近年、再生可能エネルギー導入の必要性が取り沙汰されるなか、その有力なオプションのひとつとして挙げられるのが風力発電だ。今後、世界中で風車が導入された光景が見られるようになってもおかしくないが、一方で地理的な条件の制約などによって、現実的には導入が難しい地域もあるそう。
そこで浮上した比較的実現が容易なアイデアが、大きな陸橋に“風力タービン”を取り付けてしまうというもの。
ヨーロッパの研究者が進めた最新の研究によると、この「タービン付き陸橋」は新たなエネルギー源として実現可能性が高いようだ。
シミュレーションでコンピューターモデルを利用
英ロンドンのキングストン大学に所属するOscar Soto氏を中心に進められた研究は、再生可能エネルギーや持続可能エネルギーについての専門誌『Renewable and Sustainable Energy Reviews』で発表。
研究チームはコンピューターモデルを利用したシミュレーションで、橋脚の間を抜ける風がタービンを動かし、エネルギーを生み出すことを確認するために、カナリア諸島の『The Juncal Viaduct』という橋を利用したという。
1基あたり0,25メガワットの電力を生み出すという試算
より大きな風車を動かせば、多くのエネルギーが得られると考えることは自然に思えるが、実際により大きな出力率を示すのは“小さな風車”だとSoto氏。生み出される電力だけを評価すると、もっとも良いソリューションは2つの異なるサイズの風車を導入することだが、実現可能性を考慮すれば2つの同じサイズの採用がもっとも良いオプションになるという。
Juncal Viaductのケースでは、風力タービン1基あたり0,25メガワット、合計0.5メガワットの電力を生み出すと試算。これは一般家庭450軒から500軒の平均的な消費と同等の数字だ。これは7,200本の木が吸収するのと同程度の、年間140トンの二酸化炭素排出を回避することになる計算だ。陸橋に取り付けた風車はこのような可能性とポテンシャルを持っているのだ。
導入が比較的容易で、新しい構造物の建造が難しい地域にも応用可能な今回のコンセプト。再生可能エネルギー源のひとつとして導入、実証の展開に期待したい。
【参考・画像】
※ Viaducts with wind turbines, the new renewable energy source — ScienceDaily
※ SINC
【関連記事】
※ 次世代の「空に浮かぶ風力発電」革新が招く様々なメリットとは