られている野菜には、前述の他にもマイクロリーフやウォータークレス(クレソン)など計12種類がある。収穫後は『Growing Underground』というブランド名で販売され、レストランなどで使われているそうだ。
「ロンドンの人口増加への対応と、市民により美味しくて安全な野菜を提供したい」……。
有名シェフのマイケル・ルー・ジュニア氏はじめ3人の創設者が手掛けているこのプロジェクトは、そんな目的で約3年前にスタートした。
地下ではあるが生産地は都市。“生産地から消費者までの距離が近く輸送費が安く済む”、“生産地が近いから鮮度も良好”なども『街の地下農園』のいい点だろう。
都市の未使用空間をうまく利用した好例と言える試みだが、さて今後こういった動きは広まるのだろうか? 食の問題だけに要注目だ。
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